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固有スキル『トラップバスター』と新しい街で暮らし始めた僕の話  作者: けろ
キアリーと黒鉄の迷宮

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26.ブルースライム

壁の先へ急ぐ4人。ボリスの『ハイパーストレンジ』の制限時間は残り3分を切っている。

息を切らしながら、2つに分かれた小部屋の片方へ飛び込む。

「ボリスさん、こっちの箱も!」

「おお、フンッ!!」

ボリスが2つ目の宝箱を力任せに持ち上げると、やはりそこにも隠された石板があった。

描かれていたのは「2個の宝箱の絵」。そして右側の箱の右下あたりに二重丸が記されている。

「スイッチはここか!」

キアリーが突起を見つけて押し込むが――何の音も反応もない。

「ダメだ、何も起きない! ボリスさん、次です!」

すぐさまもう片方の小部屋へ全員で猛ダッシュし、3つ目の箱をボリスが引っぺがす。

こちらの石板には、左側の箱の左下に二重丸。突起を見つけて押してみるが、やはり壁は微動だにしない。

「これ、もしかして……同時に押すとかですの?」

ステラの鋭い指摘に、キアリーは目を見開いた。

「なるほど! 離れた場所で同時に! ステラさん、そのままそのスイッチを押したままにしてください。ボクたちでさっきの部屋に戻ります!」

「了解しましたわ!」

ステラをその場に残し、キアリー、アーサー、ボリスの3人は全速力でさっきの部屋へ逆戻り。ボリスが退けた箱の裏のスイッチを、アーサーが力強く押し込む。

カチリ。

しかし、周囲には変化がない。一瞬「これでもダメか」と落胆しかけたその時、部屋の入り口に立っていたアーサーが、通路の壁がスッと開いていることに気が付いた。

「おい、開いたぞ! あっちの壁が動いてる!」

「やった……! 本当に同時押しが正解だったんだ!」

謎が解けた歓喜に沸くが、アーサーはすぐにハァと深い溜め息を吐き、頭を抱えた。

「タネがわかればたいしたことないが……こんなの、あのボリスさんの怪力で箱を持ち上げてヒントを見なきゃ、一生わかるわけないだろ! どんな意地悪だよこのダンジョン!」

「ガハハ! 全くだ。だが喜ぶのはまだ早いぞ、ステラ聞こえるか! 奥に何かいるぞ!」

ボリスが通路の奥へ向かって大声で警告を発する。ステラもモーニングスターを引きずりながら、すぐさま3人と合流した。

開かれた壁の奥、薄暗い闇の中から、ドロドロと嫌な音を立てて這い出てきたのは――目が眩むほど鮮やかな青色をした、家一軒分ほどもある超巨大な『ブルースライム』だった。

「うはぁ……こいつは……でかいな……」

アーサーが思わず引きつった声を上げる。

臨戦態勢をとる3人。戦闘能力ゼロのキアリーは、大人しくその背中へがっちりと隠れた。

「ボリスさん! スキルはまだ使える!?」

キアリーが背後から叫ぶ。ボリスの制限時間は残りあと数十秒だ。

「ああ、まだギリギリ行けるぞ! まさか、あのデカブツを持ち上げろって言うんじゃないだろうな!?」

「違うわ。ボリスさん、私とアーサーさんを同時に持ち上げて、あのスライムめがけて投げてくださらない?」

ステラのあまりにも男前すぎる提案に、アーサーが「はぁ!?」と目を見開く。しかし、ボリスは迷わなかった。

「よし、暴れるなよ! ――フンッ!!」

『ハイパーストレンジ』の最後の力を振り絞り、ボリスはアーサーとステラの体をそれぞれの両腕で抱え上げると、巨大なブルースライム目掛けて、まるで人間砲弾のように同時に放り投げた!

「うおおおお、やけくそよぉぉ!! ――『パーフェクトウォール』!!」

空中を舞うアーサーが、落下しながらスライムの真上にまばゆい光の壁を展開する。上空から超高速で叩きつけられた光の壁は、巨大スライムの柔らかい自重を利用して、その巨体を真っ二つに分断した!

核が剥き出しになった一瞬を、ステラは逃さない。

「神の御名において――塵に還りなさい!!」

落下の勢いを全て乗せたモーニングスターが、無防備になった核へドンピシャで直撃した。

耳を劈くような破裂音と共に核が粉砕され、巨大な青い粘液が四方八方へと弾け飛ぶ。

着地したステラとアーサーの前に、スライムの巨体は完全に崩壊し、その奥にはついに、待ち望んだ下層への階段が姿を現していた。

「やった……ついに、第3階層への道が……!」

キアリーは感動に震えながら、足元に飛び散ったブルースライムの残骸(青いゼリー状の肉塊)をそっと拾い上げた。すかさず『トラップバスター』の視線を注ぎ込む。


『発動条件:食べる』

『効果:激しい下痢(脱水症状の危険あり)』

『解除方法:天日で干す』


「……!!」

キアリーの瞳が、今日一番の輝きを放った。

「みんな、やりました! このブルースライム、前のグリーンスライムと同じです! 天日で干せば、美味しく食べられますよ!!」

「えぇ……またスライム食べるの……?」

こうして、知恵と筋肉と「食べる執念」によって第2階層を完全攻略した一行は、新たな食材の可能性を抱えて、意気揚々と凱旋するのだった。

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