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固有スキル『トラップバスター』と新しい街で暮らし始めた僕の話  作者: けろ
キアリーと黒鉄の迷宮

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27.第3階層

階段を下り、足を踏み入れた第3階層。

そこは、第2階層の毒々しさが嘘のように清涼な空気が漂っていた。毒素の気配はない。通路には罠の気配もない。あまりにも「普通」すぎて、かえって不気味なほどだ。

しかし、長い一本道の突き当たりに鎮座する、蔦の絡まった重厚な大扉の前で、キアリーは足がすくんだ。

『トラップバスター』が、これまでとは比較にならないほど鮮烈な紫色の警告を視界に叩きつけていたからだ。


『発動条件:扉を開ける』

『効果:モンスターハウス』


「……嘘でしょう?」

キアリーの喉から、かすかな悲鳴が漏れる。

「モンスターハウス」。冒険者の間で最も忌み嫌われる言葉。扉の向こうに待ち受けているのは、数匹の雑魚ではない。扉が開いた瞬間、逃げ場のない小部屋から雪崩のように溢れ出す、無数のモンスターの群れだ。

「どうしたキアリー、顔色が悪いぞ」

アーサーが心配そうに覗き込む。

「……扉の向こうは、モンスターハウスです。開けたら最後、部屋中にモンスターが溢れ出してくる……」

その言葉に、ステラとアーサーの表情が硬くなる。

現在の戦力は、限界を超えて疲弊している。ボリスの『ハイパーストレンジ』はクールタイムに入ったままで、もうあの「物理的な力技」は使えない。さらに、ギルド支給のアンチドートの効果時間も残りはわずかだ。

「回復役もいない私たちが、あの大群を相手に突っ込むのは……自殺行為ですわね」

ステラがモーニングスターを力なく下ろす。

もし、ここが第1階層や第2階層のように「何かを食べて弱らせる」だとか「パズルを解く」だとかの猶予があればまだいい。しかし、モンスターハウスは「開けた瞬間が勝負」の極めて暴力的な状況だ。

準備なしに突入すれば、迷宮の餌食になるのは火を見るよりも明らかだった。

「せめて、扉の隙間から中の気配だけでも……」

キアリーが躊躇いがちに扉へ近づこうとするが、それはあまりに危険な賭けだ。

「やめておけ、キアリー。……撤退だ」

アーサーがキアリーの肩を掴み、断固として首を振った。

「悔しいが、今の俺たちにはこの扉を突破する手段がない。欲張って全滅するより、情報を持ち帰って、万全の準備を整えてから来るのが、今の俺たちの『正解』だ」

「……はい。それが一番ですね」

キアリーも深く頷く。

無理をして全滅するくらいなら、一度引く。それは敗北ではなく、次への戦略的撤退だ。

4人は無言で踵を返し、来た道を戻り始めた。せっかく下りてきた階段を登り直し、再び暗い通路を抜けていく。

背後から、閉ざされた扉の向こうで、何か「うごめく音」が聞こえたような気がした。

もしあの扉を開けていたら――。想像するだけで、キアリーはゾッとした。

地上へと戻る階段を駆け上りながら、彼らは誓う。

次は、必ずこのモンスターハウスを突破し、その先にある真実を掴み取ると。

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