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固有スキル『トラップバスター』と新しい街で暮らし始めた僕の話  作者: けろ
キアリーと黒鉄の迷宮

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22.迷宮のその後

「――総員撤退、および第2階層の『無期限封鎖』。これが俺の決断だ」

冒険者ギルドの会議室に、デイビッドの重々しい声が響いた。

3度目の正直も虚しく、何の成果も得られずに帰還したキアリーたちの報告を聞き、ギルドマスターは深く椅子にもたれかかった。

「マスター、本当にいいのですか? 例えば、新人からベテランまで、人員をあのフロアへ一斉に投入してしらみ潰しに調べれば、何か見つかるかも……」

エレンが食い下がったが、デイビッドは静かに首を振った。

「正解のロジックが分からねえ状態で、アンチドートの支給にも限界がある。そんな中に大勢の人間を放り込むのは『人災』を呼び込むだけだ。これ以上の消耗は防ぐ」

裏切られた過去を持ち、「仲間を守る組織」を掲げるデイビッドだからこその、あまりにも正しく、そして優しい決断だった。

しかし――もしここで、彼がその優しさを捨てて「人海戦術」を断行していれば。

大勢の冒険者がフロア中に散らばり、あちこちの小部屋の宝箱をドタバタと同時にいじくり回した結果、「偶然にも2カ所のスイッチを同時に押してしまう」という奇跡が起き、隠し扉はあっさりと開いていたはずなのだ。

迷宮の悪意は、デイビッドの「リーダーとしての誠実さ」さえも利用して、冒険者たちを完全にシャットアウトすることに成功したのである。

こうして、『黒鉄の迷宮』第2階層の扉は、重々しい鎖によって固く閉ざされることとなった。

それから、しばらくの間――。

「キアリーちゃん、今日もホーンラビットのお肉、10羽分お願いね!」

「はーい、マジカルマッシュルームもいっぱい採ってきましたよ!」

第2階層が完全に行き止まりになった結果、冒険者たちの目的は「第1階層の資源乱獲」へとシフトした。

何せ、1階層目なら強力なトラップもなく、アンチドートも不要で、ただ歩くだけで「美味しいウサギ肉とキノコ」が無限に手に入るのだ。

いつしか街の冒険者たちの間で、『黒鉄の迷宮』は恐ろしい未踏破ダンジョンではなく、「美味しいウサギ肉とキノコがめちゃくちゃ穫れる最高の狩場」という、のどかなイメージで完全に定着してしまっていた。

今日もボリスの青果店の前で、ステラと仲良く野菜を解毒しながら、キアリーは遠い迷宮の空を見上げる。

「うーん……結局、あの壁は何だったんでしょうね?」

「さぁ? でも、こうして毎日ボリスさんのところで美味しいお野菜が売れて、お給料も貰えるんですもの。あの意地悪なダンジョンのことなんて、もう忘れてもよろしくてよ、キアリーさん?」

「あはは、それもそうですね」

平和な日常の裏で。

活気溢れる冒険者ギルドの、一番端っこにある掲示板の隅っこ。

そこには、エレンが書いた1枚の依頼書が、誰に読まれるともなくひっそりと貼り出され、風に揺れていた。


【緊急募集:謎解き・パズル系固有スキル保持者、求む。報酬は要相談。ギルド窓口エレンまで】


迷宮の隠された正解に、この街の誰もが気づかぬまま。

トラップバスター・キアリーの冒険は、一時の、そして最高に美味しい休息の季節を迎えるのだった。

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