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固有スキル『トラップバスター』と新しい街で暮らし始めた僕の話  作者: けろ
キアリーと固有スキル

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2.トラップバスター

ボリスに勧められるがままに街の大通りを進むと、一際頑丈な石造りの建物が見えてきた。入り口の看板には、剣と盾、そして天秤が交わる意匠が刻まれている。ここが『ギルド』のようだ。

重い木製の扉を押し開けると、中は外以上の熱気に包まれていた。

屈強な戦士や、怪しげなローブを纏った魔術師たちがせわしなく行き交っている。キアリーは場違いなところへ来てしまったと気後れしながらも、人の少なそうな受付の窓口へと進み出た。

「いらっしゃいませ!本日はどのようなご用件でしょうか?」

窓口にいたのは、明るい笑顔が印象的な若い女性だった。テキパキとした所作が、いかにも仕事の出来る受付嬢といった雰囲気を醸し出している。

「あの、登録をしたいな、と思いまして……」

「初めての方ですか?以前にどこかの街で冒険者登録をしたことは?」

「えっと、初めてです。今日この街に引っ越してきたばかりで」

「なるほど、新規のご登録ですね!では、こちらの用紙に名前と年齢、あとは自由に『得意なこと』などを書いてくださいね」

受付嬢から手渡されたのは、厚手の羊皮紙と一本のペン。

キアリーは少し考えた後、さらさらと迷いのない手つきで用紙を埋め、彼女へと手渡した。

「はい、確かに。こちらにて、私、エレン・スウィフトが承りました。さっそく確認させていただきますね」

エレンは慣れた手つきで用紙に目を走らせる。キアリー・アーンハート、22歳。そこまでは順調に読み進めていたが、ある項目に差し掛かったところで、彼女のペンがピタリと止まった。

その綺麗な眉が、不思議そうにピクリと跳ねる。

「これは……『トラップバスター』?罠を探知する能力、とのことですが……これは……?」

エレンは不思議そうに首を傾げ、キアリーの顔をじっと見つめた。

「はい、ボクの固有スキルなんです。……と言っても、大それたものじゃなくて、ボクが『罠』に値する、と認識したものを検知できるだけの能力なんですけど」

キアリーは少し照れくさそうに頭を掻いた。

そう――先ほど、果物屋のボリスの店で、見た目には全く分からない腐ったリンゴや傷んだ野菜を完璧に見抜いてみせたのも、すべてはこの能力のおかげだった。


発動条件:食べる

効果:下痢および発熱(1〜2日)


キアリーにとって、それを食べた人が下痢や発熱で苦しむような食べ物は、立派な「人体を害する罠」なのだ。彼の目には、あのリンゴの芯から毒々しい「罠の気配」がはっきりと見えていたのである。

用紙を眺めるエレンは、まだその全貌を理解しきれていない様子だったが、どこか楽しそうに目を輝かせた。

「なるほど、罠探知の専門職……ということですね。まだ見ぬ未知のスキルかしら。これは面白い人材が来てくれたかも……!」

「あ……でもボク、戦闘能力は皆無でして……。ヘタしたら、そこらへんの子供より弱いかもしれないです……」

キアリーは消え入りそうな声で、両手を前で振りながら弁明した。

冒険者といえば、魔物を剣で切り伏せたり、ド派手な魔法を放ったりするイメージだ。しかし、自分にはそんな力は一切ない。

エレンは「ふむふむ」と深く頷きながら、手元の書類にペンを走らせる。

「なるほど、冒険者パーティーに参加するときは戦闘に参加せず、周囲に守ってもらう必要あり……と。かしこまりました。そういう役割ロールのサポート職もたくさんいますから、恥じることはありませんよ」

「はぁ、ならいいんですけど……。あ、そういえば」

キアリーは思い出したように、懐の銅貨に手を当てた。

「さっき、市場でボリスさんという果物屋の店主さんが、ここへの登録を勧めてくれて。『今度からギルド経由で指名依頼をする』って言われたのですが……そういうのって、できるんですか?」

その言葉を聞いた瞬間、エレンはガタッと椅子を鳴らして身を乗り出した。

「えっ! もうそんな契約を取り付けてるんですか!? 登録前にスポンサーを捕まえてくるなんて……キアリーさん、実はものすごく優秀な方なんですね!」

「そんな大げさな……!ただ、ちょっと仕分けを手伝っただけで……」

エレンの勢いに圧倒され、キアリーは思わず一歩身を引いた。

しかし、大げさに褒めちぎるエレンの顔を、間近でじっと見つめたそのとき――キアリーの脳裏に、パチリと嫌な火花が散った。

ボリスの店で、腐ったリンゴを手にした時と同じ、あの不快な「違和感」だ。

(……え? エレンさんから、罠の気配アラートがする……?)

キアリーの視界の端で、エレンの顔を中心に、うっすらと禍々しい光の輪が明滅し始める。それは彼のスキルが、対象の危険性を知らせるシグナルだった。

「あの……ごめんなさい、エレンさん。ちょっとだけ、顔を見させていただいてよろしいですか?」

「え? 私の顔ですか? 何か付いてます?」

不思議そうに首を傾げるエレンに対し、キアリーは集中を高めた。

意識のスイッチを切り替える。

キアリーはエレンに向けて、自身の固有スキル『トラップバスター』を明確に発動した。


発動条件:粉塵を口から一定量摂取する

効果:神経および腎機能障害

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