13.アンチドート
「……あ!アーサーさん、マックさん、これです! 地面から時折生えてるこの黒い草、これが『黒鉄草』ですね!」
「あらホント! ただの不気味な雑草かと思って踏み潰してたわねぇ」
一度クリアしたはずの第1階層は、目的を変えるだけで、まるで別な顔を見せてくれた。3人はテキパキと材料を回収していく。
「この壁の白い粉は何かしら?」
「それが、硝石じゃ!そぎ落として袋に詰めるぞ」
さらに、前回バター醤油炒めにして美味しくいただいたホーンラビット。
「角なんてあったかなぁ?」と首を傾げながら、仕分けた死骸の頭のてっぺんを恐る恐る触ってみると、毛に隠れて確かに硬い突起のようなものが確認できた。
「へぇ、これが角だったんですね。……あ、ちなみにこのキノコ型モンスター、『マジカルマッシュルーム』って名前だったんですね。ボク、ただの『美味しいキノコ』だとばかり……」
「フォッフォ、お主は本当に名前より食えるかどうかじゃな。ほれ、次はスライムじゃぞ」
マックが杖で叩いたグリーンスライムの核が砕け、ドサリと床に落ちる。キアリーはそれを干す前にじっと見つめ、視界に浮かぶログを読み上げた。
『発動条件:食べる』
『効果:胃痛を引き起こす(個人差あり)』
『解除方法:天日干しにすることで完全に無毒化』
「へぇ、干すと無毒化するんだ……」
「干しグリーンスライムを粉にすると、よく効く『胃腸薬』になるぞ。この前のお主のように、エールを飲みすぎて腹を壊した時にはうってつけじゃな」
「うぐっ……それは、以後気をつけます……」
苦い顔をしながらも、キアリーは胃腸薬のライフハックをしっかり脳内にメモした。
こうして全ての素材を揃えた3人は、ギルドへと帰還。
前回手に入れた、あのずっしりと重い「銅貨1000枚の袋」と共に、すべての材料をギルドの科学技術班へと提出した。
科学技術班の大きな研究室。
大釜の中に水と、砕いて混ぜ合わせた黒鉄草やマジカルマッシュルーム、ホーンラビットの角、硝石、干しスライムの粉末が投入される。そこへ、ジャラジャラジャラ!!と凄まじい音を立てて、1000枚の銅貨が容赦なく投げ込まれた。
次の瞬間、大釜の中からパチパチと鮮やかな緑色の炎と、不思議な魔力の光が立ち上る!
大量の銅が激しい化学反応の触媒となり、不気味だった液体が、またたく間に澄み切った黄金色の液体へと変化していく。
「……完成です! これが、あらゆる毒を打ち消す特効薬『アンチドート』です!」
科学技術班の技師が、出来上がった薬を小さなガラス瓶に小分けにして、キアリーたちに手渡した。
「やったわね! これでアタシの自慢の肌を脅かす毒ネズミも、毒霧も、なーんにも怖くないわ!」
アーサーが完治した右腕の拳を力強く握りしめる。
手元には、どんな毒をも無力化する黄金の特効薬。
街の過剰な銅貨をきっちり消費し、準備を完璧に整えた3人が、いよいよ因縁の『黒鉄の迷宮』第2階層へ、満を持してリベンジの火蓋を切る――!




