性能の暴力+積み重ねた努力
前回のあらすじ
スタンピード撃退の宴を楽しみ、街をあとにした。
あと、新たなカップルも誕生した。
「今日はここで野宿しよう。俺は獲物を取ってくるから」
「分かった。私達は薪木とか集めておくね。」
沿岸都市ヴェネンから出発して1週間程たち、とある森の中で野宿することになった俺たち。
今日の晩飯のために狩りに出かけた俺だったが、その途中、モンスターに遭遇した。
「ハイゴブリン3匹、ホブゴブリン5匹か。
俺の狩った獲物を横取りするってんなら容赦はしねえぞ?」
まあ話が通じることもなく、俺も奴らも武器を構えた。
その時、俺も驚愕した。
奴らの後ろから現れた、全身鎧を着込んだ騎馬兵が大きな剣を振るい三匹のハイゴブリンの頭をまとめて切り落としたのだ。
驚きで動けなかった俺だったが、そいつが剣を掲げ、黄金の如き炎をまとわせ斬撃を飛ばした。
「ッ!!あぶな……。」
間一髪ジャンプして避けたが、もうコンマ2秒遅ければ、そこで燃えて灰になっているホブゴブリンと同じようになっていただろう。
はっきり言って一撃のリーチ、破壊力、速さに隙がなかった。
あのフラムエルとかいう野郎も簡単に倒すことが出来る強さだ。
剣そのものは2メートルはあるし、あれをゴツい鎧を着ながら片手で振るうのに、身長は俺より低いように見えた。
そして、剣を背中に納める(正直サイズのせいか背負われている感じがすごい)と、兜を脱ぎ、顔があらわになった。
「……!お前って……」
その顔を見てさらに驚く。
ショートボブでそろえたきれいな黒髪、
白く透き通るような肌、
そして何より、幼さが感じられる愛らしい顔立ち。
うちのクラスで見ていたし、誰もが間違えることのない我らの天使。
天草菜月。その人だったー。
はっきり言って不安になった。
掃除の時に机を動かすときも少し心配になるほど力はなかったし、
体育の授業ではかなり下の方の、というか最下位レベルの体力だった菜月が、特大サイズの剣を振り回して蹂躙していたのである。
正直どんな苦労をすればそんなふうになってしまうのかと、不安に思った。
まあ、
「あれ?!藤芝さん、ですよね!?龍乃ちゃんからは聞いてたけど、やっと会えました!」
そんな不安を吹き飛ばしてくれるぐらいに、彼女は彼女のままだった。
「……相変わらず敬語なのな、菜月。まあおかげで安心したが。」
「あ、すみません、また戻っちゃったー
え?安心、ですか?」
小首をかしげて不思議そうにする。いちいち動きが子供っぽいな本当、だから人気なんだが。
「こっちの話だ。それより菜月はなぜこんなところに?」
「この国から救援要請がありまして、私含めて四人が今回ここに派遣されてきました!
ずっと仲良くしてたので安心できましたよ!」
菜月とは中学時代からの知り合いで、時々それぞれおすすめの本を貸したりしていた仲だ。
彼女もあまり友人は多くないが、俺とは違ってかなり人気がある。
俺の義妹である龍乃とも面識があり、何度か遊んでいるらしい。
「救援要請?モンスターか?数が多くなりすぎたのか、高ランクのモンスターが棲み着いたのか、どっちなんだ?」
「Sランクモンスターらしいです!」
「Sランクって……Aランクより上だから……相当まずいな!?」
「まあたしかにそうですね。だから私はここに特訓も兼ねてここに来たんですよ!まさか達魔さんと会えるとは思ってなかったです!」
「仲間は?」
「みんなは王宮の方で特訓してますね!」
あれ?なんで菜月だけここでやってるの?仲間外れとは考えられないが。
「王宮はなんだかうるさい人ばかりなので嫌なんです!」
「なるほど貴族か?」
「そうです!まさにその通りです!
『王太子様に好かれているだけで図に乗るなよ』とか意味が分かりません!王太子様はみんな同じように接しているじゃないですか!なんでわからないんでしょうね?」
「さ、さあ………?」
分かったこれ。無自覚に惚れさせたんだろう、王太子を。それで全く気付くことなく今に至っている、そういうことだろう。
王太子、まだ会ったことはないが、南無。
翌日。
「というわけで、菜月が案内してくれるから着いていくぞ。」
「はーい。……一応聞くけど、付き合っているとか、そういうのはないよね?」
「そんなわけねえよ、初めての彼女はメルだって!そもそもどっちも異性としては見ていないから。なあ菜月?」
「はい。人してはいいんですけど、異性としては見てないですね。」
「そっか。よかった……」
正直、王太子に目を向けてほしい感は持っている。会ったことないが。
「しっかし馬もかなりでかいし、鎧は着込んでいるし強そうだな……名前はあるのか?」
「ふっふっふ。私がそれを怠るわけ無いですよ!」
「おお?そうなん?で、名前は?」
「『ハルバーダイモン』です!」
「めっちゃ強そうな名前だな!」
「ちなみにメスみたいです!」
「いいのかその名前で??」
道中、話しながら森を進んでいた俺たち。その前に現れたのは、純白の馬にまたがった軽装の鎧を着た美少年だった。
「ナツキ!探しましたよ!」
「あっ王太子様!ごめんなさい1日出て行っちゃってて!」
あら、まさか王太子自ら来るとは。
「もう戻ってこないかと思ってましたよ……!」
「そんなことないですよ!王太子様が大事に思っているこの国を見捨てるわけないじゃないですか!」
「はう!そ、そうですか……」
ああ、やっぱ思ったとおりだったわ。結構ガチで惚れているなこれ。
「こちらが、スウェルディ王国の王太子様、
フィン・ラ・スウェルディ様です!
王太子様、こちらは私の友人である藤芝達魔さんです!」
「どうも王太子殿。ご紹介に預かった、藤芝達魔だ。よろしく頼む。」
「気軽にフィンと呼んでくれ、タツマ。」
かなり気さくな人で安心した。こちらとしても話しやすくて何よりと言ったところだ。
「殿下!それにナツキ殿!ご無事で何よりでございます!」
「じいや、済まないな。急に飛び出して行ってしまって。私はこれから父上に新たな客人を紹介しなければならないが、大丈夫だろうか?」
「陛下は今日は暇だと申しておられましたので、問題ないかと。」
「では、一時間半後に父上の客間に行くとしよう。そう伝えておいてくれ。」
「かしこまりました。」
おお、普通に良い対応してる。将来有望なようで何より。
え?服を整えてこい?風呂にも入れ、と?そのために時間をくれたんだな、ありがとう。
その後王様に会い、フィンからの説明を聞いた。
「なんと……ナツキ殿たちだけでなく、タツマ殿も参加なされると……」
「正確には俺の仲間達もだ。」
俺は滞在する理由を作れると思い、討伐に参加することにした。無論Sランクモンスターを放っておけないというのもあるが。
「ありがたい。だが、相手はSランクだ。勝てるか?」
「問題ないです。この人たちは、ものすごく強いです!」
「それで?そのモンスターは一体何なのですか?」
これだけは聞いておきたい。どんな相手かもわからないのは厳しいからな。
「目撃情報などをまとめた結果、ヒュドラだということが分かった。」
「たしか、劇毒を吐き、毒沼を作り出す力を持つと言われる十の首を持つ伝説の蛇ですね。」
「左様。やつを野放しにしてはおけん。」
「毒か……ヒュドラって切られてもまた首が生えるやつだよな?」
「はい。そのヒュドラであっていますよ。」
良し。それならもう攻略法は分かった気がする。
「本当か?!」
「ええ、それが通じれば間違いなくうまく行きます。」
「なにはともあれ、この国の未来を、守ってくれ……」
「もちろんです!」
あの迷宮で戦った骸骨の武者、【血飲み肉裂き】を使っていたやつと同じランクらしい。
覚悟をもって、挑むとしよう。




