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かくも素晴らしき青き世界  作者: 花形都
序章 肉と皮、そして心
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4話 未だ犬

「魔力って何ですか!」


 今1番気になることを声を大にして聞いた。こっそりと聞き耳を立てていた周囲の人達も先程のポッさんのように目を丸くしている。


「簡単に言えば自然のエネルギーって感じかな。大体1000年前に発見されて、それ以来ずっと研究が続けられているんだよ。さっきみたいに魔力を利用して色々な事象を引き起こす【法術】がそれの最たる例だね」


「法術って何ですか!」

「先程言った通り、法術は魔力を利用して色々な事象を引き起こすんだ。大きく分けると魔法、外法、呪法、聖法の4種類あって、火や水を出したり動物を操ったりできるよ!」


 すごく楽しそう! 昨日アグニ達が言ってた結界ってヤツも法術なのかな? 私にも使えるかな? 印入れられたし使えるよね!


「アグニ君は元々研究職でね、法術に関してはここらで1番詳しいはずだから彼に聞いた方がいいよ」


 へー、そうなんだ。あいつ研究者とかやれるタイプだったんだ。ほぼ上裸で危機管理もクソもなさそうな格好してるのにそんなことできたんだ。


「他に聞きたいことはあるかい?」

「うーん…… 今はもう無いです!」

「それは良かった。また聞きたいことがあったら呼んでくれていいからね」


 ポッさん……! 良い人だ……! でも支部長って忙しそうだし呼ぶことはなさそうかな。

 さて、アグニを探すか。


 アグニが用があると言って歩いて行った方向は覚えていない。知的好奇心が刺激されては視野も狭くなるというもの。誰がどこに行ったかなど全く気にしない。動かずにここらで待っていた方が良さそうではあるが、今の私は好奇心旺盛なのだ。こんなに広い建物を探索しない選択など取れるわけがない。

 ということで壁を隔てた向こう側、随分と賑やかな方に行ってみる。


「ここは…… 市場かな?」


 目の前には多種多様、種々雑多な品物がずらりと並んでいる。ざっと見ただけで武器や服、書物に野菜。奥の方では一際大きい生き物の死骸が売られている。恐らくは魔物、食品なのか素材なのかは判断できないが死骸の前で大勢の人が声を張り上げている。これは競りというものであろう。昨日生まれたばかりのような身ではあるがこれは言わせていただきたい。


「競りなんて初めてみた!」


 事実ではあるが、お前からしたら何でも初めて見るものだろうがというツッコミが来そうだ。

その後も競り以外で初めて見るものを探して歩き回る。……あれ? 私何しに来たんだっけ?


 ……そうだ! アグニを探しに来たんだった!!

すっかり忘れてしまっていた本懐を何とか思い出せた。正直忘れてしまっていた方がギルド探索へのモチベーションは高かっただろう。

 まぁ思い出したからには次のスペースに行ってみよう。次は人だかりができているにもかかわらず水を打ったように静かなところ。遠目からでもそこにいる人々の険しく鋭い眼光がはっきりと見えている。何をする場所なのだろうか?


 小走りでそこへと向かってみる。そして人だかりを超えた先、そこには一面が掲示板になっている壁があった。どうやらここには依頼が貼ってあるみたい。依頼を出した日や難易度順で並べられている。その内の一つ、2日前に出された低難度の依頼を見てみると、

 

 依頼内容:「魔晶水」の回収

 報酬: 1瓶につき100ギア

 

と書いてある。ギアが貨幣であることは理解できるが100ギアの価値がわからない。自分で言うのも何だが知識の偏りが酷い。だが2日以上前の依頼がこれしか残っていないあたり、報酬が低すぎて誰もやる気にならないか、逆に報酬が高すぎて怪しくて手をつけられていないかの2択だろう。

他の依頼書も見てみよう。そう思った瞬間、奴は現れた。


「てめぇ何でこんなとこにいんだよ。用が済んだんだ。もう帰るぞ」

「えー」


 思わず駄々をこねる子供のような声を出してしまった。もう少しぐらいこの場に居させてくれたっていいだろう。というかイノベーターとして働いてほしいならこういうのは見させてくれよ。


「イノベーターとして働いてほしいならもうちょっと見させてよ」


 おっと、思わず口に出してしまった。


「……まぁそれはそうか」


 えっ、折れるの早っ! 


「まずは低難度がいいか…… おっ、良い依頼あんじゃん」


 そう言って彼が見せてきたのは先程の怪しい依頼。彼の言う「良い」が何を指すのか分からないが何か嫌な感じがしてきた。


「どこら辺が良い依頼なの?」

「報酬が相場よりバカ高い」

「……それって怪しくない?」

「そっちのほうが面白いだろ」


 昨日今日で大体分かった。アグニは馬鹿だ。こいつも私と負けず劣らずの好奇心を持っている。でもこいつの方が私より立場が上だ。この依頼を受けなければいけなくなってしまった。


「これ受付に持ってきゃ受注完了だから。さっさと言ってこい」


 命令口調では気が進まない。私にだって心があるんだぞ。それにその依頼受けたくないんだけど!

 

 ……あとその手に持ってる板は何? さっきからずっと気になってるんだけど。床の修理にしては多いし本当に何に使うつもりなの? 


「その板は何?」


「お前の家を作る」


 ……は? 家? 明らかに木材足りないだろ。寸法ぐらいちゃんと測って買いなよ。 ……それとも何? もしかして……


「私を犬小屋に住まわせる気か!!」

「その通りだよ!!」


 ひど〜い! 私だってわざと床凹ませたわけじゃないのに〜!!

ていうか人権とかどうなるんですかー!!

あっ、私人じゃないか。

でも動物愛護とかどうなるんですかー!! 


「言っておくが魔物には一切の法が適用されないからな。お前をどうしようと俺の勝手だ。それでも住まわせてやるってんだからマジで感謝しろよ」


 くっそ!! こいつ心読んできてんのか〜!? ていうかまだ魔物って決まったわけじゃないんじゃなかったのかー!? 私は何でこんな奴に拾われてしまったんだ。運のないヤツだよ私は。


「あと小屋は自分で組み立てろよ。そんくらいできるだろ」


 最悪。だけどもう何も言わないさ。だって言っても無駄だからね!! 


 あぁ、自由が欲しいよ。

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