世界最大のクエスト
ミル姉が立ち上がると腰に手を当てて、
いつもの調子で睨みつけ、
舌打ちすると、
つかつかと肩を怒( いか)らせてやって来る。
よく見ると、
いつも砦に着てくる少し上品な服じゃない。
私たちと同じ擦り切れて、
小汚い亜麻素材。
彼女のそのワンピースが、
べっとり濡れていて、
ムワッと汗の匂いが広がった。
「 な、何しに来やがった?
ここは私のプライベート空間だぞ?
アホ、おねしょ、泣き虫のちびっ子海賊団ども!」
「ぐぬぬ……www」
( 探検隊だし......アホじゃないし......w )
私が悔しそうに歯噛みすると、
相方は当然、まだまだ小さいながらも鍛錬している氣を練り上げ、
戦闘モードのジト目に突入w
それはそうだろう。
おねしょはあまりにも酷いwww
そんな酷いあだ名は、
同じ日に生まれた身内で、
遠慮がない間柄の私だって使わないwww
相方は夜が怖くて、
我慢しておねしょを漏らしてしまうだけだ。
私は夜は怖く無いが、
たまに漏らしてしまうw
仕方がない......人間だもの......アブを。
前世での私の娘もそうだった。
「 今日もいい天気だね!」って言いながら、
早朝から平静を装い布団を干し始め、
トイレの高い棚に濡れたおパンツを投げて証拠隠滅をしていたwww
私もそうだったし、逆におねしょを、
しなかった人間なんているのだろうか?と問いたい。
こちらの弟も泣く準備は万全のようだ。
ちなみに相方に負けないぐらいおねしょをするが、
おまいは、まず泣くんじゃない!www
まぁ、生意気だが相手は11歳の小娘。
アホと言われる度にショックを受けるが、
大人の対応。
「 ミル姉?私達、おばあちゃんに用があるんだよね? いる?」
彼女はうんざりした顔で吐き捨てる。
「 ばあちゃんは、父さんと国境の親戚の家に行ってるからいない。
当然、母さんは忙しい。
私も忙しい。お前らちびっ子海賊団の手伝いはかえって手間になる!
わかったら帰れ!今すぐ帰れ!」
相方と弟がブーブー必死に抗議の声を上げるが、
帰れ!帰れの並行線。
私は隊員たちの激しい抗議の声を制止すると、
真剣な眼差しで交渉を続ける。
「 ハーブについて教えてもらいたいんだよね?
疫病対策になるハーブの種類と方法をさ?」
ミル姉の片眉が吊り上がり、
目が一瞬、光った様な気がした。
アゴを親指で撫で、
左上に視線を移動させて考えている。
「 う〜ん......そうだな......母さんの友達に
ハーブのスペシャリストがいたはずだな......」
来た!それだ!その人だ!
「 是非教えてください!ミル姉様!そのスペシャリストを!」
ミル姉はいやらしい、ニマっとした顔で、
こちらを見る。
「 へへへwそうだな、銀貨5枚だな!
それで疫病対策を聞いといてやるよwww 」
この世は弱肉強食なのか?......
親しき仲には遠慮無し?......
5歳児の足元を見て吹っかけてくるとは、
なんていやらしい女だwww
その商魂は認めるが、
ろくな商売人にならないだろうw
ただでさえ串焼き肉資金もリスタートな上に、
マイナスの世界だけは何としても避けたい。
いや、相方と弟の積み立てた銀貨6枚を考えると、
もうマイナスかw
我々は、粘り強い交渉を重ね、
時に反ミル姉プロパガンダを仕掛けた結果、
情報は入手したら、即提供してもらう事に。
後は畑の範囲を決めて、
我々ちびっ子除草隊の五日間の奉公が決まるのであった。
相方はおねしょと言われプライドが傷つけられて「 ブーブー」うるさかったが、
仕方あるまい...... 本当だもの......アブを。
未だ修復作業中のアハル砦が燃え上がるように真紅に染め上がり、
上空には、
編隊を組んで入江に帰って行く、
たくさんの水鳥たちの織りなす美しい景色。
近くの森ではカラス達が「クワッ、クワッ」っとおやすみの挨拶をしている。
空気もひんやり心地よく、
亜麻のシャツがほのかに乾いた汗の匂い。
水鳥達と共に砦に帰るちびっ子お疲れ隊。
夕方なのに戻らない我々を、
心配した兵士たちが総出で探していたらしく、
激しくちびっ子怒られ隊www
次の日―――
ミル姉は訓練と授業を休んだ。
珍しい......
砦に行かないと親に怒られると、
常日頃から公言していたのに。
彼女と同じ年のドン爺の末っ子の娘、
シェリ姉に聞くも手を広げ、
肩をすくめて知らないと言われた。
異変はそれだけでは無い。
何故か父がいやらしいぐらい優しいかったwww
お師匠の訓練と座学が終わるとバーンおじさんに呼ばれて、
ミル姉の休んでいる理由を聞かされた。
何でも、昨日の彼女の悪巧みがバレたらしいw
それで母親が、朝一番おじさんの元へ謝罪と、
スペシャリストも伴い疫病対策も
知らせに来てくれたらしいのだ!
( 良かった......)
それだけでない!
夜に作成した文献が、
おじさんの机にあるのを、
私は見逃さなかった。
その上、お使いクエストが発生。
「アブー、国への書簡用の羊皮紙を100枚買って来てくれないか?
お前たちの先生も連れてな!」
引き出しから摘み上げられたそれは、
鼻をくすぐる特有の金属臭。
初めて見る......
キラキラ鈍色に輝く重厚な黄金色のそれは、
憧れの金貨です!
生唾を飲み込む。
心が震える......
「 1.2.3......に、20枚!?」―――
「 金貨20枚ですと〜〜〜!!!」
しかも、余ったお金は自分の物にして良いと言われた。
普通に考えたら、
銀貨20枚のあの綺麗な羊皮紙を
100枚分で金貨20枚。
丁度ではあるが......しかし、
私の可愛さと必殺ポーズで値切れば、
更なる古文書作成ができるのではないか?
上手くいけば、串焼き肉資金が一気に......
( うぉ〜〜〜やったるで〜〜〜www)
燃えないはずがない!




