求めよ、さらば与えられん
夕食後、私は台所から貴重なオリーブオイルをこっそり拝借し、
父の部屋から盗み出したランタンに、
ドキドキしながら充填し始めた。
そして暖炉の残り火をそっと掻き集め、
ランタンに火を移す。
「よし!...... 」
見よう見まねだったが、
上手くいった......
自身とランタンを毛布で隠し、
照明が外にもれないように書庫に向かう。
しかし思った。
( なんで、子供というだけで、こんなにも罪悪感が襲ってくるんだろう? www )
子供が火を使い、
大切な文献がたくさんある夜の書庫に忍び込む行為が、
何か盛大な失敗イベントを招きそうな気がして、
私を余計にハラハラ、ドキドキさせるのだった。
重たい書庫の扉に手間取るも、
何とか侵入に成功する。
書庫の独特の匂い。
それは乾いた埃と、
遠い昔に死んだ獣の脂。
そして長い年月を経て酸化したインクが混じり合った、
少し重苦しい臭いだ。
ランタンを掲げるたびに、
その濃密な空気が喉の奥にへばりつく。
「 あった......良かったwww」
私はニヤリと悪い顔で笑うと、
インクの木箱を手に取り、
椅子に毛布を丸めて置き、
正座でその上に座ると、
作業に取り掛かるのであった。
ランタンの炎がゆらゆら揺れ、
羊皮紙のざらついた感触が指先に伝わる。
インクの瓶を開けると、
ツンとした酸っぱい匂いが鼻を刺す。
第1弾として、この国の治療法と環境構築、
町を衛生的に保つ方法を特化させた文献を、
大人たちに投下する。
その当時、一般的な治療法は病人の血を抜くものが主流だったが、
私はそれを止めさせたかった。
このために、私がコツコツ貯めた串焼き肉資金を羊皮紙に注ぎ込んだと言っても過言ではない。
食中毒のような症状で苦しんでいる患者をさらに傷をつけて、
治療と称するその行為が、全然理解できなかったからだ……
とりあえず、真っ先に先行させる対処として、
重病人を1箇所に集め、
濾過か煮沸した水を定期的に与える。
食事はお腹に優しいパン粥や消化に良い野菜煮込みスープを、
無料配布するのが良いだろう。
この世界に生まれて、まだ5年しか経っていないけど、
衣服も暖房も寝具も全然充実してなくて、
秋が訪れると毎日、朝晩に体が冷えるのを感じている。
だからこそ、温かいスープを飲むと体の中からじんわり熱が広がって、
生きてるって実感が湧くのだ……
野菜スープの利点は、体を温めるだけじゃなく、
野菜の旨味や栄養素が汁に全部溶け出して、
病人でもスプーンで飲むだけで余すことなく摂取できるところだと思う。
特に前世で健康オタクだったサラリーマンの私は、
料理レシピに関しては消化の良い健康的な物を、
たくさん記載。
次に、私は二つの大きな対策を分けて書いた。
一つは病人の看病をする人たちのための衛生論。
・病気の看病をする者は、
患者に触れる前に手を洗い、
終わりにはお酢や酒で消毒すること。
・口や鼻を布で覆い、
手には厚手の布を巻いて触れること。
・布は使い回さず洗濯をすること。
これで病気が他の人に移らないはずだ。
図解も入れて、
手を洗う順番や布の巻き方を簡単に描く。
二次感染を防ぐのが大事だから、
ここは特に丁寧に書いた。
もう一つは町全体の汚物処理とリサイクルで、
これは都市計画でも根本的な考えをシンプルに表現。
飲み水に使う上水川と汚水を流す下水川を説明すると共に、
汚物は大壺に集めて、
牛馬車で農地の下水川付近まで運ぶ。
そこで落ち葉や草などと混ぜて堆肥にする。
図解で壺の置き方や運び方、
堆肥の作り方など管理の仕方を描く。
汚物を堆肥化して畑に再利用し、
作物を収穫して有効利用できる資源として、
ちゃんと循環させる所に意義がある。
そして、
・従事する者は町の衛生管理を司り、
人々の健康を守る者として、
普通より高き俸給を与え、
高級職として待遇すべし——
と、古文書っぽい言い回しで書いておいた www
ここがいい加減では、もともこうもない。
そもそも衛生管理の理念を理解していない者に任せたら、
仕事が雑になって全部台無しになってしまうからだ。
まだまだ書きたいことが山のようにあったが、
羊皮紙がもうないし、私のお小遣いももうない www
最後に、
求めよ、さらば与えられん。
尋ねよ、さらば見出さん。
門を叩け、さらば開かれん。
欲するなら、我に羊皮紙を捧げよ!
求めるなら、更なる古き叡智を与えるであろう。
と、私の切実な思いも込めて締めくくった 。
( 届け私の切実な気持ちwww )




