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羊皮紙と小銭袋

( しかし……あれだな...... )

 日本での前世では軽症だったものでも、

 この世界では致命的な問題になる。


 その過酷な現実を見て、

 私は決意を固め叫んだ。

「 成せば成る、成さねばならぬ、何事もwww!」


 コツコツと貯めていた、

 串焼き肉用の大切な隠し財産の小袋を

 首から下げ、

 相方やその弟の執拗な追跡を振り切って町につく。

( すまない......相方と弟よ......www )

 

 西側の裏路にある雑貨屋に着いた。


 お目当ての品はあるだろうか?

 

 生まれて初めての買い物に緊張感と、

 ドキドキと心臓の高鳴りを感じ、

 通行人の動きすらも敏感に目で追い、

 細かくチェックをしていた。

 

 すると店内から目の細い優しそうな男の子が、

 元気に外に走っていく。


 店内に入る。


 薄暗い空気。


 古い羊皮紙とインクの匂いが混じった独特の香り。


 足元で埃が舞うざらついた床板……


 更に奥に入ると、

 またも目の細い優しそうな男の子が居て、 

 しかもその子はメガネをしている.....

「 え!?」


 私はびっくりした!!!

「 なぜに......メガネが?......」


 不恰好な形のメガネだが......

 なぜ、こんな技術がこんな田舎に!?


 その時、後ろから耳元に声が掛かる。

「赤髪のかわいいお嬢ちゃん!いらっしゃい!何かお探しかな?」


 私は雑貨屋の店主を見た瞬間、

「はっ!?」っと固まった......


 そして思った。

「 全員同じ顔じゃんよ!!! www 」


 虚を突かれた私は、

 メガネのことが頭からすっかり吹き飛ぶ。


 店主の話に流されるまま本題に入っていく。

「えっ〜と、羊皮紙って在庫ありますか? 

あと値段は……?」

 

 ご主人の見えないはずの細い目が光り、

 アゴに手を当ててこちらを凝視してきた!


 いや、凝視しているはずだ www


 そして店主は驚愕の値段を提示してきたのだった……


「い、い、い〜?!1枚20銀貨ですか!? ……」


 人生を語る様な深い味わいのある顔をしながら店主は言う。

「 ふふふ、びっくりしたかい? 赤髪のかわいいお嬢ちゃん w 」


 優しい口調だが、

 明らかに子供が買えるわけないだろ?

 と言っているようなもので、

 私は世間の厳しさを感じるのだった......


 しばらく2人の間に沈黙が流れた――


 ご主人は、

 おそらくだが、

 うるうるして今にも泣き出しそうな私の表情を見て、

 よほど可哀想に思ったのだろう。


 再び少しアゴに手を当てて考えると、

 店の奥から黄ばんだ羊皮紙の束を持ってきた。


 それは古い革製品のような、

 少し鼻につく独特の獣と知識の匂い。


 そして、優しくこう言った。


「お嬢ちゃん、これなら1枚につき銀貨7枚でいいよ!」

 

 私は愕然とする。

 それだと3枚しか買えない……。


 私の構想では初期の対処法だけで、

 最低5枚ないと書ききれない……。


 手のひらに感じる生暖かい汗と共に、

 いよいよ腹をくくる正念場が来たようだ!


 私はまだ発音も上手くないが......。

 

 しかし私は負けない!


 そっと、店主を見上げ、

 うるうるした眼差しと、

 両手をアゴ付近に当てて、

 子供の愛らしさを精一杯振りかざして、

 値切り交渉を開始する。


 だが―――


 そんな私の心と裏腹に店主は初めから張り合うつもりが無かったようで、

 予算と必要な枚数を確認して、

 羊皮紙を5枚売ってくれた。


 当時の一般労働者の賃金が1日だいたい2銀貨。

 つまり羊皮紙なんて誰が買うんだ?って事になる。


「 なくなっちゃったな......。」


 ちなみに30銀貨貯めたら、

 串焼き肉を一緒に食べると言う夢を、

 相方とその弟と熱く語りあっていた資金。


( あとちょっとだったのに......。)


 2人からはその名目でそれぞれ3銀貨ずつ徴収している......。


 我が家の普段の食卓には、

 スープに申し訳程度に、

 細かい謎肉が入ってるくらいで、

 完全なお肉なんて、 

 わずか5年の記憶の中では一度もない。


 想像してみてほしい……


 その、すぐにかぶりつきたくなるふんわり漂うスパイスと重厚で濃密なこんがり焼けた肉の香り……


 見ただけでヨダレが止まらない肉汁が滴る、その姿……


 まさに、この世が生んだ至高の逸品ではないだろうか?


 その肉汁を一滴たりとも垂らさない様に、

 むしゃぶりつく自身の姿 .....


 これを体験しないなんてありえるだろうか?.....


 これはアハルに来て初めてそれを見たときから心に決めていた。


 串焼き肉愛が過ぎて少し脱線してしまったが、

 ボロい羊皮紙で妥協した理由もちゃんとある 。


 この国の知識人は古い文献に目がない。

 

 ならば、衛生法の古文書を偽造して、

 歴史的発見に見せかければ、

 正体を隠したまま大人たちを意のままに操れるはずだ。


 私はオンボロの羊皮紙を丸め右手に持ち、

 左手で空になった小銭袋を握りしめつつ、

 笑いながら、しかし心で半べそをかきながら砦に急いで帰っていった……


( そう…… 泣いている場合じゃないwww )


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