【 外伝 】第8話 双砲の爆炎盗賊の伝説
こちらは、敵城へ侵入したジャバロン本隊。
【 謁見の間に続く長い通路 】
( 順調だが、時間がかかってしまったな。ジブラからの報告が、途絶えている。心配だ )
鎧戸を激しく叩きつける猛風。( ムっと )した熱気が通路を満たす。
「 ドクんドクん 」と不吉な脈動を打つ心臓。
吹き荒れる風に、胸のざわつきが止まらない。
雲の切れ間から差し込むのは、鋭い月が放つ、狂気じみるほどの銀光。
怪しくうごめく暗雲が猛烈に吹き飛ばされ、急速に夜空がひらけていく。
その凄まじいスピードに、まるで「 味方の安否を確かめろ! 」と焦らされているかのような錯覚すら覚えた。
「 おりゃあァァーガツン!ボゴン!! 」
相棒が、またも生首が埋まっている壁に剣を突き立て壊している。
初めは何故だと聞いていたが、感覚で動く奴を止めるのは諦めていた。
まぁ、生身の人間を鎖で縛ってモルタル技術で塗り込んでいるので、悪趣味もいい所だな。
しかし、相棒は何を思って壊しているのだろう?
そう言えば、アブーの文献にモルタルの材料比率まで書いてあったが、
これほどに硬く固まるなら、用途は多岐に渡るはずだ。
( 資金を手に入れたら、導入して砦の修復を加速させたいな )
ドンがそんな相棒を訝しげな面持ちでアゴ髭を撫でて首を横に振る。
「 まったく、アホが生首をいちいち壊しながら進むから、敵が倍増して大変だったじゃろうが! www 」
( フッ、まだまだ元気だな! )
ドンがグチるも、我が相棒を肯定してやる事にした。
「 言ってやるな!ドン。我らに敵が集中すれば、他が楽になる! 」
我が相棒、赤獅子の耳がピクリと動き笑顔で振り向く。
( 聞こえたのか? 戦闘中なのにw )
「 そうだぜぇ〜い!相棒!よく言ってくれたぜ!その変なアゴ髭の男は、全然わかっちゃいないぜぃ! www 」
訝しげな顔をしてドンが「 何がわかっていない? 」と聞くも、相棒もわかっていなかった www
ドンは納得出来ていないのだろう。
「 何故今、この時に壊す必要がある? 」と再度、相棒に聞き直す。
赤獅子は、断広丸をガツンと床に突き立て、天井に視線を移し考え込んでしまう。
「 そうだなぁ〜。なんでだろう?......
アブーがいい男と結婚したら、愛のプライベート空間が必要になるだろう? 」
と、ボケだす始末 www
( アブーは、あの性格では苦労しそうな分野だと思ってしまったw )
ドンが、「 まだ5歳じゃろうが!それなら娘シェリーが先じゃ 」と、それに便乗し出してしまう。
私は娘の愛しい男なんて、考えたくも無いが、相棒たちの考えを参考にしてしまっている。
( いかん!いかんぞバーン!ピエー様が居ない今、私が最後の砦だ!
お笑いコンビのペースに流されてはいかん!絶対にだ! www )
私は奴らを諌めると「 そうだった!」
こんな話をしている場合じゃなかったと、進撃を再開する。
ジブラの報告がきた。作戦変更で、既に行動中らしい。奴の采配を信じる―――
―――通路の窓から差し込む銀盤の月の光がようやく美しいと感じた。
神話時代の悪魔の像が禍々しくも荘厳に照らされている。
空には、月光に明るく映る、流れる暗雲が次々と私の不安と共に流れていく。
曲がり角でイブシが静止の合図を送って来た。
私は頷くと、後方に指示を出す。
「 鉄板盾部隊前だ!敵がかなりの数いるぞ。」
「 おおぉォォー! 」
下に滑車が付いた厚い大きな盾を押しながら重装歩兵が前進していく。
「 カンカン!カカカカカン! 」
「 ボウガンなんぞ、この鉄盾なら怖くも無いのう!流石、我が友!【 名工 ライハーン 】じゃわい! 」
ドンの仲間自慢が始まると、赤獅子がニヤリと笑い、業火の爆炎の氣をたぎらせながら爆進していく。
「 ほらほらあぁァァーどけどけぇェェー!
当たると痛てぇぞぉーーー!!! 」
「 ズウゥバァァーーーン!!! ズウゥバババァァーーーン!!! 」
ドンが、縦に頷きながらしみじみと語る。
( 揺れるピンクのリボンが可愛いな w )
「 本当に、アブーが仲直りしてくれて良かったのぅ。
アホ大将無しじゃ、しんどい戦いになっていた所じゃわい www 」
ドンが嬉しそうに剣戟部隊に号令をかけると、元メンバーの猛者たちが一斉に赤獅子の後を追う!
「 うおおぉォォおおぉォォ〜〜! 」
まだ、相棒の氣に当てられ失神した盗賊は運が良い。早くに武器を床に置き平伏している奴もだ。
そうで無い敵は赤獅子に肉片にされていく。
我らにほとんど出番は無かった。
敵を降伏させるための、数合わせでしかない。
義父様《シャルーク様》が言っていた事を思い出す。
指揮役は、分析と段取りが9割で、後はお飾りだと。
イブシの部下が、後続の突入本隊の完全占領を報告して、私はアブーがたまにする悪役さながらの歪んだ顔をする。
つい、そんな自分に笑ってしまう。
イブシがジト目で、部下に次の段取りの再確認をしている。
( すまんイブシ w 心が湧き立ってしまったようだ www
完璧だ!残るは【 ギャンリック 】のみだ! )
後ろを振り向けばドンが呆れた顔して首を左右に振りながら走っている。
「 まったく元気な奴じゃわい!疲れを知らんのか?我らが大将は! 」
さらに通路を曲がると、巨大な男と無骨な鉄扉が見えてくる。
その巨躯の番兵が振り向き、突き刺している巨大な剣に手を掛けた!
( 結構大きな氣を放っている。
それにしても相棒の断広丸より大きい剣だな...... あれを扱えるのか!? )
「 いくぜいぃィィーーー! 」
すると、相棒の太ももがはち切れんばかりに張り、凄まじい勢いで爆進する!
( あれは、アブーの得意技。。。いつの間に。。。 )
私は自身の非凡な才能と、見よう見真似で、すぐに出来てしまう天才との違いを思い知らされる。
相棒の速さに焦り、剣を引き抜く番兵――その刹那!?断広丸の一閃が煌めく!
「 ズウゥバァァーーーン!!!ズゴゴーーーン。。。 」
敵は剣を握ったまま、鉄扉に叩きつけられ、それに深くめり込み、動かなくなった。
「 まったく化け物か!我らがアホ大将は! www 」
ドンの氣が軽やかに湧き立っている。
その瞬間!?
「 ズゴゴゴゴゴゴゴーーーーーン!!! 」
謁見の間から轟音が鳴り響き、巨大な鉄扉が吹き飛び壁をも粉砕して落下した!
激しい爆炎が外に吹き出し、熱気が襲いかかって来る!
城が揺れ、仲間たちが一斉に床に伏せた!――爆風が吹き抜けていく!
城内の空気が一気に動きだす!
『 ゴゴゴゴゴゴゴゴォォォーーー! 」
地震より激しく揺れている!
事態が飲み込めない!
黒煙が立ち込め、開いた城壁から空気が勢いよく流れ出す。
「 なんじゃ!なんじゃ!この破壊力は?こ、これがオスマトル正規軍を粉砕した兵器なのか?。。。 」
――私はドンの言葉に答えられない。
そんな事より、嫌な予感がする。大丈夫なのか。大丈夫なんだろうな......
黒煙が城内から火薬の匂いと共に流れるも、あの巨人も相棒もいない。。。
私の理性は崩壊寸前だ。
「 あ、あ。。。相棒ぅゥゥ〜〜〜! 」
その時――!?
謁見の間から常人ではあり得ない『 ギョロ目 』の男が現れる。
「 がっはっはっはぁぁー! www
今ので赤獅子は、吹き飛んだようだな!
ザマァーみやがれってんだ! 」
私は声を失った。みんなもだ......
ギョロ目の両腕に金属の塊が付いている。
噂通りだ。
奴の右腕の大砲から、未だ黒煙が立ち上がっている。
その名も【 爆裂の大盗賊 ギョロ目のギャンリック 】
あの破壊力。凄まじい。凄まじすぎる!この通路で使われていたら、我々は一撃で全滅していた。
( あの2本の腕。。。もう一撃放たれたら。。。 )




