【 外伝 】第3話 月下の太陽風たち
怒れる2本の角を振り上げ大男が戦鎚を振りかざし、猛牛の如くの体躯が月夜に照らされる!
「 我らが領民を散々に痛ぶりやがって!踏み潰してやる!!!全軍突撃だ!
蹂躙してやれ!!! 」
「 グモオオオォォォーオォォォー!!! 」
側近であろう、大男が怒号の雄叫びを鳴り響かせ、呼応するように地響きで大地が揺れ、その者たちが村に雪崩込む!!!
「 ギャアァァァァーーー!? 」
あちらこちらで、盗賊たちの断末魔が立ち上がり、村が軍足を踏み抜く音に揺れ動く!
剣と剣が激しくぶつかり鳴り響いた!
「 進め!ジブラ軍の恐ろしさをたっぷりと、盗賊どもの骨身に刻み込め! 」
「 グオオオォォォーオォォォー!!! 」
圧倒的な進軍に盗賊たちは、次々と討ち取られ、踏み抜かれ虫ケラのように潰されていく。
助けられた村人たちまでも、恐怖の面持ちで震えている。。。
それは、神話時代の英雄王オルガルドの仲間の1人、半島を揺るがす軍隊を率いた【 大地のブルザーク 】のようだ。
ようやく、盗賊たちは事態の深刻さに気付き始める......
「 ジブラだ!猛牛のジブラが攻めて来やがった!!!
やばい正規軍だ!つ、強いぞ! 」
4本の腕を持つ男が、兄そっくりの両目を見開き叫ぶ!
「 ギャギャギャ!?ジブラの野郎だと?
おい!コラ!逃げたら死罪だと言ってるだろうギャー! 」
血相を変え、恐怖で顔面蒼白の盗賊が駆け込んできた。
「 ザック様!無理ですぜ!勢いが違う!違いすぎます!無茶苦茶だ。アイツら 」
盗賊たちが次々と軍隊に薙ぎ倒され、
逃げ始め、悲鳴に近い声を上げ踏み潰されて叫んでいる!
闇夜に大角の兜を被る、猛牛と呼ばれる怒れる漢の姿に蜘蛛の子を散らすように逃げ出す盗賊たち。
ジブラ自ら率いる精鋭に次々と、自慢の剣戟部隊が蹴散らされていく。。。
しかし、大きな眼球をグルりと回すと4本の腕に握られた剣を鞘に納め、削り尖った鮫のような歯を見せ、邪悪な笑みを浮かべた。
「 キッキッキwww 始めに逃げた奴らは、死罪だギャ w
それよりも嫌な予感がする!撤退だ!
兄貴のとこに戻るだギャー! 」
「 ギャンザック組!退却だ!アジトに撤退だぁァァー! 」
幹部らしき盗賊の号令で、一斉に悪漢どもは山間に消えていった。。。
月光に輝く、2本の角を振り上げ大男が、再び戦鎚を振りかざすと、側近の大男が怒号を張り上げる!!!
「 このまま、古城に攻め込むぞ!我らが主人ジブラ様に合流して、盗賊どもを粉砕する!!! 」
「 グモオオオォォォーオォォォー!!! 」
そして、副将軍は自身の大将に優しい面持ちで声をかけた。
「 ガッハッハ www見事でしたぞ!
さあ!決戦の助太刀に参りましょう!
猛牛どの w 」
側近の猛者たちの優しい眼差しが1人に集中する。
「 ぐぬぬ...... 」
猛牛と言われた巨躯の男は歯噛みをしながら、項垂れた。。。
しかし、この男からは猛牛特有の敵を蹂躙する憤怒の莫大な氣は感じられない。
巨躯の漢は大きくため息を吐くとつぶやく。
( まったく、ジブラの嘘つき兄貴。。。
まさか、オラを戦場に立たすなんて...... )
「 マデンに付いて来れば酪農だけさせてくれるって言ってくれたのに......
超BADじゃんよーー!www 」
プヨプヨぽっちゃりボディの、か弱い優しい巨躯の男。
【 オウカ 】の叔父である動物と民を愛する初登場!ジブラの弟【 シムラ 】その人である―――
―――【 盗賊たちの根城付近の寂れた街道 】
薄暗い立ちこめた暗雲と森の木々が、強い風に揺れている。
そこに、現れた20名ほどの敵を不気味に演出していた。
闇に溶けるような濃密な氣をまとっている。相当な手練に違いない。
肩に鉄の塊を担いだ赤髪の大将が無防備に奴らに向かって軽やかに歩いて行く。
「 おい、コラ w そこを退け!逃げて行ったおまいらの大将に用がある!
懲らしめるぞ。ホトトギス! 」
敵からの緊張がビシビシと伝わってくるも、どうやら『 覚悟 』ある者たちのようだ!
赤い爆炎の如くの莫大な氣が一気に立ち昇り、敵が一斉に動きだす!
おぼろ月夜に『 大剣 断広丸 』が鋭い閃光を放つ!
「 ズバン!ズウゥバァァーーーン!!! 」
一閃と共に襲い掛かって来た5人の敵の足元をなぎ払い、その返しで全員の胴が両断され肉片となる!!!
更に踏み込み敵を粉砕していく!
あの幅広の背丈ほどの鉄塊を、あれほど鋭く返す事など出来る者は、
この世では奴だけだろう。。。
太刀を放った直後、手首の微細な捻りによって刃面の風圧を制御し、猛烈な速度で反転させる。
これぞ我が大将の必殺の型!
常人の域を超越した、魂の至芸。決して力任せの蛮勇などではない。
彼の者が血を吐くような修練の果てに掴んだ極意が、膨大な『 氣 』と融合して初めて成し遂げられる神速の剣技だ。
( 奴には、我が双剣の技のメリットなんて有りはしない。。。 )
その物理法則を無視した技を、
アブーに『 燕返し 』と命名してもらい、賞賛されていた。
奴はそこから調子に乗って多用している、おバカな可愛いパパではある w
こちらも優勢のようだ。軍師としての活躍ばかり目立つが、
オーソドックスな一流の剣士並みの実力を持つバーン君♡
華麗な憧れの美男子も、もうパパだ。。。
( 本当に惜しい物件を逃してしまった......
おっと、いけね w しっかりしろ!私!
今は戦闘中だ! )
ジリジリと敵が間合いを詰めてくる。
「 女だと思って舐めるな!イズキル流剣術を受けてみろ! 」
両手におそらく毒塗りの短刀を持つ黒いフードに白い仮面の2人の男と対峙する。
しかし我が双剣は蛇のようにしなり戦場の乱戦でも決して折れる事は無い!
構えた短刀をすり抜け急所をピンポイントで貫く!
「 ズシャ! 」
横隔膜を切り裂く鋭い突き。敵は苦痛に顔を歪めて膝を突き、みるみる血の気を失って崩れ倒れた。
敵の氣と空間の完全把握。そして必殺への一筋の光糸。
イズキル家として祖先が積み重ねて来た武の真髄は私の中に生きている。
「 ズシャャ!!! 」
敵の額から剣を引き抜き、声すら上げず、白目を剥いた敵は( ガクガク )と、震え崩れるように倒れる。
周囲のこちらへの殺氣は消え、
ジャバロンが鉄塊を肩に担ぎ、満面の笑みでこちらに歩いてきた。
「 どうやら終わったようだな!ピエー様!流石だぜぃ〜 www 」
( ほとんどコイツが倒したか。。。
それにしても、ミリアとアブーはこの笑顔が大好きなのが笑える。
奴らの好みは、よくわからん www
ま、まぁ悪い顔じゃないがな )
そう言えば、アブーが手紙でドンの部隊でも有名だった『 無言のデミル 』 元大隊長がかわいいと書いていたのを思い出す。
( だ、ダメだ w また壺に入った w )
私の凛とした整った顔が崩れ目尻が垂れる。肩と腹筋が小刻みに躍動する。
「 ど、どうした?ピエー様?急に? 」
「 いや wなんでも無い!ジャバロン。お前が悪い www 」
「 な、なんだよ。そりゃ?www 」
強く吹く風に負けない蒼天の戦乙女の高らかな笑い声が、闇夜に( こだま )したという。




