第16話 大切なもの
皆さんは、親子喧嘩は何歳くらいでされたか覚えてますか?
私は、反抗期になった10歳くらいですかね?www
些細なことで、お互いの生活時間帯のすれ違いもあり、しばらく、くだらない意地を張っておりましたwww
そんな少し思い出も混ぜつつ描いてみました。
楽しんでいただけたらうれしいです。
社会科見学という名の出張。
( 疲れた...... )
うらぶれ、すさんだ心を引きずって
前世のサラリーマンのように帰宅した私。
しかし休む暇がない......
最近は、軍師ミリアの助けもあり、
圧倒的有利な戦況にある私だが、
どんな風に我が宿敵《父》と戦うか作戦を練っていた......
しかし扉を開けると、あの香りが漂ってくる......
「 こ、これは!?...... 」
台所のドアを足早に開けた......
我が軍師ミリアが、ニコニコの少女のような笑顔で、私をお迎えしてくれる。
私はキッチンから漂う匂いと
一生懸命に調理をしている宿敵《父》の動きを訝しげに注視していた。
( それにしても良い匂いだ!
片時も忘れた事なんて無い!...... )
芳醇な汁が滴る度に火が燃え上がり、
「 ジュー、ジュー」と私の心を踊らせる音を立てて、それは誘っている。
アハルの出店には無い香りが漂う。
「 こ、これは...... アリーのスパイスだね...... 」
母がテーブルに肘を立て、指を交互に組んで、
その上にアゴを乗せこちらを、
キラキラ大きな瞳を潤ませ、ニコニコ笑顔で見てくる。
そして、ふんわり漂う調味料と、重厚で濃密なこんがり焼けたその香りは、
やはり「 食べて〜、食べて〜」と、私を誘惑しているのだろう。
自然と瞳が潤んでくる......
母はそんな私を見て、
更にクスクスと少女みたいな顔で笑う。
「 ぬ?なんだ......?この匂い...... なぜか知っている? 」
すると、我が宿敵《父》が大きな平皿に
白いホクホクてんこ盛りに盛ってある料理を持って来て言う。
「 おかえりアブー...... これはラハビアで作られている、お米と言う食べ物だ 」
私はしかめっ面をしながらも、内心では、一気に心を弾ませる。
( お、お米ですと!?...... 日本人が愛してやまない、永遠の白い恋人...... お米ですか? )
一粒一粒が真珠のような光沢を放ち、
眩いばかりの純白が目に刺さるそれは、
夢にまで出てきた炭水化物の王の姿。
立ち昇る湯気と共に、炊きたて特有の甘く、
懐かしい穀物の香りが鼻腔をくすぐる。
すり減り、極限まで空腹を感じている私の胃袋を刺激する暴力的なまでの芳香だ。
ここで、奴《父》の目は笑っていないが、
出来る限りの ( ニコッ ) とかわいい顔で、
人差し指を立て、ちょっと待ての合図。
台所へ急いで入って行きメインディッシュを持って来る。
なんども紹介するが、
イノシン酸と言う旨みの豪華なマントをまとった、タンパク質の王様。
みんな大好き、アブーも大好き、くし焼き肉だ。
しかし......
父がもじもじと、その逞しい体躯に似合わない仕草をしている。
そう......まだ終わっていない!
我々の、戦いは!!!
そして父は、その大きな体を、
しょんぼりと窄ませて
ハの字になった眉の間に深いしわを刻み、
うなずきながら、申し訳なさそうな瞳を床に落とした。
下唇を無意識に突き出す。
( 父が本気で困っている時の顔...... )
かすかに震わせながら、ようやく言葉を絞り出す。
「 アブーがいつか港で...... 」
「 足を止めておねだりしてたやつだ…… 」
「 仲直りしたくて、買って来たんだ…… 」
父の声はいつもより1オクターブ低く、
喉の奥で詰まるように震えていた。
無意識のうちに私の握りこぶしに力が入る。。。
( 頑張れ父さん!...... )
かわいい男が頑張る。
「 父さん、ケンカになってる間...... 」
「 ずっと…… 心が痛かったんだ...... 」
父の顔が、( くしゃくしゃ ) に歪む。
「 こんなの嫌だ!って…… な...... 」
「 だから…… どうか…… 」
ここで私は、今にも泣き出しそうな父の顔を見ていられなくなり、
左手をゆっくり前に上げて、その言葉を遮る。
ふと、ドン爺に生意気な口を叩いたり、
バーンおじさんの詩で諭されたのを思い出し、
今回の一連の自身の矮小な振る舞いが恥ずかしくなっていた。
しかし!...... 逃げるな私!
この場を収められるのは私《娘》のみ!
ゆっくりと深呼吸をすると、
両方の頬を「 ビシッ、ビシッ」と叩く!
赤髪の小さな戦乙女は、ガタっと椅子から立ち上がり、
左手を腰に当て、右手の拳を胸に掲げ、胸を張り顔をやや上に向け微笑む。
しかし...... 涙も自然と溢れ頬を優しく撫でる......
( 仕方ない...... 嬉しい時...... ほっとした時...... 人は泣く。。)アブを
このポーズはジャバロン軍の敬礼の型であり、
いつも母が語ってくれていた、
『 伝説の戦乙女フレイ 』が、
『 悪魔王ワグナス 』を倒した後の、最後の一幕でもある。
ただ、今の私は戦乙女にしては、
いささか格好がつかない顔かもしれない。
( 泣いちゃっているし、鼻水ジュルジュルだしな www )
しかし私は、女神となり天界に上がる
戦乙女フレイの終幕のワンシーンでもある美しい微笑みを精一杯に作って言う。
「 父さん!私も悪かったよ。ごめんね......
私もずっ〜と、心が痛かった!
本当にごめんね!心が小さい小娘だったよ!
赤獅子ジャバロンの娘なのにさ...... 」
父は目線を落とし俯いたまま、少し泣き出しそうな、そして少し嬉しそうでもある、
そんな複雑な顔をして、
何度も頷きながら精一杯の安堵の声を何とか絞り出した。
「 お、おう...... 」
こうして、我々はこの世で一番絆の強い、
世界で一番仲の良い家族へ戻っていくことになる......
食べ終わる頃には元通りの笑顔で、
全世界を震撼させた大戦なんて一切感じさせない、笑顔で笑い合うアットホームな家族。
よくよく考えてみれば、なんであんな小さなことで、
ここまで大喧嘩をしていたのだろうと思わざる得ない w
「 白い米、串焼き肉も、美味しいよ!
父よありがと、幸せ家族 」女神アブ子。
父が「 何だよ、それは!www 」と、
すっかり陽気ないつもの父に戻り笑い、
母はそんな私達を見て右手こぶしで口を隠し、
少女の様なニコニコの顔でクスクスと笑う。
( 良かったよ...... )
そもそも、家族の間で1人が勝った負けたなんて無かった。
あるわけが無い......
あるとしたら、仲の良い家族......
これが【 真の勝利 】なんだろう―――
―――次の日の朝、父の思い出の詰まった大切に飾っていた宝物、
木剣『 ぼっけん丸 』を何故かもらった。
泡立たしくなる砦の広場と戦人の顔になるアハルの兵士たち。
そして更に次の日、父とバーンおじさんは、
ドン爺と共に中継商業都市《 サロス 》の更に、南側にある山脈を根城にしている、
賞金首の山賊 【 ギョロ目のギャンリック 】の討伐遠征に出陣する。
改稿日 R8.3/31 04:04
R8.4/2 04:43
行雲 日千羽




