【 外伝 】第4話 バーンの回想録〜戦狼の神算〜
「 よく、来たな!ガキんちょども www
早速だがよく聞け!この地で力を蓄えたら、北西にある神話時代の砦と軍港を復活させろ! 」
義父の城に滞在していた時に、何度も聞かされていた【 アハル 】と言う、人口千人の小さな寂れた町だ。
地理的な野心を一切見せないと、妻たちは口を揃えて語っているが、
そんな漢が、唯一欲しがっていた港だと言う―――
―――再び時が過ぎ、私と相棒には可愛い娘を同時に授かった。
娘は、濡れ羽色の産毛がかわいい。
相棒の娘は、彼の頭髪と同じ赤い産毛だ。
ここから義父のサロスへの滞在が一気に増し、多くの文献、娘や孫たちのプレゼントも増えていく。
更には、相棒と私への政事への指導も増えていった。
神話時代から143代目当主だったと言われる、その漢はいつも語る。
「 アブーちゃんは、フレイ様に改名しろ!バカ息子よ。」
「 しつこいぜ!ジイさん www
女神フレイが、赤髪だからってよ! 」
義父はこの話になると聞く耳を持たない。
「 そして、古代の叡智が眠るアハルを栄えさせろよ!息子たちよ。
あそこは、ワシの解読が正しければ、
戦乙女フレイが、天界に旅立った地じゃわいwww 」
この時期の私は、亡くなった私の父を決して忘れたわけではない。
首都の市場で彼が購入した安物の、しかし味わいのある陶器製のカップは、
今でも私の愛用品になっている。
しかし、この漢は我が父を凌駕する魅力に溢れていた。
みんなが、この稀代の英傑の幅広い見識と、その人徳に取り込まれていくことになる。
この時の私は、偉大な義父の大きな愛に包まれ我が相棒を全力で支え、
みんなを更なる高みに導く責務に燃えていた。
「 ふむふむ w アクアちゃんは、いつ見ても可愛いでちゅね♡
その大きな瞳のジト目が見たくて来ちゃうでちゅ♡ 」
今日も早朝から、目尻と口を弛ませ、デレデレの顔で孫に話しかける義父と、ジト目の我が妻。。。
( 本当に困った自由なお方だ www )
娘の名は、『天空の女神フレイ』と共に戦い、のちに海を統べた『女神アクア様』にあやかり、似せて名付け許しを得た。
我が相棒のように、真っ向対立など出来る胆力は、私には一切無い!
妻の流れるような、優しい説得の言霊でようやく納得してくれた経緯がある。
「 よし!バーン君。次はあのアホ......
いけねw また間違えよったわ w
族長様の家に行って、我が娘と愛しの小さな『 戦乙女フレイちゃん 』の所に行くぞい www 」
( 相棒の言葉が感染っておりますぞ。お義父さま www )
義父の歳を感じさせない弾けるような笑顔と、
周りに気付きを与える軽快な言動に、
仲間たちはすっかり彼のファンになっていた。
義父が通る度に人々は親しみを込めて声を掛け、陽気にそれに応えている。
我が相棒にとても良く似ていた。
あからさまに不機嫌な顔を、隠さない我が相棒が扉から出てくる。
「 ちみちみ聞いてくだされミリアさん。またも、ジジイが我らのアットホームな家に踏み込んで来ましたぞよ。。。」
「 愛しの旦那様?私の父をジジイと呼ばないで!わかりましたか?カッコウさん。 」
「 おい、コラ!ガキんちょ!そんなのは、敬語じゃないと口酸っぱく言っているだろうが!www
ワシの可愛いフレイちゃんが、真似しだしたらどうするつもりじゃ? 」
「 キャッキャッキャッ w 」
義父と相棒が言葉の応酬をし始めると、必ず【 アブー 】はわかっているように笑い出す。
そして、目尻と口を弛ませ、デレデレの顔で話しかける義父と相棒の姿を、
ため息混じりで肩をすくめ笑い合う私たちがいる。
そして、孫と娘たちを堪能すると、
私と相棒の2人に問答を交えた講義が始まる。
「 おい、コラ!ガキんちょ!鼻をほじってないで、ちゃんと話しを聞け!
外で皆と一緒に汗を流すのが族長の仕事じゃないんじゃぞ! 」
「 だって...... ジジイの話、つまんねぇ〜んだもん。」
だが、この時期に教授された街道整備や、土地造成、建築に関わる正しい工法は、
相棒のスキルとして、現在も活かされている。
本当に楽しい日々だった。。。
その別れは、突然やってきた。
そんな事すら、感じずに多岐に渡る助言を乞い、そして甘えていた。
義父は、娘たちの誕生祭を収穫祭に合わせろと言い残し、生まれ育った伝統ある自身の居城でお亡くなりになる。
当初は、突然の死に毒殺の懸念が広がったが、
諜報部隊隊長の【 イブシ 】は語る。
「 最後までお見事なお方でした。
皆の前では『 血 』を吐く病の事を一切口外せず、人と接する時もご自身の『 氣 』で完全に抑え込まれていました。 」
この報告を聞くまで、微細な心の氣の乱れすら感じさせなかった義父。
妻たちの、敬い優しく彼に接する姿をもっと注視していれば、良かったと思う。
本当にすごい漢に短い期間だが、一生懸命に、育ててもらったと涙が溢れ止まらなかった。
顔を" ぐしゃぐしゃ “ に歪ませ子供のように泣きじゃくる我が相棒。
つられるように仲間たちも大泣きしていた。
しかし、妻とミリアは、自身の父の僅かな変調に気付いていたのだろう。
目を逸らさず、泣かずに歯を食いしばり、白くなるほどの震える握りこぶしに、偉大な漢の血脈と、その継承の決意を滲ませていた。
我々を遥かに凌駕する胆力を持つ戦狼の娘たちの姿は、今でも私の脳裏に刻み込まれている。




