【 外伝 】第3話 バーンの回想録〜戦狼の布石〜
( か、仮にも官軍の使者に放つ言葉ではない!)
私は異論の言葉を構築し始める。
私の抑えていた氣が堪らず漏れだし、相棒が ( ピクっ ) っと反応した!
たちまち私の少し陰うつな氣は、赤き紅蓮の業火が立ち昇るそれに飲み込まれてしまう。
( わかるぞ。相棒もこれには流石にカチンと来るだろうとも...... )
「 はい!ジイさん!いけね w 間違えちゃったwwwお義父さん!」
( おいおいおい w 相棒よ。なんでお前は猪のように突っ込んでいくのだ www )
「 いや、待ってくだ...... !?...... 」
私の言葉は、戦狼の牙が渦巻く莫大な氣と、右手の静止に止められた。いや止まってしまった。。。
「 バーン殿は、オスマトル王からどの程度、話を聞いておるかは知らん。
ぶっちゃけ、そっちの赤頭に娘をやるのが惜しくなったが、
これは我が国が其方たちに帰順する条約の一部なのだ! 」
頬を膨らますミリアに肩を「 ポカポカ 」と叩かれながら、嬉しそうに希代の名将シャルークは語る。
王への忠誠心高いと言われる我々に、自身の娘たちを嫁がせ、長兄に王位を譲り退位すると言う。
最後に、指を開きアゴに当てると、( ニヤリ )と悪役さながらの顔をした。
現在の半島を取り巻く勢力図は、西の超大国【 バディード帝国 】。
北の海を挟んだ大国【 ラハビア 】。
これが半島への脅威の二大勢力として威を奮っている。
我が国の半島完全制覇戦線は、これに対抗するためという名目が含まれていた。
さらに、この国の少し西に緩衝地帯の中核になる流通商業国【 サロス 】がある。
ここを陥落させ、我々を『 新族長 』に据え半島を、いや、この地の民を守る盾とするという理解できない言葉が飛び出す。
「 そ、そんな事を我が王が...... いやありうる。革新的なお考えの、あのお方なら...... 」
「 うむ、バーン殿は聡明なようだ。
そっちの赤頭には、ミリアは勿体無いがのう www 」
またも、頬を膨らます愛娘に「 バシバシ 」と背中を叩かれて嬉しそうな戦狼の姿。
( 娘に、かまって欲しいのだな www )
ちなみに戦狼シャルークは、単身で両国に乗り込み、
名目上、五分の同盟を勝ち取って来た伝説の漢だ。
その後の交流も子供たちに念密にさせていると言う。
「 と、いうわけじゃ!受けるだろうな?
ワシ直々の頼みなんぞ、滅多に聞けんぞ? 」
断る理由なんて無いが本当に良いのだろうか?と変な思考が駆け巡る。
「 はい!ジイさん、いけねwまた間違えたwww お義父さん!よろ昆布! 」
「 なんか、真剣にあげたく無くなってきたのう。。。 」シャルを―――
―――本国への報告、質問のやり取り後に戦狼の居城で両軍の主だった者だけで、行われた挙式。
その間に親密になった、我が妻は聡明で、とても美しい。
相棒と、ミリアは初めから熱愛ムードで、仲間たちの嫉妬の声すら届かない鉄壁の間柄。
会うべくして惹きあった仲なのだろう。私もその姿に顔が綻ぶ。
それとは対照的に項垂れ大粒の涙で床を濡らしながら、号泣する義父となった漢が可愛く感じる瞬間でもあった―――
―――結婚後、我々は義父に自国首都での戦後の復興を申し出て、これを渋々了承してもらう。
大敗を喫した首都は未だに将兵らの葬儀に明け暮れ、人々の慟哭と混乱が響き渡る惨状にあった。
我々の歓迎ムードの微塵すらも感じさせない空気の中、サロスを陥落させるまでの2年間を妻を伴い国の復興に尽力する。
そして、『 あの事件 』。。。
天真爛漫なミリアや、いつも笑顔を絶やさない相棒の悲痛に満ちた顔をみるのが、本当に辛かった......
しかも、オスマトル軍のサロス侵攻に業を煮やした義父が再び戦場に立ち、あっと言う間に陥落させる。
一番、悲しんで後悔していたのは彼だったかも知れない......
それから多くの取り巻きの貴族を失い副将軍に降格した【 デギン 】だが、
最大勢力となった我々を中央権力から遠ざけたい謀略も、移転を後押しする要因になる―――
―――霜が降りた。純白に塗り込められた荘厳な佇まいの我が主君の城が美しい。
石畳も赤瓦の屋根も、降りたそれが朝日に照らされ、
街全体が真珠を散りばめたような銀世界に包まれている。
港に休む帆船の帆綱までもが、細かな氷の結晶を纏い、
まるで海が凍れる吐息を吐いたかのように透き通った光を放っていた。
この日、遂にサロスに旅立つ時が来る。
「 一騎当千の愉快な弟。偉大な漢から『 千手 』の二つ名を授かった賢き弟よ!
2人の力を合わせ、この半島の盾になってくれ。」
「 任せてください! 」
「 はっ!」
それにしても、愛の力は素晴らしい。
相棒とミリアは悲しみを乗り越え、再び前へ進む決意をした。
義父の強烈な、我が王を動かす後押しもあったと言う。
元からの仲間たちも、一族総出で移住を希望する。名門貴族の『 ピエー様 』も縮小転封を選ばれ我々は、サロスに向かう。




