鍛冶屋と鋳物師
父と絶賛喧嘩中の私ことアブーは、
叔父のバーンおじさんと、汚いお髭のドン爺、
相方とその弟と、のんびりまったりお散歩中。
違う!社会科見学だったw
ドン爺の友達と鍛冶屋と鋳物師( いもじ)がいる
工房に向かう一本道。
どんな出会いがあるのだろう?
のんびり見て頂けると嬉しいです。
我々はアハル砦の西南に広がる、
どこまでも穏やかな海岸線を抜けていく。
民家の日陰では、猫の親子が同じポーズでお昼寝中。
弟が近づくも相方に止められ半べそだw
ドン爺がそんな弟を見てケラケラ笑っている。
猫は今回の疫病は関係ないが、
東の新町にも増やそうとバーンおじさんに提案してある。
( しかし、こんな日もありだなと思う。
絶賛親子喧嘩中の私にとっては、
息抜きするには丁度良い......)
ふと見上げると空には、
いまだ衰えを知らぬ晩夏の日差しがぎらついている。
だが、時折吹き抜ける海からの風が、
鼻をくすぐる涼やかな潮の香りを運び、
肌をそっと撫で、
次の季節を感じさせていた。
大型の水鳥が「 グォォ〜、グォォ〜〜」と歓喜の声をあげ、群れている魚が「 バシャン、バシャン」と飛び跳ね、
波がキラキラと美しい。
相方と弟も喜び飛び跳ね、
そんな子供たちを見て、ドン爺が楽しそうに笑い、
バーンおじさんも優しく微笑んでいる。
民家の途絶えた一本道に、
潮騒の音だけが追いすがってきた。
草むらからは、キツネみたいな子が、
顔を出して弟と鉢合わせ。
泣き出す弟と、
自慢の汚い顎髭を撫でながら、
ここぞとばかりに、またもからかうドン爺。
その横で微笑みと困った顔が、
混ざった変な顔のバーンおじさん ww
ドン爺のそれは、
人類が誕生したときからDNAに刻み込んできた、
群れとしてのヒエラルキーを維持するための生存本能なのかもしれない。
しかし、少し諭してもいいかなと私は思った......
「 泣く子供、笑うドン爺、未だガキ 」
ドン爺は、少し驚いた顔をして振り返る。
「 おっとっと、やり過ぎてしまいましたかな?
昔からガキのまんま、悪い所も変わっておらんなwすまん、バーン!」
バーンおじさんはさわやかに笑っている。
「 な〜に、気にするな!ドン。
人の生まれついてからの本質と言うのは、
基本は変わらないものだが、
気付いた時点で変わっているものさ!w」
バーンおじさんは私がいる遠くの海を見て歌う。
「 侮らず、敬うこころ、ひとたらん 」
やっぱり、この人は頭が良い......
やがて、ゆったりと海へ注ぐ大きな川が見えてくる。
「 そろそろかのう?」
ドン爺の囁きが、風に乗って聞こえた。
視線の先、河口の湿った空気の中に、
もくもくと立ち上る灰色の煙。
バーンおじさんが足を止め振り返る。
乾いた柏手の音が「ぱ〜ん」と小気味よく響き、
はしゃいでいた一行の注意を一瞬で引き寄せた。
「ちびっ子探検隊!聞いてくれ。
ここはドンの友人の、
腕利きの鍛冶屋と鋳物師が構える工房だ。
……ほら、聞こえるか?
この音が仕事の合図だ。
よく勉強するんだぞ!」
おじさんが指す方からは、
風に乗って「キン、グォ〜、キン」という高い金属音と、
地響きのような吹子の唸りが交互に聞こえてくる。
「 は〜い!」
その後、我々ちびっ子探検隊は、
おじさんに質問の礫を浴びせつつ
進んでいく。
なんでも、上流にジャバロン軍が保有する大きな鉱山があり、物流面から
その河口のこの地にあらゆる職人たちを、
誘致しているのだと言う。
アハル砦まで、
道が整備されていたのも、
それかと思った。
それでもざっと、まだ8軒ぐらいだw
ポツン、ポツンと煙が立ち昇る建物があるだけの、
長閑な川沿いの風景が広がっている。
建物付近に来ると2人の男。
「 おう!来やがったか!www
なんだよ、ガキンちょがいっぱい来やがったな。」
こちらの、長髪の馬鹿でかい背丈は2m近く、
口髭も長い前世でのプロレスラーみたいな金髪の男、鍛冶屋の親方ライハーン《ライハーン》
ずんぐりむっくりで
腕が太くて長く感じる、
イカつい体型の茶髪の男、
鋳物師で坩堝師の親方でもあるデミル《デミル》
父と同じ村の出身で、
そのゴツい体躯を見れば一目瞭然だが、
各地を転戦したかつての仲間。
バーンおじさんの勧めもあり、
サロスに移転後、
子供も沢山いる上に、
一族総出で移民して来た彼らは、
元々の職業に再度ジョブチェンジをして、
この地に来たらしい。
ドン爺たちが嬉しそうに肩を叩き、
再会を喜ぶ。
周囲に、埃っぽくも温かい懐かしい日だまりの匂いが鼻をくすぐる。
午後のギラついた太陽が、
柔らかな光に感じ、
再会した彼らの背中を優しく包んでいた。
「 お前ら……元気だったか?」
絞り出すようなドン爺の声は、
湿った熱を帯びている。
見れば、深く刻まれた目尻のしわに涙が浮かぶ。
それを見た金髪の大男は、
泣くな!と言わんばかりに、
腹の底から、
大樽を叩くような声で吠えた!
「 がっはっ〜はっ〜! 当たり前だぜ、ドン!」
鼓膜を震わせる豪快な笑い声が、
再会の場に満ちていた重たい空気を一気に弾けさせる。
相方はその大きな声に口をへの字にして、
嫌な時のジト目をして、顔をしかめ、
肩をすくめた。
同じ日に生まれた私にはわかる。
相方はこの手の声の大きいガサツなイメージの男が嫌いだwww
傍らに立つずんぐりむっくりのデミルが、
頷きながら短い言葉。
「 おう!」
ドン爺が呆れたように、
しかし何処か懐かしい、
愛おしそうに目を細めた。
「 相変わらずじゃなwデミルは。
久しぶりの再開に、
もうちょっと気の利いたことは言えんのか?」
デミルは視線だけをドン爺に向け、
ひび割れた岩肌を思わせる無骨な声と、
一文字に結ばれた分厚い唇で、
再び短く呟いた。
「 ……おう!」
刹那、弾けるような笑いの渦が巻き起こる。
「 あっはっはっは!www 」
その場に居た全員の重なり合う笑い声が、
空気を温かく震わせた。
デミルは決まりが悪そうに、
硬い毛質の頭をガリガリと掻き、
顔をほんのり赤く染める。
( ぶっちゃけ、このデミルと言う男......
かわいいwww )




