ドン爺
何とか第二弾の古文書をかけ上げたアブーだが、
5歳児と言えど、その人生は平坦ではない。
少し......いやちょっと大きな人生のイベントが
起きたが、私はへこたれないwww
そんな中、南部ジャバロン軍の軍団長であり
商業都市サロスから[ ドン爺 ]がアハルにやってきた。
「 寝坊した、日は上がれども、まだ眠し......」
相方が「またか?」と言った顔をして聞いてくる。
「 アブちゃん......?
今朝もバチくそ眠そうだねw
ほらっ、こっち来て!
髪の毛ぐちゃぐちゃじゃない。
あははははww
女の子なんだからね! 」
目はブッ腫れ、
ぐちゃぐちゃな赤い猫っ毛の寝癖が酷い、
まだ半分寝ているような顔の五歳児。
そんな私を見てクスクス笑い合う、
イケメンと泣き虫。
この2人は年齢差はあるが仲が良い。
弟が甘え上手なのもあるが、
お師匠もなかなかゾーンに入れない彼に、
懇切丁寧に接していて、
多岐にわたる会話をしているからだ。
私は同じ年の小さな母に小言を言われ、
少し偉そうに女性のたしなみを高説されながら、
しかし、気持ち良さそうに髪の毛をとかしてもらっている。
でも私は見逃さない。
( あそこに干してあるのは、お主のお布団ではないのかな?www)
何とかお師匠の訓練と授業と、
母からのお小遣いクエストをこなしたが、
バーンおじさんの動きがない。
もしかしたら、昨晩の仕込みが甘いのでは?と思い、
書庫を確認するも既に、
作成した文献は無くなっている。
おじさんは無事に回収したようだ。
様子見するしかあるまいw
その日、私は相方たちと港へ階段から降りて行き、
いつものように、
港周辺の子供達と戦乙女や英雄王ごっこで一緒に遊ぶ。
ギラギラと容赦なく照り付ける太陽の元、
ゆらゆら揺れる岩畳。
磯の香りも強烈に立ち込める。
肌を刺す熱風の中、
元気な声で、
躍動的に動き回る子供達。
棒切れがぶつかり合う乾いた音。
喉の奥がヒリつくような渇きも忘れて、
私たちは英雄になりきっている。
重たくなった裾から滴る汗が、
一瞬で乾いた地面に吸い込まれていく。
今日もアハルの港には間違いなく、
たくさんの英雄達がいたのだったwww
亜麻の服がびちょびちょで、
ツンとした汗の匂い。
濡れた服は洗濯、汗も流したいと、
おねしょはするが、
きれい好きな相方が提案。
西の砂浜に行き、
海でゆらゆら浮かぶ、ちびっ子クラゲ海遊隊。
海で遊ぶと小腹が減ってしまう、
何故だろうw
いつものように酒を飲んでいる老漁師達。
つまみにしている雑魚の「ぷ〜ん」と香ばしく焼けた良い匂い。
更に油がしたたり「 ジュー、ジュー」と音を立てていて、
どうにもヨダレが止まらないw
食いしん坊の弟がフラフラと引き寄せられ、
愛想を振りまき、
翁たちの餌付けが始まる。
「 美味しい〜、美味しいよ!おじいちゃん!
こっちのは、どんな味なの?」
うるうるした眼差しの子供たちが、
入れ食い状態だと、
翁たちは「 がはは、がははは!」と、
そんな私たちを酒のつまみに笑いあう。
私たちは精一杯、
愛想をふりまきたくさん小魚を食べた。
今日も満腹、ちびっ子グルメ隊。
夕ご飯は、食べれるだろうか?
そんなこんなで、とある日までは平凡な日々を送っていた―――
その、とある出来事とはアハルの砦では、
少し......いや、かなりの話題に......
しかし今はまだ、
イライラがどうにも止まらないので語りたくないwww
そこから一週間ぐらい経ち、
ドン爺がアハルに来てから、
更にイベントが発生。
バーンおじさんが、社会科見学だと言い、
ドン爺と我々探検隊を連れ、
5人でお出かけをすることに。
「 お元気でしたかな?アブーお嬢さま。
何やらお父様とケンカしているとか?
相変わらず、どっちもまだまだガキンちょですのうwww 」
視線だけ上に向け、
口をへの字にして歯噛みする私。
「 ぐぬぬwww 」
このニヤニヤ顔で我々をいつも、
楽しげに、からかうドン爺は、
南の中規模の商業都市サロス《サロス》の現城主で、
南部ジャバロン軍の軍団長。
けして、漁港の老漁師みたいな、
おじいちゃんでは無いw
本人も忘れたらしいのだが、
ざっくり40歳くらいだろう。
しかし、日に焼け、ひび割れた大地のような深い額のしわは、
長年、風雨に晒された古木のようだw
しかも、長くあまり整えていない伸びた髭が、老人を連想させる。
ゆえに、私と相方からは、
ちびっ子探検隊の結成前から「 ドン爺」と呼ばれていた。
爺と言ってはいるが、緊急時に見せる、
鷹が獲物を見定め、襲う時に見せる鋭い眼光。
顔の深いしわや長い髭とは、
ギャップのある太い腕。
中年にも関わらず、
未だに埋没していないシックスパックと、
大地を踏み締める強靭な足腰。
いくつもの戦場を共にくぐり抜けて来た、
相棒だと揶揄する分厚い、
敵を叩き倒すための丈夫そうな戦の剣。
手入れの行き届いた、飴色のつやが美しい革鎧特有の味わいある香り。
間違いなく、歴戦の勇者なのだろう。
何でも彼は、
我が宿敵となった父やバーンおじさんと、
同じ首都近郊の村の出身で、
特に父とは、村のガキ大将の座を争う仲だったと、
いつも熱く語っていたのを思い出す。
ただ父とドン爺は、会えばいつも楽しそうに会話をしている幼馴染といった感じ。
例えるなら、相性の良い野菜同士をぐつぐつ煮込むと豊かで、
賑やかな香りを放つスープかな?
しかし、バーンおじさんとは、
少し距離感があるようだ。
それは......少し凪いだ入江のような静寂感がある。
あまり互いを他者に、
語ったりもしない。
そんな2人が、静かに何かを語り合いながら進んで行き、
その後を、自身の父親と一緒にお出かけが出来て、はしゃぎながら、
あっちに行ったり、こっちに行ったりしている相方と弟を、
一人頷きながら歩いていく。
前にも語ったが、間合いだ!
おそらく、これがバーンおじさんとドン爺の間合いなんだろうと、
考えを再構築している。
もうすぐ秋だが、
まだまだ暑い日中のアハルの田舎道を、
深く佇むような眼差しで、
一人遠くを見るように呟く五歳児。
「 人生は色々、性格も十色、そんな私は赤いアブソリュートでありたい......」




