13-5.体育祭当日~生徒会のお守り
「会長、あの、そろそろお目覚めになったほうがよろしいのでは」
控えめな声で起こされる。
制服姿のノアが、そばに立っていた。
窓の外の暗さにぎょっとする。こいつにつられて俺も本気寝したか。まさかまた終電を逃したか。
腕時計を見る。夜十時半。確かにまだ地下鉄も終電はある。ポンコツも学んだか。しかし。
「お前……、お前は何時に起きたんだ」
「あ、はい、ええと、夜七時半ごろだったかと」
三時間も待ってたか、このポンコツは。
はっきり言わないとまたやらかす。
「あのな。お前、今度からさっさと起こせ。俺が寝てるのに気づいたらすぐ起こせ。俺が疲れていようと、即、起こせ」
「は、はい。すみません」
ため息をつく。
「悪かったな、遅くまで待たせて。帰るぞ」
時間も時間なので、地下鉄の駅までノアを送る。
「終電は間に合うな?」
「はい、大丈夫です」
隣をのんびりと歩きながら、ノアが答える。笑顔で言った。
「会長は、今日は金色でした。黄金です」
なんだそれは。信号か。赤信号を通り過ぎたってことか。まぁアクセル全開で仕事したからな。
「あ、そう」
不機嫌に呟くと、ノアが慌てた。
「悪い意味では、ありません。いい意味です。輝いてみえました。とても楽しそうでした」
「へぇ。楽しそう?」
「はい。会長には、会長のお仕事がお似合いです」
お似合いとな。
お似合いついでに思い出す。カバンからノアのハチマキを取り出した。
「返すの忘れてた。お前のハチマキ欲しいって言ってるやついなかったか?」
「ハチマキが欲しい、ですか」
俺を見上げてノアが首をかしげるので、ハチマキの風習について軽く説明しておく。
ノアは真剣な顔で聞いていたが、しばらく考えてから言った。
「でしたら、私のハチマキは、会長にさしあげます」
はぁ。
「お前、ちゃんと話、聞いてた? 好きなやつにもらうもんだぞ」
「はい。ですので、どうぞ」
好きの意味が通じていないのか。俺が眉をひそめると、ノアは笑った。
「箱船のハチマキです。生徒会のお守りです。ですので、会長がどうぞ」
―――名前がさ、乃亜じゃん。ノアって希望の箱船だろ。いいことありそうじゃん。上田、生徒会のお守りな。
自分が適当に言ったセリフを思い出す。
しかし、こいつの信号方式にはずいぶん助けられた。
「お守りか」
俺が呟くと、ノアは「はい」と大きく頷いた。
「じゃ、もらっとく。さんきゅ」
ノアの青いハチマキをカバンに入れた。お守りらしく生徒会室にでも飾っておくか、と、そんなことを考えた。




