8/12
五つ年上の女
佐野の名は亮太という。
佐野亮太。二十二歳。
彼女はいない。
と木下リーダーには答えたが、さらに詳しく言えば、去年から付き合っている年上の女ならいる。
風花、二十七歳だ。
風花は三日か四日に一度ぐらい、亮太のアパートへやってくる。
一室だけの、狭いアパートだ。ベッド。小さなテーブル。テレビ。壁際に置いた衣装ケース。玄関から中のおおかたが見わたせる。
風花は、基本、会いたいと思った時間に来る。
「これから行くね」と、向かい始めてから連絡をよこしたりなんかする。
きょう亮太が夜勤明けでも、あした早番でも、たいして関係はない。
疲れていると言えば、
「私が疲れるってこと?」と不貞腐れる。
風花が彼女なのか、微妙なところだ。そう簡単に、彼女か彼女でないか、決められない。
亮太は、風花が嫌いでない。好きなんじゃないかと思う。
でも悪いけど、風花が来るとなると、落ち着かない。
ちゃんと話せるか。
気分を悪くしないか。
頼りない男だと思われないか。
風花が求める親密さを、ちゃんと与えられるか。
だから亮太は、風花が来る時、盗んだマチョッパーズを嗅ぐ。




