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またやられた


「何なの?またなの?」


人参色のマチョッパーズなら、白やグレーや黒の内履(うちば)きに(まぎ)れることはない。


しかも今度の一足(いっそく)には、(かかと)のストラップへ油性ペンで、木下、と書いてあった。人参色の()に、黒く太く【木下】と。


いくら何でも、うっかり()き違い … はないだろう。


腹はたつが、熱を出した入所者が先だ。


共用のスリッパをつっかけて事務室へ向かう。


看護師がいた。すでに事をおさめてくれたらしい。「あの夜勤の子は騒ぎすぎだよ」とあきれていた。


けれどせっかく来たついでだ、綾乃(あやの)はちょっと二階を見ていくことにした。


騒ぎすぎた子とは、佐野(さの)だ。


二十二歳。入職(にゅうしょく)して一年にも満たない。


でも背は高いし、肌もきれいな好男子だ。利用者への声かけが柔らかい。年上の女性職員にも敬語を崩さない。笑顔が良い。


仕事も丁寧だ。


けれど、急変や事故があると右往左往する。そこが良いところでもある。


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