密約
ところで、綾乃がくれる「最新」のマチョッパーズには、ここ四ヶ月間の汗と臭いが染み込んでいる。相当な効果が期待できる。しかし、消耗品のことだから、使い続ければ性能も落ちるに違いない。
ついては、三週間後に、綾乃はふたたび「最新」のマチョッパーズに更新してくれるであろう。すなわち、あしたから履く新しいマチョッパーズを三週間履いたら、その一足でもって今プレゼントした一足と交換してくれる。綾乃はそれから三週間、交換して返ってきたマチョッパーズを履く。三週間の終わりに、また同じように交換する。このように二足のマチョッパーズを周期的に交換するなら、常に佐野は「最新」でフレッシュなマチョッパーズを使うことが可能になる。
いっぽうで、これはどこまでも御相子でないと成立しない契約ゆえ、佐野も三週間おきに、クロックスの交換に応じなければならない。三週間履いたクロックスと、綾乃が預かっているクロックスとを交換するのだ。
お互い、相手の内履きを好きに用いて良い。部屋に飾ってめでるもよし、リュックに入れて持ち歩くもよし、自由だ。ただし、さわって良いのは二人だけ。綾乃のマチョッパーズにしろ、佐野のクロックスにしろ、手にとることが出来るのは綾乃と佐野のみ。他の第三者に触れさせてはならない。
綾乃が佐野を市役所に呼びだした趣旨は、以上のようなものだった。




