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贈与の内履き
「プレゼント」
「は」
「あげる」
佐野がABC-MARTの袋を手にする。出てきたのはサンダル。人参色、というのか、淡い橙色の一足で、ストラップ部分に【木下】の黒文字がある。
「それは佐野君が盗むんじゃない。わたしが上げるの」
「ありがとうございます」
「お礼を言うのは早い」
「すみません」
「わたしは佐野君から盗んだ」
「は?」
「佐野君の内履き。グレーのクロックス。きのう、もらって帰った」
段々聞いてみると、こうだ。綾乃は、きのうまで履いていたマチョッパーズをプレゼントしてくれる。綾乃が四ヶ月のあいだ履き続けた、「最新」のマチョッパーズだ。(佐野が休憩室で嗅いで頬を赤らめ、彼を陶然とさせた三足目のやつ。)
彼女はきのう、退勤する時、げた箱から佐野の内履きを盗んだ。彼のクロックス(クロックス社製の正規品)を持ち帰った。代わりに、同じ色と大きさの新品を入れておいた。だから佐野は、あした出勤したら、それを内履きに使え。これから毎回それを履け。
佐野は、綾乃の安い内履きを二足盗んだ。綾乃は、佐野の高価な内履きを一足盗んだ。これで二人は御相子、同じ泥棒同士だ。どっちもどっちだから報告する必要もなければ報告される必要もない。(つづく)




