施設よりはスーパー
佐野亮太は、二十歳で専門学校を卒業した。介護福祉士を養成する学校だ。
まだ国家試験には合格しないものの、資格を持つ、れっきとした介護福祉士だ。
しかし、学校を卒業後、すぐには介護の仕事に就かなかった。
スーパー。居酒屋。コーヒーショップ。など、そうやって生活費を稼いだ。
一つに決めず、二つ掛け持ちで働きもした。
大変だし、店長や先輩の前で緊張するけれど、介護施設で働く大変さはもっとだろうと考えた。
だから、すぐには就かなかった。
二十一歳になって、だんだん資格がもったいなく感じられた。せっかく二年間、専門学校で学んだのに。親にも叱られた。いつまでぶらぶらしている気かと。
それで、「澄香」に応募した。
既卒ながら一発採用となった。
初めての介護現場が澄香だ。
もっとも、専門学校へ通う二年間、「実習」と呼ぶ制度があって、さまざまな施設へ行っては、そこのやりかたを学ぶ。学んだことをレポート風にまとめて提出する決まりになっていた。
二年生だった夏、最後の長期実習先で、94歳のおばあちゃんを転ばせたのは、彼にとって思い出したくない経験だ。おばあちゃんは大腿骨を折ってしまい、それから車椅子の生活になったと聞く。
そうしたこともあって、本当は、就職するんなら、特養で介護するよりスーパーで品出ししているほうが気楽といえば気楽だった。
彼の万引きが始まったのも、澄香の介護職員になってからだ。




