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風花の貸し
「ごめん。お金かして」
「はい?」
「お金払えない」
「なに」
「今スーパー」
「何の話?」
「ウナギとった」
「はい?」
電話が鳴った時、風花は仕事帰りの電車を降りたところだった。亮太のアパートに向かおうとしていた。二人で缶ビールでも飲みたい気分だったから、スーパーに寄り道しようか考えていた。
アメリカ人のビジネスマン相手は、さすがにくたびれた。本来、彼女は英文事務をする為に派遣されているのに、通訳は約束違反だ。時給が全然違う。
国産ウナギの蒲焼きを4パック。亮太がとった物だ。
買い物かごには入れずに、鞄の中へ押し込んだまま店を出たら、私服に声をかけられた。
捕まったのは、これで二度目。
一度目は、百円ショップ。ペットフードをポケットに入れるところを、店員に見られた。代金を支払わされた上で二度と来店しない誓約書を書かされた。
でも今度は額が違う。静岡産のウナギをやってしまった。
「こちらは買い取って頂きます」
現金で買い取れと、店は言う。
どうして良いか分からなくなり、彼女でもない風花に電話した。けれど、二人で蒲焼きパーティーがしたいから盗ったウナギでもなかった。




