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三足目の夜


あの晩だ、三足目を狙った。


職員通用口を入って下駄箱の中に人参色を見た時、胸が高鳴った。


木下(きのした)リーダーの内履きだ。木下リーダーが脱いだクロックスだ。今朝6時からの早番で、一日履いたクロックスだ。きっとさっきまで履いていた。さっき脱いで帰ったに違いない。


リュックに隠して二階に持ってあがりながら、今日の夜勤は存分に楽しめると浮きたった。(分かると思うけれど、夜勤でなければこの御馳走にはありつけない。アパートにあるやつで我慢するほかない。)


その晩の夜勤業務は、最初、いつもと変わらなかった。


勤務を開始して二時間と五十五分、遅番と組んで二階の排泄介助および就寝介助を終えたので、あとは自分一人の夜勤になるのを待てばよかった。早く休憩室にこもって嗅ぎたい。


そしたら遅番が、「佐野(さの)君。201号室の北島さん、熱があるみたい。顔が赤いよ」と言いおいて帰って行った。


一人になった佐野がバイタルサインを測りに行ったり、事務室へ走ったり、施設長に電話したり、再度バイタルサインを測りに階段を駆け上がったりしている所へ、まだ帰宅途中だったナースが事務員の連絡を受けて戻って来た。


ナースいわく、「カロナール飲ませたから大丈夫でしょ。何かあったら引き出しの中に緊急時のマニュアルがあるから。読んどいて」と、そういう決着を見た。


ナースがエレベーターで降りていったので一段落、そう思って休憩室に入った。そしてバニラ風味のゴルゴンゾーラでくつろいでいた。


そこを綾乃(あやの)が捕まえた。


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