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大家さん、その部屋だけは笑わせないでください  作者: あーちゃん


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7/10

すずめ、恋の誤配達

洗濯機前の人生相談所で、すずめは気になる配達先の人の話をした。

しかし翌日、彼女の淡い恋心は、まさかの誤配達によって笑福荘全体を巻き込む大騒動へ変わっていく。

恋なのか、勘違いなのか、それともただの配達ミスなのか。

 すずめは、その朝、いつもより三倍真剣だった。


 共同台所の小さな鏡の前に立ち、前髪を右へ流し、左へ流し、結局いつもの位置に戻す。

 制服の襟を直し、配達用の帽子をかぶり、また外す。

 深呼吸をして、もう一度かぶる。


 その様子を、こまちは味噌汁を飲みながら眺めていた。


「すずめさん、帽子と格闘してますね」


「今日は大事な日なんです!」


 すずめは鏡に向かって言った。


「こんにちは! お荷物です! 人生ではありません!」


「昨日から言ってますけど、その練習文はやめた方がいいです」


「じゃあ、こんにちは! お荷物をお届けに……お届けに……あなたの心にも……」


「配達だけしてください」


 だんごは大根の煮物を小皿に盛りながら、にやにやしていた。


「いいわねえ、すずめちゃん。恋ねえ」


「恋じゃないです!」


「じゃあ何?」


「えっと……配達先への、業務上の好感です!」


「言い方が固いわねえ」


 ぽん太は面接用のシャツを着て、なぜか正座していた。

 今日はアルバイトの面接の日だ。

 だが、すずめの様子が気になるらしく、スマホを握ったまま話に入ってきた。


「恋はコストがかかります」


「また節約目線ですか」


 こまちが言う。


「交通費、身だしなみ費、心の消耗費。非常に出費が多い」


「でも無料で嬉しくなることもありますよ!」


 すずめが言い返す。


「目が合うとか、ありがとうって言われるとか!」


「それは確かにコスパがいい」


「恋をコスパで計算しないでください」


 ちくわは鍋の前で味噌汁をよそっていた。


「今日はわかめ」


「ちくわさん、すずめさんに何かアドバイスあります?」


 こまちが聞くと、ちくわは少し考えて言った。


「荷物は正しく届けろ」


「一番大事!」


 すずめは胸に手を当てた。


「大丈夫です! 今日は絶対に間違えません! 恋も荷物も、まっすぐ届けます!」


「だから名言っぽく言わないでください」


 だんごが笑う。


「でも、いいじゃない。すずめちゃん、いつもより背筋が伸びてるわ」


「はい! 今日はちゃんとします!」


 すずめは勢いよく玄関へ向かった。


「いってきます!」


 だんごが返す。


「いってらっしゃい!」


 ぽん太も小さく言った。


「僕も面接、いってきます……」


「ぽん太ちゃんも、いってらっしゃい!」


 だんごが大きな声で言う。


 こまちも続けた。


「いってらっしゃい。頑張ってください」


 ぽん太は少し照れた顔をした。


「はい。時給に感謝してきます」


「そこだけ強調しないでください」


 すずめとぽん太が出ていくと、共同台所は少し静かになった。


 こまちは部屋に戻り、小説を書き始めた。


 タイトルは決まっている。


『第7ページ すずめ、恋の誤配達』


 書きながら、こまちは少し笑った。


 まだ何も起きていない。

 けれど、すずめが張り切って出ていった時点で、何かが起こる気がしてならなかった。


 そして、その予感は見事に当たった。


 昼過ぎ。


 こまちが原稿を書いていると、廊下から激しい足音が聞こえた。

 階段の五郎が「ぐえっ、ぐえっ」と悲鳴を上げている。


「こまちさあああん!」


 すずめの声だった。


 こまちは嫌な予感と共にドアを開けた。


 そこには、顔を真っ赤にしたすずめが立っていた。

 息を切らし、手には一通の封筒を握っている。


「どうしたんですか」


「やってしまいました!」


「配達ですか」


「はい!」


「間違えたんですね」


「はい!」


「予想通りすぎます」


 すずめは涙目で封筒を差し出した。


「これ、本当は近所の喫茶店『月待ち珈琲』の店主さん宛てだったんです」


「月待ち珈琲って、例の気になる人の?」


「はい……」


「それをどこへ?」


 すずめは震える声で言った。


「ぽん太さんのポストに……」


 こまちは目を閉じた。


 最悪ではない。

 だが、面倒な方向に全力で転がりそうな予感がした。


「ぽん太さんは?」


「まだ面接から帰ってきてません。でも、たぶん帰ってきたらポストを見ます」


「封筒は取り戻したんですよね?」


「はい! ぎりぎり取り戻しました!」


「じゃあ大丈夫じゃないですか」


 こまちが言うと、すずめは首を振った。


「でも、ぽん太さん、封筒の中身を見たかもしれません!」


「開けたんですか?」


「開けてはいないと思います。でも、封筒の表に……」


 すずめは封筒を見せた。


 そこには、丸い字でこう書かれていた。


『あなたの淹れるコーヒーが好きです』


 こまちは固まった。


「……これは」


「ラブレターっぽいですよね?」


「ぽいですね」


「しかも、ぽん太さんが見たら、自分宛てだと思うかもしれませんよね?」


「ぽん太さんなら思うかもしれません」


「どうしましょう!」


 すずめは頭を抱えた。


 その時、一階からだんごの声がした。


「何の騒ぎー?」


 こまちとすずめは顔を見合わせた。


 数分後。

 共同台所で緊急会議が開かれた。


 だんごは封筒を見て、目を輝かせた。


「あらまあ」


「だんごさん、楽しそうにしないでください!」


 すずめが叫ぶ。


「だって、恋の匂いがするんだもの」


「配達ミスの匂いです!」


 ちくわは封筒を見て言った。


「コーヒーか」


「そこですか」


「味噌汁とは方向が違う」


「当たり前です」


 こまちは腕を組んだ。


「まず整理しましょう。この手紙は、月待ち珈琲の店主さん宛て。差出人は不明。すずめさんが誤って、ぽん太さんのポストに入れた」


「はい」


「そのあと、すずめさんが取り戻した」


「はい」


「ぽん太さんが見たかどうかは不明」


「はい……」


 だんごが言う。


「ぽん太ちゃん、見てたら絶対勘違いするわね」


「断言しますか」


「するわ」


 ちくわもうなずく。


「する」


「ちくわさんまで」


 その時、玄関の方から足音がした。


 ぽん太だった。


「ただいま戻りました……」


 声が少し震えている。


 こまちは、すずめとだんごとちくわを見た。


 全員が黙る。


 ぽん太が共同台所に入ってきた。

 面接用のシャツは少ししわになり、髪は風で乱れている。

 しかし、その表情はどこか晴れやかだった。


「面接、どうでした?」


 こまちが聞くと、ぽん太は小さく笑った。


「終わりました。緊張しました。でも、ちゃんと話せました」


「すごいじゃない!」


 だんごが拍手する。


 すずめもぱっと顔を輝かせた。


「ぽん太さん、お疲れさまです!」


「ありがとうございます。まだ結果は分かりませんが、逃げずに行けました」


 その言葉に、こまちは少し嬉しくなった。


 ぽん太が一歩進んだ。

 面接に行っただけかもしれない。

 でも、本人にとっては大きな一歩だった。


 しかし、ぽん太は次の瞬間、急に真剣な顔になった。


「ところで」


 こまちたちは息をのむ。


「僕のポストに、手紙が入っていた気がするんですが」


 すずめの肩が跳ねた。


「見ました?」


 こまちが聞くと、ぽん太はうなずいた。


「表だけ」


 全員が固まる。


「あなたの淹れるコーヒーが好きです、と書いてありました」


 ぽん太は胸に手を当てた。


「僕はコーヒーを淹れたことがありません」


「じゃあ自分宛てじゃないって分かりますよね?」


 こまちが言う。


 ぽん太は真剣な顔で答えた。


「でも、人生にはこれから淹れる予定のコーヒーを好きになられる可能性もあります」


「ないです」


「未来の僕への手紙かもしれません」


「時間を超えないでください」


 だんごが笑いをこらえている。


 すずめは涙目で頭を下げた。


「すみません! それ、月待ち珈琲の店主さん宛ての手紙でした! 私が間違えてぽん太さんのポストに入れました!」


 ぽん太はしばらく沈黙した。


「……そうですか」


「ごめんなさい!」


「いえ」


 ぽん太は少し寂しそうに笑った。


「一瞬だけ、僕にも春が来たのかと思いました」


 共同台所が静かになった。


 こまちは、突っ込もうとして言葉を止めた。


 ぽん太の声が、いつものふざけた調子ではなかったからだ。


「面接の帰りにポストを見たら、その封筒があって。誰かが僕の何かを好きだって書いてくれたのかと思ったら……少し嬉しかったんです」


 ぽん太は頭をかいた。


「まあ、僕はコーヒー淹れられないんですけど」


 すずめがさらに申し訳なさそうな顔をした。


「本当にすみません」


 ぽん太は首を振った。


「大丈夫です。誤配達で春を感じられたので、実質無料の青春です」


「その言い方は少し面白いです」


 こまちが言うと、ぽん太は少し笑った。


 だんごは優しく言った。


「ぽん太ちゃん、今度コーヒー淹れてみたら?」


「え?」


「未来の誰かに好きって言われるかもしれないでしょ」


「大家さん、話を広げすぎです」


 しかし、ぽん太は少し考えた。


「コーヒー……」


 ちくわが言う。


「味噌汁とは違うが、湯を使う」


「そこから入るんですね」


「湯を大事にしろ」


「名言風」


 すずめは封筒を握りしめた。


「私、今からちゃんと届けてきます」


「私も行きます」


 こまちは言った。


「えっ、こまちさんも?」


「このままだと、すずめさんが緊張してまた別の場所に届けそうなので」


「否定できません!」


 だんごも手を挙げた。


「私も行こうかしら」


「騒ぎが大きくなるので待っててください」


「じゃあ、帰ってきたら報告してね」


 ぽん太も立ち上がりかけた。


「僕も行きます」


「なぜ」


「手紙の本来の相手を見て、僕の失恋を完了させます」


「始まってません」


「でも、終わらせたいんです」


 こまちは少し考えた。


 止めても、ぽん太は気にし続けるかもしれない。

 それなら、一緒に行って、ちゃんと笑いに変えた方がいい。


「分かりました。でも静かにしてください」


「はい」


 こうして、こまち、すずめ、ぽん太の三人は、月待ち珈琲へ向かうことになった。


 月待ち珈琲は、笑福荘から歩いて十分ほどの場所にある小さな喫茶店だった。

 木の扉に、落ち着いた看板。

 窓際には観葉植物が置かれ、店内からはコーヒーの香りが漂ってくる。


 すずめは店の前で深呼吸をした。


「緊張します」


「配達するだけです」


「今日は人生ではなく、手紙を届けます」


「それでお願いします」


 ぽん太は真剣な顔で言った。


「僕、店主さんに勝てる気がしません」


「何で勝負してるんですか」


「雰囲気です」


「勝負しなくていいです」


 三人が店に入ると、カウンターの奥に男性がいた。

 三十代前半くらいだろうか。

 落ち着いた雰囲気で、柔らかく笑う人だった。


「いらっしゃいませ」


 すずめの顔が一瞬で赤くなる。


 こまちは思った。


 なるほど。

 たしかに、これは少し分かる。


 店主はすずめに気づくと、微笑んだ。


「あ、いつも配達してくれる方ですね」


「は、はい! お荷物ではなく、今日はお手紙です!」


「お手紙?」


「あっ、違います、荷物ではなく手紙です! 人生ではありません!」


 こまちは額を押さえた。


 ぽん太が小声で言う。


「練習の成果が出ましたね」


「悪い方向に」


 すずめは震える手で封筒を差し出した。


「こちら、本当は店主さん宛てでした。私が間違えて別のところに届けてしまって……すみません!」


 店主は驚いた顔をしたが、すぐに優しく受け取った。


「わざわざありがとうございます。大丈夫ですよ」


 その声を聞いて、すずめの肩の力が少し抜けた。


「本当にすみません」


「気にしないでください。ちゃんと届けてくれたので」


 店主は封筒の表を見て、少し照れたように笑った。


「これは……常連さんかな」


 ぽん太が小さく胸を押さえた。


「僕ではなかった……」


「最初から違います」


 こまちが言う。


 店主は不思議そうにぽん太を見た。


「こちらの方は?」


 すずめが慌てて言う。


「誤配達先の方です!」


「紹介の仕方」


 ぽん太は深く頭を下げた。


「八戸ぽん太です。一瞬だけ春をありがとうございました」


「え?」


「気にしないでください」


 こまちがすぐに言った。


 店主は少し笑った。


「よかったら、皆さんコーヒー飲んでいきませんか? お詫びというか、お礼というか」


「いいんですか?」


 すずめが目を輝かせる。


「もちろん」


 ぽん太が小声で言う。


「無料ですか?」


「ぽん太さん」


「すみません、心の声が」


 店主は笑った。


「今日はサービスで」


「ありがとうございます!」


 ぽん太の声が一番大きかった。


 三人は窓際の席に座った。


 コーヒーが運ばれてくる。

 こまちは普段、安いインスタントコーヒーばかり飲んでいるので、喫茶店のコーヒーの香りに少し驚いた。


 すずめはカップを両手で持ち、緊張しながら一口飲んだ。


「おいしいです」


 店主が嬉しそうに笑う。


「ありがとうございます」


 すずめはさらに赤くなった。


 ぽん太も一口飲んだ。


「これが、人に好きと言われるコーヒー……」


「まだ引きずってる」


 こまちは苦笑した。


 その時、店の扉が開き、一人の女性客が入ってきた。

 店主はその人を見ると、少しだけ表情を変えた。


 女性はカウンターに座り、店主に何か小さな声で話しかけた。

 店主は封筒を見せ、二人で照れたように笑っている。


 すずめはそれを見て、静かに目を伏せた。


 こまちは気づいた。


 あの手紙の差出人は、たぶんあの女性だ。


 すずめの恋になる前の気持ちは、ここで少しだけ形を変えたのかもしれない。


 帰り道。

 すずめは少し静かだった。


「大丈夫ですか」


 こまちが聞くと、すずめは笑った。


「はい。ちょっとだけ、胸がきゅってなりました」


「そうですか」


「でも、店主さん嬉しそうだったので、よかったです」


 ぽん太がうなずいた。


「僕たちは二人同時に失恋しましたね」


「私は恋じゃないです!」


「僕も未来のコーヒー恋でした」


「何ですかそれ」


 すずめは少し笑った。


「でも、コーヒーおいしかったですね」


「はい」


 こまちはうなずいた。


「あと、ちゃんと届けられてよかったです」


 すずめは大きく息を吐いた。


「私、間違えてばっかりです。配達も、言葉も、気持ちも」


「でも、最後はちゃんと届けました」


 こまちは言った。


 すずめはこまちを見た。


「間違えても、届け直せばいいんですかね」


「たぶん」


 こまちは少し笑った。


「少なくとも、今日の手紙は届きました」


 すずめはうなずいた。


「はい」


 笑福荘に戻ると、だんごが玄関で待っていた。


「どうだった?」


「手紙、ちゃんと届けました!」


「偉い!」


 だんごはすずめの頭をなでた。


「子ども扱いしないでください!」


「でも偉いもの」


 ちくわは共同台所から顔を出した。


「コーヒーはどうだった」


「おいしかったです!」


 すずめが答える。


「味噌汁とは?」


「比べるものじゃないです!」


「そうか」


 ぽん太は椅子に座り、遠い目をした。


「僕、コーヒーを淹れられる男になります」


「急にどうしたの」


 だんごが聞く。


「いつか誰かに、あなたの淹れるコーヒーが好きですと言われたいので」


「いいじゃない」


 こまちは笑った。


「まずはお湯の沸かし方からですね」


「そこからですか?」


「そこからです」


 その夜。

 こまちは部屋で小説を書いた。


『第7ページ すずめ、恋の誤配達』


 すずめの張り切った朝。

 誤配達された手紙。

 ぽん太の一瞬の春。

 月待ち珈琲の店主。

 届かなかった恋ではなく、ちゃんと届いた手紙。


 書きながら、こまちはすずめの言葉を思い出していた。


 間違えても、届け直せばいいんですかね。


 たぶん、そうだ。


 人生だって、言葉だって、夢だって、時々配達先を間違える。

 自分がどこへ向かっているのか分からなくなる。

 届けたい相手に届かないこともある。


 それでも、気づいた時に届け直せばいい。

 遅れても、遠回りしても、ちゃんと届けようとすることに意味がある。


 こまちはキーボードを打ちながら、少しだけ自分の小説のことを考えた。


 まだ届いていないだけかもしれない。

 届け方を間違えているだけかもしれない。

 それなら、また書けばいい。

 また届け直せばいい。


 夜遅く、共同台所から声がした。


「こまちちゃーん、コーヒー飲むー?」


 ぽん太の声だった。


「ぽん太さんが淹れたんですか?」


「はい!」


「不安です」


「インスタントです!」


「それなら大丈夫そうですね」


 こまちは部屋を出た。


 共同台所には、ぽん太が真剣な顔でマグカップを並べていた。

 だんご、すずめ、ちくわもいる。


 ぽん太はこまちにカップを差し出した。


「どうぞ。僕の淹れた初コーヒーです」


 こまちは一口飲んだ。


「……普通です」


 ぽん太は目を輝かせた。


「普通!」


「褒めてます?」


「最高です。まずは普通から始めます」


 すずめが笑った。


「ぽん太さんの淹れる普通のコーヒー、好きですよ」


 ぽん太は固まった。


「今、好きって」


「普通のコーヒーが、です!」


「でも、少し春です」


「よかったですね」


 だんごが大笑いする。


 ちくわはコーヒーを飲み、少し考えた。


「味噌汁とは違う」


「今日二回目です」


 こまちは笑った。


 笑福荘の夜は、またくだらない笑いに包まれていた。


 すずめの恋は、恋になる前に少しだけ終わったのかもしれない。

 でも、彼女は手紙をちゃんと届けた。

 ぽん太は面接に行き、初めてコーヒーを淹れた。

 こまちは、その全部を物語に書いた。


 間違えても、届け直せばいい。


 こまちはマグカップを両手で包みながら、そう思った。


 しかし、そんな穏やかな夜の数日後。

 笑福荘に、今までで一番大きな知らせが届くことになる。


 古いアパート。

 家賃三万円。

 階段の五郎。

 洗濯機の五郎。

 だんごの大根。

 ちくわの味噌汁。

 すずめの誤配達。

 ぽん太の普通のコーヒー。


 そのすべてが、当たり前ではなくなる知らせ。


 笑福荘、取り壊し。


 こまちはまだ、その言葉が自分の胸をどれほど強く締めつけるのかを知らなかった。

第7ページでは、すずめの誤配達から、恋のようで恋ではない少し切ない騒動が起こりました。

手紙は遠回りしながらも本来の相手へ届き、すずめもぽん太も少しだけ前に進みます。

こまちは「間違えても届け直せばいい」という気づきを、小説と自分自身に重ねました。

次回は、笑福荘に取り壊しの話が持ち上がります。

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