表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
99/112

第98話 水のレガリア

研究棟――


「開けろ!」


重い扉が乱暴に叩かれる。


「教務監査官命令だ!」


「研究棟全域を再捜索する!」


ラザールの怒声が廊下へ響き渡った。


その後ろには十数名の教員。


さらに学院警備隊まで従えている。


研究棟にいた生徒達は慌てて廊下の端へ避難した。


「何だ?」


「ラザール先生か……」


ざわめきが広がる。



研究室。


「……来ましたねぇ」


シュプールが小さく呟いた。


ライトは窓の外を見つめる。


「ラザールは本気みたいだな」


扉が勢いよく開く。


「ライト・グランフェル!」


ラザールがずかずかと部屋へ踏み込んできた。


「本日より研究棟は封鎖する!」


「設計図、魔導具、私物を含め全て押収だ!」


「抵抗するなら帝国法に基づき拘束する!」


教員達が一斉に研究室へ入ろうとする。


その時だった。


「止まりなさい」


静かな声。


しかし、その一言だけで空気が凍りついた。


廊下の奥。


青いローブを纏ったルミナスがゆっくり歩いてくる。


隣にはエリオス副学院長、リリアナ王女。


そしてフィオレリアもいた。


「学院長……」


ラザールは眉をひそめる。


「邪魔をなさるおつもりですか」


「邪魔ではない」


ルミナスは真っ直ぐラザールを見る。


「学院長として命じる」


「これ以上の捜索は中止だ」


ラザールは拳を震わせた。


「拒否します」


その場が静まり返る。


教員達も息を呑む。


学院長命令への拒否。


それは前代未聞だった。


「帝国が危険に晒されているのです!」


「私は人族を守る!」


「魔族など信用できません!」


声は次第に大きくなっていく。


「学院長は騙されている!ライト・グランフェルを庇うなど!」


「それでも帝国人ですか!」


怒号が研究棟へ響く。


ジューダス帝国皇女のフィオレリアが思わず一歩前へ出ようとする。


しかしルミナスは静かに手で制した。


「……ラザール」


その声は穏やかだった。


「ここで終わりだ」


「終わりません!」


ラザールは警備隊へ手を振る。


「構わん!」


「全員入れ!」


その瞬間だった。


ルミナスが静かに右手を掲げる。


「ならば」


「学院長権限ではなく」


その瞳が蒼く輝いた。


「水の守護者として命じよう」


ゴォォォォ――


研究棟全体を魔力が満たす。


床に巨大な蒼い魔法陣が浮かび上がった。


廊下。


壁。


天井。


学院そのものが呼吸を始めたかのように、水色の光が脈動する。


「なっ……!」


リリアナが目を見開いた。


フィオレリアも言葉を失う。


生徒達はただ呆然と立ち尽くす。


ルミナスの背後。


無数の水流が渦を巻き、一人の女性の姿を形作る。


透き通る長髪。


水晶のような翼。


湖そのものを思わせる神秘の存在。


そしてルミナスの右手へ、一つの蒼い紋章が浮かび上がる。


「レ……レガリア……?」


「水のレガリア……!」


リリアナが呟いた。


ラザールも顔色を失う。


「馬鹿な……なんだこの魔力は……」


ルミナスは静かに目を閉じた。


「水は争わない」


「だが」


ゆっくりと瞳を開く。


「命を守るためなら」


「全てを包み込む」


水流がラザール達の前へ壁のように立ち上がる。


剣では斬れない。


魔法でも壊れない。


ただ静かに道を塞ぐ巨大な水壁。


「これ以上、一歩も進ませない」


その声に敵意はない。


しかし圧倒的だった。


ラザールは一歩後ずさる。


本能が理解した。


勝てない。


目の前にいるのは学院長ではない。


この世界の属性を司る七柱。


レガリアの一人だった。



一方その頃――


「シュプール」


ライトが静かに言う。


「今だ」


「はい~」


シュプールは机の引き出しから、小さな銀色の小型飛行機のような物体を取り出した。


翼長五十センチほど。


細身の機体。


魔導式無人航空機。


コードネーム――《リーパー》


「初実戦ですねぇ~」


シュプールが優しく機体を撫でる。


「ちゃんと帰ってくるんですよぉ~」


魔力を流し込む。


カチリ。


両翼が展開する。


機体表面へ無数の魔法陣が走った。


「起動確認」


「魔力炉正常」


「長距離通信接続」


シュプールが窓を開く。


「目的地」


「神樹の国シルヴァリス」


「任務――戦況偵察」


次の瞬間。


バシュッ!!


風を裂き、空へ飛び立った。


「速い……」


フィオレリアが空を見上げる。


ライトも小さく頷いた。


「あれなら数時間で前線へ着く」


リーパーは雲の中へ消えていく。


誰にも気付かれず。


誰にも撃ち落とされず。


その小さな翼は、神樹の国で燃え広がる戦場を目指して一直線に飛び続ける。


そしてその映像は、リアルタイムで帝国学院の研究室へ送られることになる。


学院では情報戦。


神樹の国では本当の戦争。


二つの戦場が、いよいよ一つの運命へと繋がろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ