表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
93/101

第92話 深まる親睦

翌日――

帝国学院。


中央図書館。


帝都最大級の蔵書を誇るその場所は、朝にもかかわらず静寂に包まれていた。


高い天井まで届く本棚。


魔導書、歴史書、古代文明の文献。


数十万冊もの書物が整然と並ぶ光景に、リリアナは思わず息を呑む。


「……すごい」


「こんな蔵書量は初めて見ました」


「俺も最初は迷いました」


ライトは苦笑する。


「今でも目的の本を探すのに一時間くらい掛かります」


「それは方向音痴なのでは?」


「……否定できません」


「ふふっ」


リリアナは口元を押さえて笑った。


昨日よりも自然に笑えている自分に気付く。


その様子を、少し離れた場所からマキナがじっと見つめていた。


『ゴシュジンサマ』


「ん?」


『オンナノコヲワラワセルノガジョウズニナリマシタ』


「なんだその評価」


『セイチョウデス』


「保護者みたいなこと言うな」


『ホゴシャデス』


「違うから!」


図書館の司書達が思わず吹き出す。


帝国学院では、もはや日常の光景だった。



「こちらです」


ライトが一冊の本を取り出す。


『精霊魔法概論』


「風魔法なら、この本が一番分かりやすいですよ」


「……え?」


リリアナが目を丸くした。


「これ、人族が書いた本ですよ?」


「はい」


「読まれたことが?」


「三回くらい」


リリアナは恐る恐る本を開く。


そして数ページ読んだところで、目を見開いた。


(すごい……)


理論は人族のもの。


だが。


精霊との親和性についての考察は、エルフの文献にも劣らない。


「これを書いた方は?」


「聖女です」


「ああ……聖女様なら納得です」


リリアナは微笑んだ。


しかし、その隣でライトは別の棚から十冊近い本を抱えて戻ってくる。


「あと、この辺も参考になります」


「そんなに?」


「面白いですよ」


「全部読むんですか?」


「もちろん」


あまりにも当然のように答える。


リリアナは思わず笑ってしまった。


(本当に魔法が好きなんですね)



しばらくして。


二人は閲覧席へ腰掛けた。


静かな時間が流れる。


ページをめくる音だけが響く。


「……あ」


リリアナが小さく声を漏らした。


「どうしました?」


「この理論……」


「風属性だけでは完成しません」


ライトが本を覗き込む。


「ほんとだ」


「ここ、光属性で補助すると安定しそうですね」


「えっ?」


リリアナは驚く。

自分が言おうとしていたことを、一瞬で言い当てられた。


ライトは紙へさらさらと術式を書き始める。


「ここをこうして……」


「光で魔力を整列させれば」


「風の乱流が減る」


リリアナも思わず身を乗り出した。


「その発想はありませんでした……!」


「え?」


「普通ですよ?」


「普通ではありません」


即答だった。


「光属性で風属性を補助するなんて、誰も考えません」


「そうなんですか?」


「ええ」


ライトは首を傾げる。


「属性って、組み合わせた方が面白いじゃないですか」


「……」


その一言に。

リリアナは思わず見惚れた。


(固定観念がない)


だからこそ。

誰も思い付かない魔法を生み出せる。


叔母が「面白い子」と言った理由が、少し分かった気がした。



その頃。


図書館最上階。

学院長室へ続く回廊。


ルミナスとエリオスは、窓越しに二人を眺めていた。


「もう共同研究を始めてるね」


「予想以上ですよ」


エリオスは苦笑する。


「普通なら王女は相手を値踏みします」


「ライト君は肩書きを気にしない」


「だからリリアナも自然体でいられる」


ルミナスは静かに頷いた。


「……でも」


その表情が少しだけ曇る。


「時間がない」


エリオスも笑みを消した。


「王国ですか」


「うん」


「王国は一度失敗した程度では止まらない」


「むしろ次は、もっと巧妙に来る」



同時刻――


アストリア王国。

地下最深部。


黒曜計画・第一実験区画。


巨大な扉がゆっくりと開く。


その奥には。

漆黒の結晶が無数に突き刺さった広大な空間が広がっていた。


中央には。

人型の石像が七体。


火。


水。


風。


土。


雷。


光。


闇。


それぞれ異なる紋章が刻まれている。


だが。


風の石像だけは、胸部に淡い緑色の光が宿っていた。


アイリシアから抽出されたレガリアの力。


「適合率四十二パーセント」


研究員が報告する。


「光と闇の器がなければ、これ以上は進みません」


国王は静かに頷く。


「予定通りだ」


レイヴンが石像を見上げる。


「焦る必要はありません」


「ライト・グランフェルは必ずここへ辿り着く」


「運命は、そのように出来ています」


その瞳には確信があった。


「第二段階では、帝国内に潜伏している工作員を動かします」


「目標は一つ」


レイヴンは静かに笑う。


「ライト・グランフェルの日常を壊すこと」


「守りたいものが増えれば増えるほど、人は隙を見せる」


「そこを狙います」


国王は満足そうに目を細めた。


「良い」


「黒曜計画を続行せよ」



一方、その頃。


帝国学院図書館では。


「できました!」


ライトが一枚の術式を書き上げる。


「リリアナさん、これ試してみませんか?」


「もう完成したのですか?」


「試作品ですけど」


リリアナは術式を見て、思わず息を呑む。


(たった一時間で……?)


それは、自分が長年研究していた風魔法を、さらに一段階進化させる可能性を秘めた術式だった。


「……本当に」


リリアナは小さく呟く。


「あなたは、面白い人ですね」


ライトは照れくさそうに笑う。


「そうですか?」


「はい」


「今まで出会った誰とも違います」


その言葉と同時に。


窓から吹き込んだ風が、二人の書きかけの術式をふわりと揺らした。


誰にも聞こえないほど小さく。


まるで祝福するように。


優しい風が、二人の間を吹き抜けていった。


その風はまだ、誰も知らない。


やがて世界を揺るがす「光と闇」そして「風」の運命が、静かに重なり始めた証であることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ