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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第91話 各国の思惑、そして目的

交流訓練が終わった後――

昼下がりの帝国学院。


石畳の中庭を、ライトとリリアナは並んで歩いていた。


エルフ騎士達は少し離れた場所で待機し、ルミナスとエリオスも「若い子同士で話しておいで」と二人きりにしている。


穏やかな風が吹き抜ける。


春の陽射しが木漏れ日となって二人へ降り注いでいた。


「帝国学院って、本当に自由なんですね」


リリアナが柔らかく微笑む。


「え?」


「神樹の国では、王族は常に護衛と共に行動しますから」


「こうして学院を歩くことなんてありません」


ライトは苦笑した。


「俺は逆に王族と歩くなんて余りありませんよ」


「緊張してます?」


「めちゃくちゃしてます」


「……ふふっ」


思わず笑みが零れる。


その笑顔を見たライトも釣られて笑った。


不思議だった。

初対面のはずなのに。


妙に話しやすい。


「ライトさんは、魔法がお好きなんですね」


「大好きです」


即答だった。


「新しい魔法を考えてる時なんて、一日中でも研究できます」


「昨日も学院長と夜まで研究してましたし」


リリアナは目を丸くする。


「終焉光雨(エンド•レイン)も、その研究で?」


「え?」


「学院長から少しだけ聞きました」


「ああ……」


ライトは頭を掻いた。


「あれは失敗作ですよ」


「失敗……?」


「威力が高すぎました」


「もっと使いやすい魔法を作る予定だったんです」


リリアナは思わず立ち止まった。


(威力が高すぎるから失敗……?)


普通なら、強力な魔法ほど成功と言われる。


この少年だけは違う。

基準がおかしい。


「平和な方がいいですからね」


ライトは何でもないように笑う。


「人を楽しませる魔法が、一番良い魔法ですよ」


その一言に。


リリアナは少しだけ目を伏せた。


(姉様も……)


昔。


同じようなことを言っていた。


『本当に強い魔導士は、魔法を撃たなくて済む未来を選ぶ人よ』


記憶の中の姉の笑顔と目の前の少年の笑顔が重なった。


胸の奥が温かくなる。



その時だった。


『姫様』


護衛騎士が近付いてくる。


「どうしました?」


「皇城より連絡です」


「王国の動きが活発化しております」


リリアナの表情が引き締まる。


「……詳しく」


「国境付近でアストリア王国軍の演習が急増」


「さらに王国諜報員らしき人物が帝国内で複数確認されたとのことです」


ライトも表情を変える。


(また王国か……)


学院襲撃から一ヶ月。


静かだった。


だが。


終わってはいなかった。



その頃――


アストリア王国。

王都地下。


極秘会議室。


「帝国へ使節団が到着しました」


報告を受けたレイヴンは静かに笑った。


「予定通りですね」


国王が玉座から問う。


「リリアナ・シルヴェル本人か」


「はい」


「第二王女自ら動きました」


沈黙。


やがて国王が低く笑う。


「ならば好都合だ」


「風のレガリアを探すだろう」


「その先で必ず――」


「ライト・グランフェルと接触する」


レイヴンも頷く。


「ええ」


「そして彼女は気付くでしょう」


「ライトが普通ではないことに」


「問題ありませんか?」


軍務大臣が尋ねる。


レイヴンは首を横に振った。


「むしろ望むところです」


「運命は人を引き寄せます」


「こちらは少し背中を押すだけでいい」


その瞳が妖しく細められる。


「我々が欲しいのはレガリア」


「エルフ国が探しているのは英雄」


「帝国が守りたいのは平和」


「そして魔王国もそれに呼応するように、いずれ動く」


四つの大国。

その全ての思惑が。


一人の少年へ集まり始めていた。


「頃合いです」


レイヴンは机の上へ新たな書類を置く。


「第二段階へ移行します」


国王は静かに頷く。


「“黒曜計画”(オブシディアン•プロジェクト)を開始せよ」


その言葉に。


会議室の空気が凍り付く。


誰もが知っていた。


王国最大の切り札。


まだ誰にも使われたことのない計画が、ついに動き始めることを。



一方、帝国学院。


「ライトさん」


「はい?」


「明日、お時間はありますか?」


「ありますけど」


リリアナは少しだけ照れたように微笑む。


「学院の図書館を案内していただけませんか?」


「シルヴァリスにはない魔導書も読んでみたいので」


「もちろん!」


ライトは快く頷く。


「俺も風魔法の本、見てみたかったんですよ」


「では、一緒に勉強ですね」


「はい!」


その約束を交わした瞬間。


二人の間を、一陣の風が優しく吹き抜ける。


誰にも見えないその風は。


まるで遠く離れた誰かが、二人の出会いを祝福しているかのように、どこまでも穏やかだった。


しかしその頃、王国では”黒曜計画”が静かに始動していた。


運命が再び交差する日は、もうすぐそこまで迫っていた。

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