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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第90話 魔法交流

翌日――

帝国学院。


第一演習場。


澄み渡る青空の下、学院中の生徒達がざわついていた。


「本当に来るのか?」


「エルフ王女が授業を見学するらしいぞ」


「いや、見学じゃなくて交流会だって」


そんな噂が飛び交う中、一人だけ変わらない人物がいた。


「……眠い」


ライト・グランフェルである。


「昨日遅くまで新魔法の解析してたしなぁ……」


隣ではマキナが無表情で答える。


『スイミンジカン、ヨジカンジュウニフン』


「数えなくていいから」


『ゴシュジンサマハフキソクデス』


「正論はやめて」


いつものやり取りだった。



やがて。

学院長ルミナスと共に、一団が演習場へ姿を現す。


翡翠色の制服を纏うエルフ騎士。

その中央には、リリアナ・シルヴェル。


彼女が姿を現した瞬間、学院中の視線が集まった。


「綺麗……」


「本当にお姫様だ……」


感嘆の声が漏れる。


リリアナは軽く微笑みながら、生徒達へ会釈を返した。

その姿はまさに絵画のようだった。


しかし。


彼女の視線だけは、一人の少年を探していた。


(……いた)


演習場の隅。


欠伸を噛み殺しているライト。


昨日と変わらない、自然体でありながらも美しい姿。


その瞬間だった。


トクン――


首飾りが、また淡く輝く。


(また……)


昨日だけではない。


距離が近付くほど、風が騒ぐ。

まるで喜んでいるように。



「では今日は、帝国学院と神樹の国の交流訓練を行う」


ルミナスが全体へ告げる。


「互いの魔法を学び合うことが目的だ」


歓声が上がる。


エルフの魔法。

それは人族では滅多に見ることができない。


リリアナは一歩前へ出た。


「それでは僭越ながら」


ゆっくりと杖を掲げる。


「風よ」


その一言だけだった。


次の瞬間。


サァァァァ……


優しい風が演習場を包む。


木々が揺れ。


花弁が舞い。


まるで自然そのものが彼女へ応えているようだった。


「すごい……」


「精霊魔法か……!」


生徒達が息を呑む。


風は決して暴れない。


穏やかに。


美しく。


演習場全体を一周すると、ゆっくり消えていった。


拍手が起こる。

リリアナは静かに一礼した。



「次は帝国代表」


ルミナスが笑う。


「ライト君」


「……え?」


ライトは固まった。


「俺?」


「うん」


「聞いてないですよ?」


「今決めた」


「そんな無茶苦茶な」


周囲から笑いが漏れる。


ライトは頭を掻きながら前へ出た。


「えっと……」


何を見せよう。


ディバインアビスフレイムは論外。


学院が消える。


エンド•レインもダメ。


まだ人には見せたくない。


「普通のでいいか」


右手を前へ。


「ライトボール」


ポゥ……


掌に小さな光球が浮かぶ。


あまりにも普通。


生徒達も拍子抜けしていた。


「なんだ」


「基礎魔法?」


ところが。

リリアナだけは目を見開いていた。


(違う)


見えている。


光球の内部。


圧縮された、とてつもない魔力。


暴れない。


漏れない。


完全に制御されている。


(なんて制御力……)


王国宮廷魔導士でも、ここまで美しく魔力を纏める者はいない。


ライトは何も考えず光球を放る。


ふわり。


空へ上がった光球は、花火のように弾ける。


無数の光の粒が学院中へ降り注いだ。


「おぉ……!」


歓声が上がる。


戦闘魔法ですらない。


ただ綺麗だから。


それだけで皆が笑顔になった。


ライトは照れ臭そうに笑う。


「終わりです」


「地味だな」


「でも綺麗だった」


そんな感想が飛び交う。


だが。


リリアナだけは動けなかった。


(あの魔力……)


一切の無駄がない。

自然そのもの。


まるで世界が彼を拒まず、受け入れているような感覚。


それは――


姉。

アイリシアが魔法を使った時と、よく似ていた。



訓練終了後。

リリアナは思わずライトへ近付く。


「ライト様」


「あ、王女様」


「リリアナで結構です」


「いや、それは流石に」


「ではリリアナさんで」


「……分かりました」


少し嬉しそうに笑うリリアナ。


「先ほどの魔法、とても美しかったです」


「え?」


「ただの光球ですよ?」


「だからです」


リリアナは首を振る。


「あれほど美しく魔力を制御できる方を、私は知りません」


「そうなんですか?」


本人は本気で分かっていない。


リリアナは苦笑した。


(この人……)


自分がどれほど規格外なのか。

全く自覚していない。


「もしよろしければ」


リリアナは意を決して言う。


「今度、一緒に魔法の研究をしませんか?」


「風魔法と光魔法は相性が良いと言われています。何か新しい発見があるかもしれません」


ライトの目が輝く。


「本当ですか!」


「ぜひお願いします!」


あまりにも嬉しそうな笑顔。


その笑顔につられ、リリアナも自然と笑みを浮かべていた。


少し離れた場所では、ルミナスとエリオスがその様子を眺めている。


「随分と打ち解けるのが早いね」


「風が導いていますからね」


「……そうだね」


ルミナスは静かに空を見上げた。


春風が学院を優しく吹き抜けていく。

その風は、遠くアストリア王国へも続いていた。


地下研究施設。


眠り続けるアイリシア・シルヴェルの指先が、再び微かに震える。


閉ざされた瞼の奥で、一筋の涙が静かに頬を伝った。


誰にも聞こえないほど小さな声が漏れる。


「……リリアナ……」


そして、さらにもう一つ。


「……ライト……」


離れた二人の名を呼ぶように、風は静かに吹き続けていた。


そして運命の糸は、少しずつ、しかし確実に結び始めていた。

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