第8話 魔王のいない帰還
初めての作品で、手探りで執筆しておりますので内容において、度々改変などがされております。
ご不便をお掛け致しますが、温かい目でご覧頂けると幸いです。
巨大な剣に胸を貫かれた魔王ガルス....
その目に映る白銀のゴーレム。
ゴーレムの壊れた胸元には中からクリスタルが露出していた。
魔王ガルスはそのクリスタルに向かって手を伸ばす....
『ふっ....そんなとこにいたのか....アレン....』
クリスタルの中には良く知った親友の姿があった….
それは、かつての勇者、そしてライトの実の父アレンの姿だった。
『そんなとこでなにやってんだよ....随分探したんだぞ....』
『お前の息子、大きくなったんだぜ....そんなとこ入ってないでよぉ....逢いにいってやってくれよ....』
『………』
しかし、アレンに反応はない...
『アレェェェーンッ!!!』
魔王ガルスは血反吐を吐きながら、アレンに必死に呼びかける。
しかしいくら叫んでも勇者アレンに反応はなく、魔王ガルスはいつの間にかアビスフレアから抜け出した、他の4体のゴーレムに取り囲まれる。
『『『魔王様ッ!!!』』』
『来るなっ!』
ホイズ、ベイル、アローラは魔王を助ける為、駆け寄ろうとするが魔王に制止される。
『お前達は直ぐに城に戻り、守りを固めろ....!ライトを絶対に渡すなっ!』
『城には結界が張ってある、あの結界がある限りコイツらは簡単には中には入れん....例えアレンでもな....』
『『『しかしっ!!』』』
ホイズ達はそれでも助けようとする。
『くどいっ!!これは命令だっ!』
『頼む!....俺は親友と少し遊んでから帰る、先に帰っていろ....ライトが帰りを待っているだろ?アイツを寂しがらせないでくれ....』
『『『くっ!....承知....致しました....』』』
今すべきことは何か?魔王の言葉にはそんな問いがかけられていたようだった....
魔王の命を受けホイズ、ベイル、アローラはそれぞれの部隊に向き直り、退却を始める。
強く強く握りしめた拳と噛み締めた口元から血を流し、瞳には涙を滲ませながら....
退却を始める魔王軍に対し、当然逃すまいとゴーレム達は追撃を始めようとする。
しかし、魔王ガルスは自身を貫いている胸元の剣を後方に下がり引き抜くと、ゴーレム達の追撃を阻止するように、自身の周りに大量の魔法陣を発現させながら立ちはだかる。
『久しぶりに少し遊んでくれねーか....アレン....』
胸元の大きな傷口から大量の血を流しながら魔王は不敵に笑う。
そして魔王ガルスは仲間達を退却させる為の時間を稼ごうと、激しい戦いを始めるのだった....かつての親友達と。
それから戦場には、目を開けるのも難しいほどの眩い閃光と一瞬で聴覚がマヒしてしまうほどの激しい轟音、大気が震えその衝撃に身震いしてしまうほどの地響きが絶え間なく続いてゆく。
どの位の時間が過ぎただろう....
辺りの戦場には、先程迄の状況がウソだったかのように、静寂が広がる。
そんな静寂の中、王国軍の天幕では指揮官風の男に戦いを終えた兵士が報告をあげる。
『報告致します!!ロイズ将軍!魔王を捕らえました!』
兵士の足元には深い傷を負い、魔力も尽き果て、瀕死の状態で拘束された魔王の姿がある。
その魔王の姿をまるで虫ケラでも見るかのように一瞥し、ロイズ将軍と呼ばれた指揮官風の男は口を開く。
『まだ息をしておるのか!この場で首を刎ねてやりたいところだが、勇者同様魔導兵器に使えるやもしれん....仕方ない!拘束して本国に移送しろ!』
そして、捕らえた魔王の処遇を部下に命令する。
『続けて、魔導兵器の損傷状態をご報告致します!』
『勇者の損傷率65%、聖女の損傷率72%、剣聖の損傷率77%、魔導王の損傷率71%、最後に盾王の損傷率83%となっております。5体中4体の損傷状態が深刻となっている事から、ここからの継戦は極めて困難な状況です!』
『チッ!派手に壊しやがって!魔王風情が!』
『仕方ない!一旦本国に戻るぞ!連絡を入れておけ!!』
部下の報告を受け、ロイズ将軍は苦々しい表情で部下に帰還命令を告げる。
それと同じ頃、ライトとハクが待つ魔王城に敗走を余儀なくされた、魔王軍が到着した。
皆が無力感に苛まれ、絶望と後悔を滲ませた表情で力無く入城を開始する。
ライトとハクは魔王城のエントランスで魔王達の帰りを不安な面持ちで今か今かと待っていた。
『皆んな大丈夫かな〜』
『クゥ〜ン....』
珍しく張り詰めた表情で城を出た魔王達に、只事ではないと不安を感じていた俺とハクは、ただ皆んなが無事に帰還する事を願っていた....
するとエントランスの扉の外から人の気配を感じ始める....
『帰ってきたっ!!』
『ワンッ!ワンッ!』
次の瞬間、扉が開きホイズを先頭に次々と魔王軍の面々がエントランスに入ってくる。
ホイズの姿を見つけた俺とハクは、魔王ガルスが戻らない事など知る由もなく、大急ぎでホイズのところに駆け出す。
『ホイズ〜!』
『ワオォ〜ン!』
『ラ、ライト様....』
駆け寄ってくる俺とハクの姿を見て、何故かホイズは肩を落とし目線を床に向ける。
『ホイズ....』
悔しそうに震えるホイズを見て、俺は何かが起きている事を察するが、今はどうしても気になっている事を聞かずにはいられない。
それは、いつもなら皆の中心で万能感を発しながら優しく笑う魔王ガルスの姿が、何故この場には無いのかという事だ。
『ホイズ....父ちゃんは....?』
『........』
『グッ、グフゥゥゥッ〜....』
俺の問いを耳にした瞬間、無言の後ホイズは肩を振るわせ、人目も憚らずその場で泣き崩れた....
それはホイズだけではなく、周りにいるベイルやアローラ、魔王軍の皆も同様だった。
俺は只訳もわからず、その場に立ち尽くすしか出来なかった....




