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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~良いとこどりで最強に育って無双します~  作者: ララ
第一章 転生…そして幼少期編

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第8話 魔王のいない帰還

初めての作品で、手探りで執筆しておりますので内容において、度々改変などがされております。

ご不便をお掛け致しますが、温かい目でご覧頂けると幸いです。

巨大な剣に胸を貫かれた魔王ガルス。


その視線の先には、白銀のゴーレムが立っていた。

アビスフレアによって焼かれた胸部装甲は大きく破損し、その奥に見える人影。


ガルスは震える手をゆっくりと伸ばした。


「ふっ……そんなところにいたのか……アレン……」


ガルスの視線の先には、夥しい数のケーブルに繋がれた一人の男が眠るように目を閉じていた。


かつて世界を救った勇者。

そして――ライトの実の父。

アレンだった。


「そんなところで何やってんだよ……」


ガルスは苦しげに笑う。

口から溢れた血が顎を伝い落ちた。


「お前の息子、大きくなったんだぜ……」

「毎日必死に頑張ってよ……」

「お前にそっくりなくらい真っ直ぐで、馬鹿みたいに努力家だ……」


震える手がアレンの頬に触れる。


「だからよ……」

「そんなところに閉じこもってねぇで……会いに行ってやってくれよ……」

「アイツはずっと待ってるんだぞ……」


しかし――返事はない。

アレンは微動だにしなかった。


「……アレン」


沈黙。


「おい……」


沈黙。


「アレェェェェェンッ!!」


ガルスの絶叫が戦場に響く。

血反吐を吐きながら、何度も親友の名を呼ぶ。

だが反応はない。


そして気付けば、アビスフレアを突破した残り四体のゴーレムがガルスを取り囲んでいた。


その時だった。


「魔王様ッ!!」

「ガルス様!!」

「お下がりくださいませ!!」


ベイル。

ホイズ。

アローラ。

三人が駆け寄ろうとする。


だが――。


「来るなッ!!」


怒号が飛んだ。

三人の足が止まる。


「お前達は直ちに城へ戻れ!」


ガルスは荒い息を吐きながら命じた。


「守りを固めろ……」

「ライトを絶対に渡すな……!」


その言葉に三人の表情が凍り付く。


「城には結界がある……」

「結界がある限り、奴らは簡単には侵入できん……」


ガルスは白銀のゴーレムを見つめる。


「……例えアレンでもな」


「しかしっ!!」


三人はなお食い下がろうとする。


「くどいッ!!」


ガルスの怒声が響いた。

それは魔王としての命令だった。


絶対の命令。


「頼む……」


だが次に続いた声は、どこまでも優しかった。


「俺は親友と少し遊んでから帰る」

「先に帰っていてくれ」


そして遠く離れた魔王城へ視線を向ける。


「ライトが待っているだろ?」

「……あいつを寂しがらせないでくれ…頼む」


その言葉に三人は唇を噛み締める。

今、自分達がすべきことは何か。

ガルスは最後までそれを教えてくれていた。


「……承知いたしました」

「……必ず」

「お待ちしております」


三人は震える声で答える。

握り締めた拳から血が滲む。

瞳には涙が浮かんでいた。

それでも振り返らない。

振り返れば命令を破ってしまうからだ。


そうして魔王軍は撤退を開始した。

敗北ではない。

生き残るための退却だった。

 

それを見たゴーレム達が追撃を開始しようと動く。


しかし――


ガルスは胸を貫いていた剣を力任せに引き抜いた。

鮮血が噴き出す。

それでも倒れない。


周囲には無数の魔法陣が展開される。

まるで空そのものを埋め尽くすように。


「久しぶりに遊んでくれねぇか……」


大量の血を流しながらそれでも不敵に笑うガルス。


「アレン」


魔王は立つ。

親友の前に。

仲間達を逃がすために。


そして――

最後の戦いが始まった。

 

その後の戦場は地獄だった。


眩い閃光が昼夜の境界を消し去る。

轟音が空を裂き。

衝撃波が大地を砕く。

空気そのものが震え続けた。


遠く離れた者ですら、その余波に身を竦ませるほどだった。


どれほどの時間が過ぎただろうか。

やがて――戦場は静寂に包まれた。

 

王国軍本陣。

天幕の中へ一人の兵士が飛び込んでくる。


「ロイズ将軍!ご報告いたします!!」


ロイズ将軍と呼ばれた指揮官風の男が顔を上げた。


「魔王ガルスの捕縛に成功いたしました!!」


その言葉にロイズは口元を吊り上げる。


兵士の後方には拘束されたガルスの姿があった。

全身傷だらけ。

魔力は枯渇。

意識も朦朧としている。

それでもなお生きていた。


「まだ息があるのか」


ロイズは虫でも見るような目を向ける。


「この場で首を刎ねてやりたいところだが……」

「勇者同様、魔導兵器の素材になるやもしれん」


そう、冷酷に言い放つ。


「本国へ移送しろ」

「厳重にな」


「はっ!」

 

さらに兵士が報告を続ける。


「魔導兵器の損傷状況をご報告します!」

「勇者機、損傷率六十五パーセント!」

「聖女機、七十二パーセント!」

「剣聖機、七十七パーセント!」

「魔導王機、七十一パーセント!」

「盾王機、八十三パーセント!」

「五機中四機が深刻な損傷状態です!」


ロイズは舌打ちした。


「チッ……」

「派手に壊しやがって」

「魔王風情が……!」


だが最低限の目的は達した。


「一旦撤退だ」

「本国へ連絡しろ」


「はっ!」

 

同じ頃――

魔王城。


敗走した魔王軍が帰還していた。

皆、俯いている。

誰一人として声を発しない。


絶望

後悔

無力感


それらを背負いながら城門をくぐっていた。

 

エントランスではライトとハクが待っていた。


「みんな大丈夫かな……」

「クゥーン……」


ガルス達が出発した時の表情が頭から離れない。

胸騒ぎがしていた。


すると――

城門の向こうから気配を感じる。


「帰ってきた!」

「ワンッ! ワンッ!」


二人は顔を輝かせた。

 

扉が開く。

先頭にいたのはホイズだった。


ライトとハクは嬉しそうに駆け出す。


「ホイズー!」

「ワオォーン!」


だが


「……ライト様」


ホイズは顔を上げられなかった。

肩を震わせている。

 

ライトの胸がざわつく。

嫌な予感がした。

そして気付く。

そこにいるはずの人がいない。

いつも皆の中心にいる人。


誰より強く

誰より優しく

絶対に負けないと思っていた人

 

「ホイズ……」


声が震える。


「父ちゃんは……?」

 

沈黙が辺りを包む

 

ホイズの肩が大きく震えた。

そして――


「うっ……」

「ぐっ……うぅぅぅ……」


大柄な身体が崩れ落ちる。

人目も憚らず魔王親衛隊長のオーガキングはその場で泣き崩れた。

 

ベイルも

アローラも

そして魔王軍の兵士達も。

誰もが涙を流していた。

 

ライトは動けなかった。

何が起きたのか分からない。

理解したくない。


けれど――

胸の奥だけが、どうしようもなく冷えていく。

 

父ちゃんに。

何かがあった。

それだけは、痛いほど伝わってきた。

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