第9話 光と闇の力
初めての作品で、手探りで執筆しておりますので内容において、度々改変などがされております。
ご不便をお掛け致しますが、温かい目でご覧頂けると幸いです。
悲痛な表情のまま泣き崩れるホイズ。
周囲を見渡せば、そこにいる誰もが敗北の空気をまとっていた。
絶望
後悔
喪失感
まるで魂を削り取られたかのような表情で、誰もがうつむいている。
――まさか。
――父ちゃんに何かあったのか……?
嫌な予感が胸を締め付けた。
だが、地面を見つめたまま肩を震わせるホイズからは、今すぐ事情を聞き出せそうにない。
俺は焦る気持ちを抑えながら周囲を見回した。
すると少し離れた場所で、こちらを見つめているアローラと目が合う。
その瞳は真っ赤に腫れ、今にも涙が溢れそうだった。
俺と目が合うと、アローラは意を決したように歩み寄ってくる。
「……ライト様。お伝えしなければならないことがございますわ」
震える声だった。
気丈に振る舞おうとしているが、その身体は小刻みに震えている。
今にも感情が決壊しそうなのが分かった。
「アローラ? どうしたの? 何かあった?」
俺が問いかけた瞬間。
アローラの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
「……どうか、お気を確かにお聞きください」
そう言って、一度唇を噛む。
そして――
「お父様……魔王様は、お戻りになられませんわ」
「……え?」
理解できなかった。
言葉の意味が頭に入ってこない。
「父ちゃんが……戻らない?」
思考が止まる。
何を言われたのか分からない。
そんな俺に、アローラは震える声で戦場で起きた出来事を語り始めた。
アストリア王国軍の侵攻。
予想を遥かに超える強敵の出現。
深手を負った魔王ガルス。
そして――
仲間たちを逃がすため、一人戦場に残ったこと。
俺たちを守るために。
命を懸けて。
「そんな……」
信じられなかった。
いや、信じたくなかった。
「どういうことだよッ!!」
気付けば叫んでいた。
「なんでアストリア王国が攻めてくるんだよ!!」
俺が知る魔王ガルスは侵略者ではない。
世界征服を企む暴君でもない。
この十年間、誰よりも民を想い、誰よりも優しかった。
だからこそ理解できない。
「父ちゃんが何をしたっていうんだよ!」
怒りが込み上げる。
「ただ魔王だから!?魔族だから!?魔物だから討伐されるっていうのか!!」
理不尽だった。
あまりにも。
前世でも戦争のニュースを見たことはある。
遠い国で起きる争い。
その時の俺はどこか他人事だった。
自分には関係ない。
そんな風に思っていた。
だが今は違う。
今、自分は侵略された側だ。
平和な日常を奪われる側だ。
そして――
大切な家族を奪われた側だ。
「許さない……」
怒りが全身を駆け巡る。
「俺が父ちゃんを助ける」
その瞬間だった。
ブワッ――!!
俺の身体から白銀と漆黒のオーラが溢れ出した。
聖なる輝き
深淵の闇
本来なら決して相容れない二つの力が、同時に俺の身体を包み込む。
その光景を見たアローラは息を呑んだ。
そして、かつて魔王ガルスが口にした言葉が脳裏をよぎる。
――ライトは、この世界の希望だ。
光にも闇にも、そのどちらにも属する唯一の存在。
その言葉の意味を、今初めて理解した気がした。
しかし俺はそんなことを気にする余裕などなかった。
「行くぞ、ハク!」
「ワォォン!!」
俺はハクと共に駆け出す。
父ちゃんを助ける、その一心で。
だが――
「いけませんわ!!」
アローラが慌てて立ちはだかった。
「ライト様!」
その声は悲鳴に近かった。
「貴方様は魔王様の希望です!かけがえのない存在なのです!その貴方様を死地へ向かわせる訳には参りませんわ!」
「どけッ!! アローラ!!」
俺は止まらない。
絶対に。
絶対に父ちゃんを死なせない。
そんな緊迫した空気の中。
これまで沈黙していたベイルが静かに口を開いた。
「敵の目的は――ライト様。貴方様です」
「――っ!?」
全身が凍りつく。
敵の目的が……俺?
意味が分からなかった。
怒りと混乱が一気に押し寄せ、思わず足が止まる。
するとベイルは真っ直ぐ俺を見据えた。
その瞳には決意が宿っていた。
「もはや事態は隠し通せる段階ではありません」
静かな声だった。
だが、その一言には重みがあった。
「今こそ真実をお話しいたします」
ベイルは覚悟を決めたようにそう告げた。
そして――
十年間隠され続けてきた真実が、ついに語られようとしていた。




