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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第88話 シルヴァリス使節団

翌日――

帝都アルセリア。


帝国中央大通り。


『おぉ……』


『エルフだ……』


『本当に来たぞ……』


大通りは朝から人で埋め尽くされていた。


普段は滅多に国を出ない。


神樹の国シルヴァリス。


その外交使節団が帝国を訪れるなど、数十年ぶりの出来事だった。


先頭を進むのは純白の大型馬車。


側面には、神樹を象った黄金の紋章。


その周囲を、翡翠色の鎧に身を包んだエルフ騎士達が護衛している。


一糸乱れぬ行軍。


誰一人として視線を逸らさない。


長命種ならではの洗練された所作に、帝国民は思わず息を呑んだ。


『綺麗……』


『まるで絵画だ……』


その馬車の窓から。


一人の少女が静かに街並みを眺めていた。


リリアナ・シルヴェル。


神樹の国第二王女。


翠玉のような瞳は、帝都の景色を映しながらも、その奥では別のものを探しているようだった。


『ここが……帝国』


小さく呟く。


隣に控える老執事が頭を下げる。


『姫様。本日中に皇帝陛下への謁見、その後は学院長ルミナス様との面会が予定されております』


『ルミナス叔母様と……』


その言葉に、リリアナの表情が少しだけ柔らかくなった。


『エリオス叔父様にも、お会いできるのですね』


『はい』


『十年以上ぶりでしょうか』


『ええ』


幼い頃。


何度も遊んでもらった記憶がある。


ルミナス。


エリオス。


二人ともシルヴァリス王家に連なる血族。


現在は帝国学院で教鞭を執っているが、神樹の国では今なお尊敬される存在だった。


『懐かしいですね』


リリアナは小さく微笑んだ。


しかし。


その笑みはすぐ消える。


『ですが』


『遊びに来た訳ではありません』


『……はい』


『姉様を必ず見つけます』


その声には王女ではなく、一人の妹としての決意が宿っていた。



帝国皇城。


謁見の間。


『神樹の国シルヴァリス第二王女』


『リリアナ・シルヴェル様、ご入場!!』


重厚な扉がゆっくり開く。


翡翠色のドレスを纏った少女が、一歩ずつ歩みを進める。


その立ち居振る舞いは気品に満ちていた。


皇帝も静かに頷く。


『遠路よく来られた』


『歓迎しよう』


『温かいお言葉、感謝いたします』


リリアナは優雅に一礼した。


形式的な挨拶が続く。


だが。


誰もが理解していた。


今回の訪問は親善ではない。


目的は一つ。


行方不明となった英雄。


アイリシア・シルヴェルの捜索だった。


『帝国としても全面的に協力しよう』


皇帝が言う。


『感謝いたします』


『ですが』


リリアナの瞳が静かに揺れた。


『もし……姉が誘拐されたのであれば』


謁見の間の空気が張り詰める。


『私は必ず、その者を許しません』


穏やかな口調。


だが。


その一言に秘められた怒りは、本物だった。



その後。


帝国学院。


学院長室。


コンコン。


『入りなさい』


扉が開く。


『ご無沙汰しております』


その声を聞いた瞬間。


ルミナスが立ち上がった。


『……リリアナ』


『叔母様』


次の瞬間。


リリアナは堅苦しい王女の仮面を脱ぎ捨てるように駆け寄った。


『ルミナス叔母様!』


『ふふっ』


ルミナスは苦笑しながら抱き留める。


『相変わらず甘えん坊だね』


『もう子供ではありません』


『そう言いながら抱きついてるけど?』


『……あ』


顔を真っ赤にするリリアナ。


そこへ。


『おやおや』


エリオスも部屋へ入ってきた。


『リリアナ』


『エリオス叔父様!』


『久しぶりだね』


『はい……』


懐かしい再会。


だが。


三人とも笑顔は長く続かなかった。


『アイリシアの件だね』


ルミナスが静かに言う。


リリアナは頷く。


『……はい』


『神樹様の導きで』


『姉様はまだ生きています』


その一言で部屋の空気が変わる。


ルミナスとエリオスは視線を交わした。


『やはり……』


『生きているか』


リリアナは拳を握る。


『ですが』


『場所までは分かりません』


『感じるのは』


『風のレガリアの波動だけです』


ルミナスは静かに目を閉じた。


そして。


一人の少年の顔を思い浮かべる。


ライト・グランフェル。


“あの子なら”


そう思った。


理由は分からない。


だが学院襲撃の日から。


何か大きな運命が、ライトを中心に動き始めている気がしてならなかった。


『リリアナ』


『はい?』


『少しの間、学院に通ってみるかい?』


ルミナスは静かに微笑む。


『近いうちに、一人紹介したい子がいるんだ』


『とても面白い子だよ』


『?』


リリアナは首を傾げる。


まだ知らない。


その”面白い子”が、自分の運命だけでなく、世界そのものの運命を大きく変える存在になることを。


そして――


その頃、当のライトは。


『マキナ』


『ハイ』


『宿題手伝って』


『フセイハヨクアリマセン』


『正論で殴るのやめてくれ……』


世界の中心人物とは思えないほど、今日も平和な学園生活を送っていた。

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