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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第86話 神樹の国

学院襲撃事件から三日後――


帝都アルセリア。


帝国皇城。



『……で』


『なんで俺が呼ばれてるんですかね』


ライトは豪華すぎる会議室で頭を抱えていた。


長机の向こうには。


帝国宰相。


近衛騎士団長。


軍務卿。


学院長ルミナス。


副学院長エリオス。


そして――


皇帝陛下本人。


そうそうたる面々である。


帰りたい。


今すぐ帰りたい。


『ライト君』


副学院長エリオスが微笑む。


嫌な予感しかしない。


『今回の件について話し合っていたのだけども…』


『俺、被害者側なんですけど』


『学院施設損壊の関係者でもある』


『マキナ!!』


『ハイ』


なぜか部屋の隅に立っていた。

いつの間に入った。


『ワタシハワルクアリマセン』


『お前も壊してただろうが!』


『ミナサマヲマモリマシタ』


『そこは本当にありがとう』


否定できなかった。


結果的にフィオレリア達を守ったのは事実だ。



『本題に入ろう』


皇帝が口を開いた。

空気が変わる。


『今回の事件で判明したことがある』


全員の表情が引き締まる。


『裏で王国が動いている』


誰も否定しない。


ルシェイン皇子の煽動。


学院襲撃。


工作員レイヴン。


未知のゴーレム兵器。


全てが偶然とは思えなかった。


『そして』


皇帝の視線がライトへ向く。


『奴らは魔王国の不信を煽っておる』


『……でしょうね』


驚きはなかった。


二度も魔王国へ侵攻している。

王国が魔王国を目の敵にしているのは明らか。

その魔王国が帝国と手を組むのは面白くはないだろう。


むしろ今更だった。


『理由は分からん』


皇帝は腕を組む。


『だが王国は執拗だ』


『今回の学院襲撃』


『次も来るだろう』


『面倒ですねぇ』


心底そう思った。


平穏な学園生活を送りたいだけなのに。


なぜか世界が放っておいてくれない。



その時だった。


コンコン。


会議室の扉が叩かれる。


『失礼します』


入ってきたのは情報部の将校だった。


表情が硬い。


『陛下』


『何だ』


『緊急報告です』


将校は一枚の書類を差し出した。


皇帝が目を通す。


そして。


僅かに眉を動かした。


『ほう』


その反応に全員が注目する。


『どうしたんです?』


ライトが尋ねる。


皇帝は書類を机へ置いた。


『エルフ国から正式な外交使節団が来る』


『エルフ国?』


思わず首を傾げた。


神樹の国シルヴァリス。


大陸でも屈指の閉鎖国家だ。


滅多に他国へ姿を見せない。


『目的は?』


エリオスが問う。


将校が答えた。


『行方不明となった英雄魔導士の捜索です』


会議室が静まり返る。


『英雄魔導士?』


『アイリシア・シルヴェル』


その名前を聞いた瞬間。


なぜか。


胸の奥がざわついた。


知らない名前。

知るはずのない人物。


なのに。


まるで何かに呼ばれたような感覚。


『……?』


ライトは小さく眉をひそめる。


だが誰も気付かなかった。



同時刻――


神樹の国シルヴァリス。


世界樹の麓。


巨大な神殿。


そこには一人の少女が立っていた。


エメラルド色の髪。


透き通るような白い肌。


長い耳。


若く見えるが、その瞳には悠久の時が宿っている。


彼女は静かに祭壇へ手を置いた。


次の瞬間。


祭壇に刻まれた古代文字が淡く輝く。


『……見つけた』


少女が呟く。


その声は震えていた。


『風の反応』


『アイリシア姉様……』


数年。


いや。


もっと長い年月探し続けた。


そして今。


微かだが確かに感じる。


風のレガリアの波動。


生きている。


まだ生きている。


『準備を』


少女が振り返る。


背後には数十人のエルフ騎士。


『帝国へ向かいます』


騎士達が息を呑む。


『姫様』


『構いません』


少女は断言した。


『もしアイリシア姉様が本当に生きているなら』


瞳に決意が宿る。


『私は必ず連れ戻します』


神樹の国第二王女。


リリアナ・シルヴェル。


彼女の旅立ちが決まった瞬間だった。



さらにその頃――


アストリア王国。


地下研究施設。


眠るアイリシアの指先が。


ぴくりと動いた。


『……っ!?』


研究員が目を見開く。


『反応です!』


警報が鳴り響く。


アイリシアの閉じた瞼の奥で。


風が吹いていた。


まるで。


誰かを探すように。


そして。


その唇が微かに動く。


『……ひ……か……り……』


誰にも聞き取れないほど小さな声。


だが確かに。


風のレガリアは目覚め始めていた。


そして運命の歯車はさらに加速する。


王国が求める七柱のレガリア。


その一人が目覚め。


エルフ国が動き出し。


帝国にも新たな波乱が訪れようとしていた。


だが当の本人は――


『マキナ』


『ハイ』


『体育館の修理代っていくらだと思う?』


『ケイサンチュウ』


『計算しなくていい』


『オソラクキョガクデス』


『聞かなきゃ良かった!!』


世界の命運など知らぬまま。


ライトは今日も平和に頭を抱えていた。


――だが、その平和はもう長く続かない。


次なる戦いは。


神樹の国シルヴァリス。

そして風のレガリア。


アイリシア・シルヴェルを巡る戦いへと繋がっていくのだった。

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