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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第84話 残された火種

俺は学院の廊下を全力で駆け抜けていた。


嫌な予感がする時というのは、大抵当たる。

そして今の予感は、間違いなく最悪の部類だった。


『間に合えよ……!』


窓の外では凄まじい爆発音が鳴り響いている。


ドォォォォン!!


恐らくマキナと翡翠の特殊個体がやり合っているのだろう。


正直、そっちも気になる。


めちゃくちゃ気になる。

なんなら見たい。


だが今はフィオレリアさんが優先だ。


あっちはマキナに任せるしかない。



避難区域――学院体育館。


そこは既に戦場になっていた。


ガギィィィン!!


金属音が響く。


『ハク!』


『ライト!』


駆け込んだ俺の目に飛び込んできたのは、レイヴンと斬り結ぶハクの姿だった。


床には深い切り傷が何本も刻まれている。


普通の人間なら数合で終わるはずだ。


だがレイヴンは違った。


速い。


異常なほどに。


『ほう』


レイヴンが俺を見る。


『来ましたか』


『随分と好き勝手やってくれたな』


『仕事ですので』


その口調には感情がない。


本当に仕事なのだろう。


だからこそ厄介だ。

信念で動く人間よりも、利益で動く人間の方が止めづらい。


『フィオレリアさん!』


『ライト様!』


フィオレリアとレオナはヒメルに守られていた。


無事だ。

とりあえず一安心。


『怪我は!?』


『ありません!』


良かった。

本当に良かった。



しかし安心している暇はなかった。


レイヴンが笑ったからだ。


『優先順位を間違えていますよ』


『何?』


その瞬間。


ドォォォォォン!!


外から爆発音。


さらに続けて――


ガシャァァァァン!!


体育館の壁が吹き飛んだ。


『なっ!?』


瓦礫が舞う。


悲鳴が上がる。


そして。


煙の中から現れたのは――


翡翠色の腕だった。


『嘘だろ……』


俺の顔が引き攣る。


そこには半壊状態の翡翠の特殊個体がいた。


頭部は半分消し飛んでいる。


胸部も抉れている。


片腕も無い。


だが。


動いていた。


『マキナは何してんだ!?』


思わず叫ぶ。


すると。


『ゴシュジンサマ』


インカムから声。


妙に落ち着いている。


『オイコミチュウデス』


『追い込み中!?』


次の瞬間。


体育館の天井を突き破って何かが降ってきた。


ドガァァァァァン!!


着地と同時に床が陥没する。


銀髪。


完全武装。


マキナだった。


『オマタセイタシマシタ』


『いや待ってない待ってない!なんで体育館に突っ込んでくるんだよ!?』


『ターゲットガニゲマシタ』


『だからって建物を壊しながら追って来るな!!』



翡翠の特殊個体が赤い瞳を光らせる。


マキナも青い瞳を発光させる。


バチバチと火花が散る。


完全にライバル同士の顔合わせだった。


『マキナ』


『ハイ』


『ここで暴れるな』


『ムズカシイヨウキュウデス』


『頑張れ』


『ゼンショシマス』


本当に頑張ってほしい。


切実に。



その時だった。


レイヴンが静かに後退した。


『さて』


『逃がすか!』


俺が銃を向ける。


だがレイヴンは笑った。


『勘違いしないで下さい』


『?』


『私は既に目的を達成しています』


嫌な予感。


レイヴンは続ける。


『学院への被害』


『皇帝派と皇子派の対立激化』


『魔王国製兵器による騒乱』


『皇女暗殺未遂』


一つ一つ数えるように言う。


『十分な成果です』


『……』


『帝国はこれから内部で争い始めるでしょう』


『そして、こちらにいらっしゃる人々はこう言うのです….魔王国の陰謀だ….と』


その言葉にフィオレリアの表情が曇る。


レイヴンはそこを突いた。


最初から。


最初からそれが狙いだったのだ。


皇族を殺すことではない。


帝国内部を疑心暗鬼にすること。


そして帝国と魔王国の同盟を破綻させること。


『皆さん!私は魔王国の使者!今回はご挨拶に伺ったまで。また近いうちにお会いしましょう!』


レイヴンは周囲の生徒、教師、護衛の騎士達に聞こえるように大声で叫ぶ。


『クソッ!』


『それでは失礼します』


レイヴンの足元に魔法陣が広がる。


転移魔法。


『逃げる気か!』


俺が引き金を引こうとした瞬間だった。


『ゴシュジンサマ』


『ん!?』


『オマカセクダサイ』


マキナの背中から何かが射出された。


シュバァァァァッ!!


一本のワイヤー。


いや違う。


杭だ。


杭付きワイヤー。


『ナニソレ!?』


また知らない武装が出てきた。


ドゴォォォォン!!


杭がレイヴンの足元へ突き刺さる。


そして。


バキィィィィン!!


展開しかけた転移魔法陣が砕け散った。


『なっ!?』


初めてレイヴンの表情が崩れた。


『転移阻害……だと!?』


『ホカクモード、カイシ』


『待て待て待て待て!?』


『そんなのもあるのかよ!』


『アリマス』


知ってた。


もう驚かない。



俺はナインティーンイレブンを向ける。


『ここで終わりだ』


その言葉に。


レイヴンは小さく息を吐いた。


そして。


笑った。


『ええ』


『通常なら』


嫌な予感。


『ですが、私は工作員です』


レイヴンが指を鳴らす。


その瞬間。

翡翠の特殊個体の全身へ魔法陣が走った。


『何だ!?』


ギギギギギギ……


翡翠の特殊個体が動く。


だが今までと違う。


戦闘態勢ではない。


俺の方を見ていない。


レイヴンの方へ向いている。


『まさか……』


『そのまさかです』


レイヴンが肩を竦めた。


『貴重な特殊個体を置いて帰るほど、王国も愚かではありません』


次の瞬間。


翡翠の特殊個体の胸部が展開。


内部から巨大な魔法陣が現れる。


『マキナ!!』


『リョウカイ』


マキナが飛び出す。


だが。


遅い。


『転送開始』


翡翠色の光がレイヴンと特殊個体を包む。


『ライト・グランフェル』


レイヴンが最後に笑う。


『次はもっと周到に準備しましょう』


『待て!!』


俺は引き金を引く。


ズガァァァァン!!


魔力弾が飛ぶ。


しかし。


光の中へ吸い込まれるだけ。


『それでは』


閃光。


そして――

二人は消えた。


残されたのは破壊された体育館と、そこに居た者たちの魔王国への疑惑だけだった。

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