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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第81話 黒幕の影

ドォォォォン!!


演習場の方角から立ち昇る黒煙。


学院中に響く警鐘。

慌ただしく駆け回る教師や騎士達。


だが――

俺の頭だけは妙に冷静だった。


「魔王国製のアサルトが盗まれた」


「見えない相手に撃たれた」


「演習場で爆発」


これらは全部繋がっている。


問題は誰が、何のためにやったかだ。


『ライト様!』


フィオレリアが駆け寄ってくる。

その後ろにはハク、ヒメル、レオナの姿もあった。


どうやら警報を聞いて集まってきたらしい。


『全員無事か?』


『うん!』


『問題ない』


『だ、大丈夫……』


三人とも怪我は無いようだ。


よし。

まずは一安心だ。


『ライト様、演習場へ向かうのですか?』


『行く』


即答だった。


『だが全員は連れていけない』


俺はハク達を見る。


『ハクとヒメルはフィオレリアさんを頼む』


『了解だ』


『任せて~』


『レオナも一緒にいてくれ』


『う、うん』


レオナが小さく頷く。


するとフィオレリアが一歩前に出た。


『私も行きます』


『ダメ』


『ですが――』


『フィオレリアさん』


俺は真面目な顔で言った。


『これは学院の事件じゃない可能性が高い』


『……』


『もし俺の予想が当たっていたら、皇女殿下を危険な場所へ連れて行く訳にはいかない』


フィオレリアが言葉を失う。


少し不満そうだったが、それ以上は言わなかった。


賢い人だ。


状況の危険さを理解している。


『必ず戻るよ』


『……分かりました』


そう言ってフィオレリアは静かに頷いた。



演習場へ向かう途中。


俺はステルスの指輪を起動した。


姿が消える。


この能力の便利さは異常だ。


これを作ったシュプールは、性格に問題がなければ紛う事なく天才なのだが。


本当に惜しい。


そんなことを考えながら黒煙の上がる演習場へ近付く。


すると。


『……いたな』


人影。


旧演習場の中央。

数人の男子生徒が集まっていた。


その中心には――


ルシェイン皇子。


そして。


教室でアサルトを睨んでいた男子生徒。

ルシェインの取り巻きの一人だ。


俺は物陰から様子を窺った。


『殿下!』


男子生徒が興奮した様子で言う。


『成功です!』


『本当に使えるのだな』


『はい!』


その手にはアサルトが握られていた。


やっぱりお前か。


俺はため息を吐く。


しかし様子がおかしい。


男子生徒の目が異様に爛々としている。

まるで何かに取り憑かれたようだ。


『これがあれば人族だけの国を――』


『黙れ』


低い声。


ルシェインだった。


男子生徒が口を閉じる。


『我々は帝国を正すだけだ』


その言葉に違和感を覚える。

食堂で見た時よりも明らかに雰囲気が違う。


まるで誰かの言葉を繰り返しているような――


洗脳…?


その時だった。


『素晴らしい』


聞き覚えのない声。


俺は咄嗟に周囲を見回した。


だが姿は見えない。


どこだ?


『誰だ!?』


ルシェインも驚いている。


すると。


木々の陰から一人の男が姿を現した。


学院の制服。


黒髪。


地味な顔立ち。


どこにでもいそうな男子生徒。


だが。


俺は知っている。


こいつだ。


レオナが言っていた「目が笑っていない男」


『君たちは本当に優秀だ』


男は笑う。

だが、やはり目が笑っていない。


冷たい。

異様なほど冷たい。


『お前は……』


ルシェインが眉をひそめる。


『誰だったか?』


『失礼しました』


男は綺麗に礼をした。


『私の名前はレイヴン』


偽名だな。


直感で分かった。


『殿下には感謝しております』


『感謝?』


『お陰で作戦が順調です』


ルシェインが怪訝な顔になる。


『作戦だと?』


男は笑った。


そして。


『帝国崩壊計画です』


空気が凍った。



ルシェインの顔色が変わる。


『何を言っている』


『そのままの意味ですよ』


男は肩を竦める。


『貴方はただの駒です。しかし良い働きをしてくれた』


『なっ――』


『人族至上主義を煽る』


『多種族との対立を激化させる』


『帝国内部を混乱させる』


一つ一つ。


楽しそうに語る。


『そのために利用させて頂きました』


『貴様ぁ!!』


ルシェインが激怒した。


だが。


男は笑うだけ。


『そう怒らないでください』


『王国は貴方を高く評価していましたよ』


王国。


その単語で全てが繋がった。


アストリア王国のスパイ。


やはり入り込んでいたか。


いつの間にか、取り巻きに混ざり、知らぬ間に煽動する。


結果、洗脳の完成だ。


ルシェインが顔を覚えていないあたり、流石の工作技術といったところか。


アサルトを盗ませ、生徒を襲わせたのは疑惑の目を魔王国に向けるため…


やられたな。


そして。


男は巨大な魔法陣を展開する。


『これで役目は終わりです』

『アナタ達には…そうですね。せっかくですから魔族にでも殺されたことにして死んでもらいましょうか』


嫌な予感。


猛烈に嫌な予感。


『おい待て!!』


俺は飛び出した。


だが。


一瞬遅かった。


ピカッ!!


巨大な魔法陣が眩い光を放つ。


次の瞬間。


ドォォォォォォン!!


凄まじい魔力の爆発が演習場を包み込んだ。


『なっ!?』


ルシェイン達が吹き飛ばされる。


俺も咄嗟に魔力障壁を展開した。


そして。


爆煙の中心から現れたものを見て――


思わず目を見開いた。


『……おいおい』


全長五メートルほど。


翡翠色をした金属の身体。


人型。


見覚えがあった。


『ゴーレム……!?』


しかも。


普通の個体じゃない。


明らかに大型。


明らかに特殊個体。


『なんで学院にいるんだよ……』


俺の呟きと同時に。


ゴーレムの目が赤く光った。


そして。


ゆっくりとこちらへ顔を向ける。


ギギギギギ……


嫌な音。


そして。

魔法陣が無数に展開された。


『――全員伏せろォォォ!!』


学院を巻き込む本当の事件が。

今まさに始まろうとしていた。

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