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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第77話 波乱の学院復帰

翌朝――。


見事にリフォームされた部屋の前で、フィオレリアは立ち尽くしていた。


『な、なんですかこの部屋は……』


フィオレリアの声が震える。


当然だろう。


昨日まで皇城の客室だった場所が、


今日には軍司令部になっているのだから。


無機質な壁面。


整然と並ぶ武器ラック。


中央には巨大なブリーフィングテーブル。


もはや皇城の一室には見えない。


『本当に申し訳ありません……』


俺は土下座する勢いで頭を下げた。


『うちのお掃除ロボットが……』


『掃除……?』


『掃除です』


『掃除で壁を張り替えるのですか!?』


『僕もそう思います』


フィオレリアは乾いた笑みを浮かべた。


怖い。


非常に怖い。


ちなみに帝国側には、マキナのことを『高性能なお掃除ロボット』と説明してある。


自立思考する機械人形で、戦闘能力まで持っているなどと言えば大騒ぎになるのは目に見えていたからだ。


「お父様への説明は……私がしておきます……」


そう言い残し、フィオレリアはふらふらと去っていく。


なんだろう。


背中から哀愁が漂っている。


「ゴシュジンサマ。ガクインノゴジュンビヲ」


横からマキナが声を掛けてきた。


昨夜、『掃除とは何か』という講義を延々と行った結果、今度はライトのスケジュール管理まで始めてしまったらしい。


便利なのか余計なお世話なのか判断に困る。


「そうだったな」


今日は学院復帰の日だ。


流石に初日から遅刻はまずい。


ライトは急いで身支度を整えると、厳重に部屋へ施錠した。


今や部屋の中には国家機密級の武器が大量に置かれている。

そのため、不用意に人を入れる訳にもいかないからだ。



城門前には既に皆が集まっていた。


「ライト、おはよう!」


「ご主人様~!おはよう~!」


元気いっぱいのハクとヒメル。


そして――


「ライトさまぁ~。昨晩はライト様に触れていただいた場所が疼いて疼いて~」


朝からシュプールである。


胃もたれしそうだった。


「誤解を招く言い方はやめろ」


「でも本当ですし~」


「移動中に抱えてただけだからな?」


頼むから他人の前では大人しくしていてくれ。


そう願った瞬間だった。


「皆様、おはようございます」


フィオレリアが姿を現した。


先程までの青ざめた表情は消えている。


その代わり、どこか緊張しているようにも見えた。


謹慎明け初日の登校。


不安もあるのだろう。


「おはようございます。フィオレリア皇女殿下」


ライトがそう挨拶すると、フィオレリアは少しだけ頬を膨らませた。


「ライト様」


「はい?」


「以前もお願いしましたよね?」


嫌な予感がする。


「皇女殿下という呼び方です」


来た。


間違いなく来た。


ラノベで何度も見たあの展開だ。

以前は軽やかに躱したはずだが、まさかのおかわりか。


「私は皇女である前に、ライト様のクラスメイトです」


フィオレリアは真っ直ぐライトを見つめる。


逃げ場がない。


「だから……フィオレリアと呼んでください」


やっぱり来たーーー!!


ライトの脳内で再度、警報が鳴り響く。


無理だ。


精神年齢四十四歳のおっさんには刺激が強すぎる。


「えっと……」


「フィオレリア」


「いや……」


「フィオレリアです」


圧が強い。


皇女なのに圧が強い。


「い、いきなり呼び捨てはちょっと恥ずかしいかな……」


フィオレリアの表情が少し曇る。


罪悪感が凄い。


「じゃあ……フィオレリアさんでどうかな?」


その瞬間だった。


花が咲いたように表情が明るくなる。


分かりやすすぎる。


「はい!」


嬉しそうだった。


本当に嬉しそうだった。


耳までほんのり赤い。


その様子を見ていたハクとヒメルがニヤニヤしている。


やめて欲しい。


見ないで欲しい。


恥ずかしい。


「でも、いつかは呼び捨てでお願いしますね?」


「ぜ、善処します……」


ライトは乾いた笑みを浮かべた。


穴があったら入りたい。


今ならマントルまで掘れる気がする。



そんな甘酸っぱいやり取りを経て、一行は学院へと向かった。


道中ではシュプールの下ネタが何度も炸裂し、その度にフィオレリアが困惑していたが、逆に緊張はほぐれたようだった。


やがて学院へ到着すると、一行はそのまま教員室へ向かう。


謹慎明けの挨拶と、新任教師となるシュプールの紹介のためだ。


コンコンコン。


「失礼します」


教員室へ足を踏み入れた瞬間、一人の男が近づいてくる。


ラザール教務監査官だった。


その顔には露骨な不快感が浮かんでいる。


「ほう。性懲りもなく戻って来たか」


開口一番それだった。


「だから私は反対だったのだ。魔族などを学院へ入れることにはな」


教員室の空気が一気に重くなる。


「問題を起こしたことは謝罪します」


ライトは静かに答えた。


「ですが、それと魔族であることは別問題では?」


「別問題だと?」


ラザールは鼻で笑う。


「魔族だから暴力事件を起こしたのだろう」


ピクリ。


ライトのこめかみに青筋が浮かんだ。


「それは偏見ではありませんか?」


「偏見ではない。事実だ」


その瞬間――


「やめないか!」


鋭い怒声が教員室に響いた。


エリオス副学院長だった。


「ラザール。君の発言は度を越している」


「私は事実を述べているだけだ」


「違うな」


エリオスの視線が鋭くなる。


「それはただの差別だ」


ラザールは舌打ちした。


「チッ……」


そして逃げるように背を向ける。


「だが覚えておけ。次に問題を起こせば見逃さんぞ」


そう言い残して教員室を去っていった。


残された空気は重い。


「すまないね」


エリオスが頭を下げた。


「いえ」


ライトは首を振る。


「それよりも、こちらが魔王国から来た新任教師です」


「おお、聞いているよ」


エリオスの視線がシュプールへ向く。


嫌な予感しかしない。


「シュプール、ご挨拶を」


「はぁ~い」


シュプールが一歩前へ出る。


満面の笑み。


そして――


「魔王国から参りましたシュプールです~!」


ここまでは良かった。


問題はここからだった。


『生徒の皆さんと熱いモノ作りをしたいと思います~』


『おぉ』


『体が火照るようなヤツを~』


『お、おぉ?』


『毎日朝から晩まで激しく~』


『待て』


ライトが即座に止める。


しかし遅かった。


「皆さんにも気持ちよくなっていただけるよう頑張りますので~」


完全にアウトだった。


教員室が凍る。


「…………」


「…………」


「…………」


エリオスの笑顔が引きつっていた。


ライトは天を仰ぐ。


終わった。


色々終わった。


「……あ、ああ。こちらこそよろしく頼むよ」


エリオスは頑張って返事をした。


その表情には苦労人の哀愁が滲んでいる。


不安しかない。


だが帝国の技術発展のためだ。


進歩には犠牲が付き物なのである。


そう自分に言い聞かせながら、ライトは静かに教員室を後にするのだった。

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