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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第75話 王国の思惑

人通りの絶えた裏路地。


月明かりさえ届かぬ暗闇の中で、二つの人影が向かい合っていた。


「――ルシェイン皇子の取り込みは完了しました」


低く抑えた声が闇に溶ける。


「そうか」


応じた男は僅かに口元を歪めた。


「ならば引き続き、ルシェインを利用して帝国を内部から瓦解させろ」


「承知しました」


「それと、多種族排斥派の人間も集めろ」


一瞬、部下の男が眉をひそめる。


「排斥派まで利用するのですか?」


「ああ」


男は静かに頷いた。


「奴らもまた火種だ。ルシェインを旗頭にし、皇帝派と対立する勢力へ育て上げろ」


帝国を外から崩す必要はない。


内部から腐らせればいい。


その方が遥かに効率的だ。


「魔王国については?」


「現状は放置だ」


男は即答した。


「下手に刺激すれば面倒になる。ただし――」


そこで目を細める。


「ルシェインを使え。もし魔王国が手を出すようなら同盟解消に追い込め」


「承知しました」


話は終わった。


一方の人影は闇へ溶けるように消える。


そして残された男は――


「悪い悪い!待たせた!」


何事もなかったかのように路地裏から飛び出した。


「お前またトイレ長ぇんだよ!」


「だから家で済ませて来いって!」


笑いながら歩く少年達。


その中心にいるのは、ルシェイン皇子の取り巻き達だった。


誰も気付いていない。


彼らの中に一人だけ。


アストリア王国の間者が紛れ込んでいることを。


帝国を蝕む闇は、既に静かに動き始めていた。


◇◇◇


「ふぅ~……やっと着いたな」


三日間の空の旅を終え、ライト達は帝国へ帰還した。


途中、抱えて飛んでいたシュプールが、


「あぁん♡ もっと強く抱いてくださ~い♡」


などと意味不明な発言を繰り返したため、本気で海へ投げ捨てようかと思ったが、それ以外は概ね平和な旅路だった。


皇城へ戻るなり、ライトは皆へ声を掛ける。


「明日から学院に復帰するぞ」


「はーい!」


「了解だ」


「承知致しました~」


シュプールの帝国入りについては既に話を通してある。


キジュウ開発者の来訪ということで帝国側も大歓迎らしい。


部屋まで用意されていた。


相変わらず待遇が良すぎて少し申し訳なくなる。


一方で気掛かりもあった。


ハクとヒメルだ。


二人はクラスメイトとの騒動によって謹慎処分を受けている。


学院へ戻った時、以前のような居場所があるとは限らない。


だが当人達は迷わなかった。


『行く』


『行くよ~』


だからライトも尊重することにした。


どうしても無理なら学院を辞めるという選択肢もある。


まずはやってみればいい。



そして夜。


自室に戻ったライトは一人天井を見上げていた。


暇だ。


圧倒的に暇である。


「……よし」


ニヤリ。


口元が歪む。


「新兵器の試運転に行こう」


理由はそれだけだった。



国境付近では今日も戦闘が続いている。


帝国軍と王国軍。


終わらぬ消耗戦。


試射にはちょうどいい。


ライトはショルダーホルスターへ視線を落とした。


収まっているのは愛銃。


ナインティーンイレブン。


男のロマンの結晶である。


「へへへ……」


自然と笑みが漏れる。


すると背後から声がした。


「ゴシュジンサマ」


「うおっ!?」


振り返る。


そこにいたのはマキナだった。


完全に存在を忘れていた。


「そうだった、お前連れてきてたんだ」


「ゴメイレイヲ」


「あぁ…そうだな、部屋の掃除頼む」


「カシコマリマシタ」


優秀である。


実に優秀だ。


ハクよりも言葉が通じる。



そしてライトは戦場へ向かった。


もはや戦場は恐怖の場所ではない。


新兵器の試射場である。


我ながら感覚が狂ってきたなと思うが、今更である。



到着した戦場では、


帝国軍機銃部隊と王国軍ゴーレム部隊が激しくぶつかり合っていた。


轟音。


爆発。


魔法。


絶え間ない破壊の応酬。


しかしライトの関心はそこにはない。


指輪を撫でる。


ステルス起動。


瞬間。

姿が消えた。


「よし」


空へ飛び上がる。


誰にも見えないまま。

敵軍のど真ん中へ降下する。


目の前にはゴーレムの大群。


だが誰も気付かない。


「完璧だな」


シュプールは変態だが腕だけは本物だった。


ライトは両手を動かす。


ホルスターから二丁の拳銃が抜き放たれる。


ナインティーンイレブン。



ズガァァァァァン!!!


ズガァァァァァン!!!



二条の閃光。


次の瞬間。


先頭のゴーレム部隊が消し飛んだ。


文字通り。


消し飛んだ。


「おぉ……」


ライトですら引く威力だった。


調整したんだよな?


本当に?


そんな疑問が頭をよぎる。


だが。


楽しい。


圧倒的に楽しい。



「ジャックポットだぜ!」


気分は完全にデビルハンターのダ○テさんだった。


空を飛び。


撃ち。


跳ね。


撃ち。


回り込み。


撃ち。


とにかく撃つ。


スタイリッシュに。


ゴーレムが次々と爆散する。


兵士達には何が起きているのか分からない。


敵が見えない。

だが味方だけが消えていく。

王国兵にとっては、とにかく恐怖だった。



後日。


王国軍では奇妙な噂が広まることになる。


帝国には悪魔がいる。


姿の見えない悪魔だ。


そいつは戦場に現れ、笑いながら仲間を消し飛ばしていく。


銃声だけを残して――。


王国兵達は震えながらその存在を語ったという。


その名を、


《透明の悪魔》


と。

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