第74話 久しぶりの魔竜の洞窟
魔竜の洞窟最下層。
そこに到着した瞬間――
『お前は礼儀というものを知らんのか!!』
先代魔王レイドの怒声が洞窟内に響き渡った。
『急に来たと思ったら修行を手伝えじゃと!? ガルスはどんな教育をしておるんじゃ!!』
『いや、時間がなかったもので』
『言い訳するなっ!!』
相変わらず面倒くさいガイコツ親父である。
アローラとエドは伝説の先代魔王を前に地面へ額を擦り付けんばかりに頭を下げているが、俺としては一刻も早く修行を開始したい。
礼儀も大事だが、効率も大事なのだ。
『まぁまぁ、レイドさん』
仲裁に入ったのはフランジュだった。
『暇を持て余していたのですから良いではありませんか』
『そういう問題ではない! ワシは礼儀を説いておるのじゃ!』
『以前から思っていましたが、もう少し穏やかに話せませんか?』
『あぁ!?』
『何か?』
バチバチバチッ――。
見えない火花が飛び散る。
その様子にアローラとエドは顔面蒼白だ。
だが俺は慣れている。
いつものことである。
そして結局――
『それで? 要するにこの二人を鍛えればいいんだろ?』
魔竜王デッカーが話をまとめてくれた。
流石である。
苦労人は違う。
『そうなんですよ! 流石デッカーさん!』
『そっちのラミアスは魔法使いだな。ならレイド担当だ』
『ふん』
『で、そっちのバードマンは俺が見る』
『ありがとうございます!』
話は一瞬でまとまった。
レイドはまだ不機嫌そうだったが、そこはデッカーに丸投げである。
『ではよろしくお願いします!』
俺はそう言うと、そそくさと退散しようとした。
しかし――
『なんだか楽しそうなことしてるじゃねぇか』
聞き慣れた声が響いた。
『俺も混ぜろよ』
『父ちゃん!?』
振り返ると、そこには魔王ガルスが立っていた。
『何してんの!?ていうかどうやってここまで来たの!?』
『どうやってって……普通に歩いてきた』
普通じゃねぇ!!
ついこの前まで瀕死だっただろうが!!
俺の心配を返して欲しい。
『元気そうで何よりだよ……』
『身体も動くようになってきたからな。リハビリ代わりに鍛える』
まぁ、勇者パーティーらしきゴーレムにボコボコにされたのは相当悔しかったのだろう。
本人がやる気なら止める理由もない。
だが――
『おうガルス!』
デッカーが立ち上がった。
『てめぇ、あの時の借り忘れてねぇからな』
『ほぅ?』
ガルスも笑う。
『もう片方の角も折られたいのか?そうしたらトカゲになるな』
『誰がトカゲになるか!!』
『あーっはっはっはっ!』
『ぶっ殺すぞ!!』
始まった。
怪獣大戦争である。
しかも伝説級。
『……』
『……』
アローラとエドが絶望した目をしていた。
うん。
俺も同じ気持ちだ。
『では後はお願いしますね~』
全てを丸投げし、俺は魔竜の洞窟を後にした。
逃げるが勝ちである。
◇
魔王城へ戻った俺は、開発局へ量産兵器の導入指示を出し、ホイズとベイルへ国防を任せることにした。
問題はアローラ不在の内政だった。
『任せて欲しいだーよ!』
ホイズが胸を張る。
……不安だ。
凄く不安だ。
だが俺だって元はただのサラリーマンだった。
ならホイズにだって出来るはず。
たぶん。
きっと。
おそらく。
『まぁ、頼んだぞ』
『任せるだーよ!』
不安しか増えなかった。
それでも今回の帰郷は実に有意義だった。
父ちゃんの回復。
魔王国の復興。
新型魔導兵器。
シュプールの帝国出向。
得るものは大きかった。
後はジューダス帝国へ戻り、学院生活と王国への対策を進めるだけである。
『よし! 準備はいいか?』
『オッケー!』
『俺も大丈夫!』
『あっ、ライト様ぁ~、そこを持たれると感じてしまいます~』
『マキナ、ジュンビカンリョウ』
シュプールがいつも通りだったので無視した。
『行くぞ!!』
『『おぉー!!』』
こうして俺たちは魔王国を後にした。
束の間の帰郷は終わり。
再びジューダス帝国へ――。
この時の俺たちはまだ知らない。
帝国で待ち受ける、新たな事件の存在を。




