第73話 次々と開発される魔導兵器達
開発局へ出向くことが決まったシュプールだったが、その後も披露される新型魔導兵器は止まらなかった。
むしろここからが本番だった。
「まだあるのか……」
俺は思わず呟く。
目の前には次々と運び込まれる魔導兵器の数々。
正直、少し怖い。
一体こいつはこの短期間でどれだけ作ったんだ。
俺が渡した設計図なんて、前世の知識を頼りにした落書きレベルだぞ?
専門知識なんて無い。
「こんなのあったらカッコいいよな」
程度の妄想を紙に描いただけだ。
それを実際に動く兵器へ仕上げてしまうシュプールは、やはり天才なのだろう。
変態だが。
天才だ。
変態だが。
大事なことなので二回言っておく。
「まずはこちらです〜」
シュプールが差し出したのは黒い長銃身の銃。
見た瞬間に分かった。
「アサルトライフルだ!」
「です〜」
「自動小銃型魔導兵器アサルト」
俺は目を輝かせた。
最高だ。
実に最高だ。
見た目は前世で好きだったHK416そのもの。
木製ストックも悪くない。
AK系の無骨さも嫌いじゃない。
だが俺はやはりこっち派だ。
男の子だから仕方ない。
「量産可能です〜」
「マジで?」
「はい〜」
「やったぜ」
思わずガッツポーズが出る。
魔王軍近代化計画が一歩前進した瞬間だった。
⸻
「続いてこちら〜」
今度は小型の飛行機だった。
翼がある。
プロペラは無い。
魔法で飛ぶらしい。
「魔法式無人航空機リーパーです〜」
「ドローンきたぁぁぁ!」
思わず叫んでしまった。
開発局員達が若干引いている。
気にしない。
男はロボットと飛行機が好きなのだ。
これは本能である。
「遠隔偵察が可能です〜」
「素晴らしい」
「人的被害もありません〜」
「もっと素晴らしい」
「爆弾を積んで特攻もできます〜」
「それは程々にな」
未来が見えた。
索敵。
偵察。
監視。
補給。
魔王軍の戦い方が大きく変わる。
これだけでもジューダス帝国の技術水準を数十年は追い越せるだろう。
⸻
そして最後。
シュプールは妙に得意げな顔をした。
嫌な予感がした。
大体この顔をするとろくな事がない。
「最後はこちらです〜」
運ばれてきたのは人型だった。
身長は百五十センチほど。
小柄な少女のような体格。
そして無機質な瞳。
「自立型魔法式人形です〜」
「ロボットじゃねぇか!!」
ついに来た。
ついに来てしまった。
男のロマン最終兵器。
ロボットである。
「ゴシュジンサマ……」
「おお……」
「ゴメイレイヲ……」
「おおお……」
俺は感動していた。
凄い。
普通に歩いている。
普通に喋っている。
なんならちょっと可愛い。
「戦闘も可能です〜」
「うん」
「家事も出来ます〜」
「うん」
「土木作業も出来ます〜」
「万能かよ」
だが問題もあった。
コアを鹵獲したゴーレムのものを流用しているため、量産が出来ないらしい。
つまり数が作れない。
残念だ。
非常に残念だ。
夢のロボット軍団計画はまだ先らしい。
今後は率先してゴーレムの鹵獲を進めよう。
「名前どうします〜?」
「名前?」
「個体識別用です〜」
なるほど。
マトンは機種名みたいなものか。
なら個体名が必要だ。
俺は少し考える。
魔法。
機械。
人形。
ロボット。
そして――
「マキナだな」
「マキナ〜」
「いい名前だろ?」
「良いと思います〜」
俺はマトンの頭を軽く撫でた。
「今日からお前はマキナだ」
「ワタシハ……マキナ……」
「そうだ」
「ゴシュジンサマ……ヨロシクオネガイシマス」
「こちらこそよろしくな」
その瞬間だった。
俺の脳裏に未来予想図が浮かぶ。
ロボット軍団。
ドローン部隊。
自動小銃装備の兵士達。
そして空を飛ぶ俺。
完璧だった。
完全に少年の夢セットである。
刀がある。
拳銃がある。
ロボットがいる。
これで興奮しない男の子がいるだろうか。
いや、いない。
断じていない。
「よし」
俺は拳を握る。
「帝国との同盟も大事だ」
「はい〜」
「アストリア王国への対策も必要だ」
「はい〜」
「勇者も気になる」
「はい〜」
「だがその前に――」
「その前に〜?」
「ロボット軍団を作ろう」
「そっちですか〜」
こうして魔王国の軍事技術は新たな段階へ進み始めた。
そして俺は知らない。
後にアストリア王国が、
『なぜ魔王軍は人型兵器と無人機を運用しているんだ!?』
と頭を抱えることになる未来を。
ちなみに今回完成した魔導兵器は、マキナを除けば既に量産体制へ移行できる段階に入っていた。
シュプールがジューダス帝国へ出向している間も生産は継続可能とのことだ。
もっとも――
開発局員たちの目の下には、見事なまでの隈が刻まれていたが。
……うん。
見なかったことにしよう。
魔王国にはまだ働き方改革という概念が存在しないのだ。
前世の価値観からすれば完全にブラック企業である。
だが一方で、今の魔王国が平時ではないことも事実だった。
王国との戦争を終えたばかり。
国力を高めなければ再び侵略を受ける。
兵士たちは命を懸けて戦い、土木部は驚異的な速度で復興を成し遂げた。
ならば自分も手を抜くわけにはいかない。
皆が頑張っているからこそ、自分も頑張る。
それだけだ。
――まぁ、そのうち休暇くらいは与えよう。
希望者がいれば旅行にでも連れて行くか。
この世界にリゾート地があるのか知らないが。
そんな平和な未来を実現するためにも、まずはアストリア王国という脅威を排除しなければならない。
ジューダス帝国との同盟。
魔王国の軍備増強。
そして未だ姿を見せない勇者パーティー。
やるべきことは山積みだった。
特に気掛かりなのは勇者たちである。
もし敵として現れれば、これまでのような一対一ではなく、対パーティー戦になる可能性が高い。
しかも俺の目的は討伐ではない。
救出だ。
勢い余って殺してしまえば元も子もない。
慎重さが求められる相手だった。
そして、そこで一つの問題に気付く。
俺がジューダス帝国へ戻った後――
もし魔王国が襲撃されたらどうする?
父ちゃんはまだ本調子ではない。
間違いなく無理をして出撃するだろう。
それだけは避けたい。
ならば答えは一つだった。
俺がいなくても魔王国を守れる戦力を増やす。
そのためには――
『よし。アローラとエドを進化させよう』
自然とその言葉が口をついて出た。
ホイズ。
ベイル。
ハク。
ヒメル。
彼らは既に進化を果たし、以前とは比較にならない力を手にしている。
だがアローラとエドだけは違った。
進化の修行へ入る直前に王国軍との戦争が始まってしまったため、二人だけが未だ進化できていないのだ。
戦力強化。
魔王国防衛。
そして来たるべき戦いへの備え。
全てを考えれば、今やるべきことは決まっている。
『アローラ、エド。準備してくれ』
『はい、ライト様』
『お任せください』
二人は迷いなく頷いた。
その瞳には期待と覚悟が宿っている。
こうして俺たちは再び――
進化の試練が待つ魔竜の洞窟へと向かうのだった。




