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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第69話 牙を剥く差別と偏見

学食での一件を経て教室へ戻ったライトは、空気の変化を敏感に感じ取っていた。


午前中まであれほど興味津々だったクラスメイト達が、今は誰一人として目を合わせようとしない。


視線が合いそうになると慌てて逸らされる。

まるで危険な獣でも見るかのように。


(やってくれたな……ルシェイン)


あの皇子の狙いは見事に成功していた。

だが、不思議と怒りはなかった。


そもそも魔族への偏見など最初から覚悟していたことだ。


少しずつ知ってもらえばいい。

それだけの話だ。


そう自分に言い聞かせていると――


『ラ、ライトくん……』


隣から小さな声が聞こえた。


レオナだった。


猫耳をぴくぴくと動かしながら、勇気を振り絞るようにこちらを見ている。


『皇子様の言うこと……気にしない方がいいよ……』


『え?』


『わ、私も見てたから……ライトくん達、何も悪いことしてなかった……』


その言葉にライトは目を丸くした。


今の状況で。

皆が距離を置こうとしている中で。

彼女だけは自分から声を掛けてくれたのだ。


『ありがとう』


自然と笑みがこぼれる。


『レオナさんみたいな人がいてくれて良かった』


『っ!?』


レオナの耳がぴんっと立つ。


頬がみるみる赤く染まっていった。

そんな彼女の姿に、ライトは少しだけ心が軽くなるのを感じた。


学院生活初日。


友達が一人。


それだけでも十分な成果だろう。

そう思っていた。


その時までは。



放課後


『ジジジ……ハク、ヒメル。校門で待ってるぞ』


インカム越しに呼びかける。


すると。


『ジジジ……ご主人様! ハクが……!』


そこで通信が途切れた。


嫌な予感がした。


ライトは発信機の魔力を辿り、予備課程の校舎へ向かう。


そして

到着した瞬間、目の前の光景に顔が強張った。


数人の生徒が地面に転がり呻いている。


その中央には拳を握り締めたハク。


『ご主人様ーっ!』


ヒメルが駆け寄ってくる。

だが事情を聞くより早く、周囲から声が飛んだ。


『魔族なんて危険なんだよ!』


『皇子様の言う通りじゃねぇか!』


『魔王国へ帰れよ!』


その言葉を聞いた瞬間、全てを理解した。


ルシェインの仕業だ。


自分だけなら耐えられた。


だが、家族を傷付けられるのは違う。


胸の奥で何かが切れる。


(もういい)


世界平和?


種族融和?


知るか。

そんなもの。


家族を傷付けてまで守る価値があるのか?


全部壊して帰ればいい。

そう思った瞬間。


聖魔跡から光と闇のオーラが漏れ始めた。


空気が震える。


殺気が溢れる。


その時だった。


――バシィッ!!


乾いた音が響く。


続いて。


バシィッ!!


バシィッ!!


男子生徒達の顔が次々と横へ弾かれた。


何が起きたのか理解できず固まる生徒達。


その前に立っていたのは――

フィオレリアだった。


『貴方達は恥ずかしくないのですか!』


怒りで肩を震わせながら叫ぶ。


『寄ってたかってクラスメイトを傷付けて!』


『で、でも皇子様が……』


『お兄様は関係ありません!!』


鋭い一喝。


その場にいた全員が息を呑んだ。


『貴方達はハク様の何を知っているのですか!?』


『何も知らないくせに勝手に決め付けて!』


『私には貴方達の方がよほど野蛮に見えます!!』


静まり返る校舎。


だがフィオレリアの怒りは止まらない。


『そして見ていただけの貴方達も同じです!!』


周囲の生徒達へ向き直る。


『なぜ助けなかったのですか!?』


『クラスメイトが傷付けられていたのですよ!?』


誰も答えられない。

ただ俯くことしかできなかった。


そこへ。


『そこまでです』


静かな声が響く。


エリオス副学院長だった。


彼は周囲を見回し、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


『ここは多種族国家ジューダス帝国です』


『皆さんはこれまで種族の違う友人達と共に学んできたはずです』


『違いがあっても我々は同じ人です』


『それを理解できない生徒は、この学院にはいないと私は信じています』


その言葉は静かだった。


だが誰の胸にも深く響いた。


そして。

怒りで震えていたフィオレリアの肩にそっと手を置く。


『よく言いましたね』


『ですが暴力はいけません』


『……申し訳ありません』


涙を浮かべるフィオレリア。


『それでも』


エリオスは優しく微笑む。


『私は貴女の勇気を誇りに思いますよ』


その言葉を聞いた瞬間。


ライトの中で暴れ狂っていた感情が静かに消えていった。


気付けば溢れていたオーラも消えている。


(危なかった……)


本当に危なかった。


力を持ったことで、自分は少しずつ変わってしまっている。


気に入らないから壊す。


傷付けられたから滅ぼす。


そんな思考に近付いていた。


それは魔王ではなく暴君だ。


今後、自分が向き合うべき課題なのだろう。


そう思った。


だが、遠くからこの光景を見ていた男は違った。


『チッ……』


ルシェインは舌打ちする。


『もう少しで本性を暴けたものを』


その隣で、取り巻きの男が不気味に笑った。


『ご安心ください、ルシェイン様』


『次の手は既に考えております』


その笑みは、まるで獲物を追い詰める蛇のように冷たかった。

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