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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第68話 ルシェイン皇子の思惑

1限目の基礎魔導学が終わり、休み時間となった。


すると――


あっという間にライトの席の周りに人だかりができる。


『ライトくんって本当に魔族なの?』


『魔王国ってどんなところなんだ?』


『ねぇねぇ!彼女いるの!?』


『え、いや、その……』


矢継ぎ早に飛んでくる質問攻め。


どうやらクラスメイト達の興味を思った以上に引いてしまったらしい。


人見知り気味のライトは苦笑しながら一つずつ答えていくが、終わる気配がまるでない。


そんな時だった。


『皆さん、その辺りにして差し上げてください』


凛とした声が響く。


フィオレリアだった。


『ライト様も困っておられます。これから同じクラスで過ごすのですから、お話する機会はいくらでもありますよ』


その言葉に生徒達も素直に引き下がる。


皇女としての威厳なのか、それとも彼女自身の人望なのか。


どちらにせよ助かった。


『ありがとうございます』


『ふふ。お気になさらず。皆さん、ライト様に興味津々なだけですから』


申し訳なさそうに微笑むフィオレリアに、ライトも苦笑を返した。


少なくとも――


完全に孤立するようなスタートではなかったらしい。


そして授業は進み、気付けば昼休み。


セレスティナ帝国学院の学食ホールは、今日も多くの生徒たちで賑わっていた。


全学部共通で利用する巨大な食堂は、まるで前世で見た大型ショッピングモールのフードコートのようだ。


ライトはオムライス。


ハクは牛丼。


ヒメルは山盛りナポリタン。


それぞれ料理を持ち寄り席へ着こうとした時だった。


『ご一緒してもよろしいでしょうか?』


振り返る。


そこにはフィオレリアがいた。


『もちろん――』


そこまで言ってライトは固まった。


フィオレリアが持っている料理の量が尋常ではなかったからだ。


肉料理。


魚料理。


パン。


スープ。


サラダ。


デザート。


さらに追加の肉料理。


テーブルに並べられた瞬間――


ドスン。


重たい音が響く。


テーブルが少し軋んだ気がした。


『フィオレリア様……それ全部お一人で?』


ライトは思わず尋ねる。


テーブルいっぱいに並べられた料理。

どう見ても四人前どころではない。


フィオレリアは不思議そうに首を傾げた。


『ええ。一人分ですが?』


『……』


『……』


『……』


ライト達三人は無言になった。


細い。


細すぎる。


どう見ても大食漢には見えない。

ライトは前世で見た大食い番組を思い出していた。



そんな和やかな空気が流れていた時だった。

一人の少年が、複数の取り巻きを従えてこちらへ歩いてくる。


金髪。


整った容姿。


そして鼻につくほど尊大な態度。


ルシェイン皇子だった。


周囲の生徒たちも気付いたのだろう。

ざわり、と空気が揺れる。


『おやおや。これは奇遇ですな』


わざとらしい笑みを浮かべながらルシェインが立ち止まる。


ライトは心底面倒そうに視線を向けた。


『何か御用ですか?』


『そんな警戒しなくても良いでしょう。同じ学院の仲間ではありませんか』


ニヤニヤと笑うルシェイン。


その顔を見ただけで分かる。

絶対にろくな話ではない。


案の定だった。


『フィオレリア。同じテーブルで食事とは感心しませんな』


『お兄様。ライト様への接触は禁止されているはずです』


『堅いことを言うな』


ルシェインは肩を竦める。


そして――

わざと周囲に聞こえるように声を張り上げた。


『私はただ、薄汚い魔族とも仲良くしてやろうと思っただけだ』


ピタリ。

周囲の空気が止まる。


『高貴な身分の俺様が、わざわざだぞ?』


取り巻き達がクスクスと笑う。


その瞬間だった。

ライトの中で何かが切れた。


ハク。


ヒメル。


魔王国。


自分を支えてくれた仲間達。


それら全てをまとめて侮辱されたような気がした。


胸の奥が熱くなる。


冷静になれ。


そう思う。

だが感情が先に動いた。


『おい』


低い声が漏れる。


『……?』


ルシェインが振り返る。


ライトは真っ直ぐその目を見据えた。


『くそ皇子』


空気が凍る。


『死にたくなかったら消えろ』


『今すぐだ』


周囲から息を呑む音が聞こえた。


怒気を押し殺した声。


それが逆に恐ろしかった。



『ライト様っ!!』


慌ててフィオレリアが割って入る。


だが。


遅かった。


ルシェインの口元が歪む。


まるで獲物が罠に掛かった瞬間を喜ぶ狩人のように。


『皆、聞いたかい?』


高らかな声が学食中へ響く。


『この魔族は、この私を殺すと言った』


周囲の視線が一斉に集まる。


『仲良くしてやろうとしただけの私をだ』


ルシェインは芝居がかった仕草で肩を竦めた。


『やはり魔族とは恐ろしいものだな』


誰も声を出せない。


『野蛮で』


『残忍で』


『薄汚い』


その言葉がホール中へ広がっていく。


『諸君も気を付けることだ』


勝ち誇った笑み。


『気を許したら何をされるか分かったものではないぞ』


高笑いを残しながらルシェインは去っていく。


そして――

静寂が訪れた。


さっきまで賑やかだった学食ホール。


だが今は違う。


誰も近付かない。


誰も話しかけない。


誰も目を合わせようとしない。


まるで見えない壁が出来たかのように。


ライト達の周囲だけがぽっかりと空いていた。


怯えた視線。


警戒の視線。


疑いの視線。


その全てが突き刺さる。


『……やられたな』


ライトは小さく呟く。


怒りに任せて口にした一言。

それがルシェインの狙いだったのだ。


せっかく少しずつ築き始めていた学院での居場所。


その第一歩が。


たった数分で崩れ去ろうとしていた。

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