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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第60話 帝国との同盟

翌朝――。


皇城の客室で目を覚ましたライトたちは、その後予定通り同盟調印式へと臨んだ。


こうして魔王国とジューダス帝国は正式に同盟国となる。


締結された協定の内容は大きく五つ。


一つ、互いに侵略行為を行わないこと。


一つ、一方が第三国から武力侵攻を受けた際は必要な支援を行うこと。


一つ、貿易において相互に最恵待遇を与えること。


一つ、産業技術および研究開発分野で協力を推進すること。


一つ、留学生や技術者の受け入れを通じて友好関係を深めること。


要するに――


共に守り、共に発展する。


そのための包括的な同盟であった。


調印式には多くの貴族たちが列席していたが、中には魔族に対して露骨な警戒心を抱いている者も少なくなかった。


だが、皇帝ディオルグとフィオレリア皇女が率先して友好的な姿勢を示したことで、反対派も表立って異を唱えることはできない。


せいぜい遠回しな嫌味を口にする程度だ。


そして何より――


魔王国の代表として現れたライトが、人族であり、しかも少年だったこと。


さらに、誰もが目を奪われるほどの美貌と洗練された立ち居振る舞いを備えていたことも大きかった。


魔族への偏見を持っていた貴族たちでさえ、


「本当に魔族側の代表なのか?」


と困惑するほどだったのだ。


もちろん最後まで反対意見を述べる者もいた。


しかし――


「同盟は既に決定事項である」


ディオルグ皇帝のその一言によって、全ては沈黙した。


ちなみに反対派の中心にはルシェイン第二皇子の姿があった。


どうやら彼の派閥らしい。


(本当に面倒くさい奴だな……)


ライトは内心でため息を吐く。


だが、ルシェインの処遇については皇帝に任せると決めた以上、これ以上口を出すつもりもなかった。


なお、その間。


ハクとヒメルが終始ルシェインを威嚇していたことは言うまでもない。



調印式を終えた後。


ライトたちはフィオレリア皇女と共に皇城の中庭で束の間の休息を取っていた。


「はぁぁぁ……疲れた……」


ベンチへぐったりともたれかかるライト。


まるで繁忙期のブラック企業で連勤した会社員のような顔である。


そんな彼を見てフィオレリアはくすりと笑った。


「うふふ、お疲れ様です」


「皇女殿下も大変ですね……」


「そうでしょうか?」


「魔王国には貴族社会みたいなものがありませんから。正直、ああいう人達の相手を毎日するのは尊敬します」


「慣れですよ」


そう言って微笑むフィオレリア。


だが、その優しい笑顔の奥には、皇族として生きる者だけが抱える苦労も垣間見えた。


生まれながらに背負わされた責務。

立場ゆえのしがらみ。


きっと俺には想像もつかない悩みも多いのだろう。


「心中お察しいたします……」


そう告げると、フィオレリア皇女は少しだけ目を丸くし、やがて柔らかな笑みを浮かべた。


「ふふっ、ありがとうございます」


その微笑みはどこか嬉しそうだった。


「ですが、私からするとライト様の方が凄いと思いますよ?」


「え?」


「先日の謁見や調印式での振る舞いです。父も、とても十歳の子供とは思えないと驚いておりました」


「あー……」


思わず視線を逸らす。

中身五十代のおっさんです、とは当然言えない。


「ま、まぁ……魔王国で教育を受けていましたから」


「それにしても見事でした。よほど素晴らしい教育機関があるのでしょうね」


フィオレリア皇女は感心したように頷く。


「留学制度の協定も結びましたし、私も一度魔王国へ留学してみたいくらいです」


「あ、実は私、学校には通ったことがないんですよ」


「えっ?」


今度こそ本気で驚いたようだった。


「魔王国にも学園はあるらしいんですが、父が城の外へ出ることを許してくれなくて……結局一度も通えませんでした」


正確には、魔王の息子として過保護に育てられた結果である。


おかげで勉強は城の中。


遊びも城の中。


友達もほぼ城の中だった。


「そうだったのですね……」


フィオレリア皇女は少し申し訳なさそうな顔をした。


「でも、それなら尚更すごいです」


「そうですか?」


「はい。私は幼い頃から学園に通っていますが、それでもライト様のように振る舞える自信はありませんもの」


そう言ってクスクスと笑う。


褒められるのは悪い気はしない。


もっとも、その実態は人生経験の差なのだが。


「でしたら――」


不意にフィオレリア皇女が手を打った。


パンッ!


明るい音が中庭に響く。


「帝国に滞在している間だけでも、学園へ通ってみては如何でしょうか?」


「学園に?」


「はい!」


彼女は楽しそうに頷く。


「帝国学園には人族だけではなく、獣人族やエルフ族など様々な種族の生徒が通っています。きっと楽しいと思いますよ」


「へぇ……」


それは少し興味が湧く。


前世では学生生活など遥か昔の話だ。


だが、この世界では一度も経験していない。


「私は初等部ですので、年齢的にライト様とは同じ教室にはなれないと思いますが……」


少し残念そうに言うフィオレリア皇女。


その様子を見て思わず苦笑した。


学園か――。


様々な種族がいるなら、ハクとヒメルを連れて行っても問題はなさそうだ。


あいつらにも最低限の教育は必要だろう。


特にハク。


放っておいたら絶対に問題を起こす。


「少し考えてみます」


「本当ですか!?」


フィオレリア皇女の表情がぱっと明るくなる。


その様子は皇女というより、一人の年相応の少女のようだった。


「ええ。面白そうですし」


「ふふっ、でしたら是非」


そうして俺達は、穏やかな時間を過ごした。


戦争の足音が近付いていることも。


帝国と王国の対立が激化していることも。


ほんの少しだけ忘れられるような――

そんな束の間の休息だった。



そして午後。


場所を軍議室へ移し、本日の本番とも言える会議が始まった。


帝国軍上層部との戦略会議である。


出席者の中には、

皇女親衛騎士団長シグルド。

副団長ハインツ。


そして帝国軍の将軍や高級将校たちの姿もあった。


ここから先は外交ではない。


軍事の話だ。


ライトはまず帝国軍の戦力分析から始めた。


話を聞けば聞くほど、ジューダス帝国軍の問題点は明白だった。


強力な騎士団。


優秀な重装歩兵。


高い練度。


だが――


魔導兵器がない。


圧倒的にない。


アストリア王国がゴーレムを量産し戦場へ投入している現代において、それは致命的だった。


敵は壊れても修理すればいい。

こちらは死ねば終わりだ。


戦争が長引けば長引くほど不利になる。


だからこそライトは魔王国で魔導兵器の開発を推進してきた。


そして――

その成果の一つがこれだ。


「それでは、魔王国の防衛兵器をご紹介します」


そう言った瞬間。

ライトは腕のブレスレットへ手を触れた。


空間が歪む。


次の瞬間――


ドォォォォォン!!


巨大な金属塊が会議室中央へ出現した。


「なっ――!?」


「これは!?」


「魔法か!?」


将校たちが一斉に立ち上がる。


突然現れたのは、禍々しい威圧感を放つ巨大兵器。


黒鉄の砲身が二本。

見る者に本能的な恐怖を抱かせる異形の武装。


ライトは平然と言った。


「こちらが魔王国製魔導兵器――【対侵略者殲滅用兵器キジュウ】です」


室内が静まり返る。


誰もが目の前の兵器に釘付けだった。


「この兵器は魔鉱製弾丸を高速射出し、敵兵および魔導兵器を破壊するための装備です」


「高速……射出……?」


理解が追いつかない。

そんな顔をする将校たち。


そこでライトは助け舟を出した。


「シグルドさん、説明お願いできます?」


突然振られたシグルドは姿勢を正した。


「はっ!」


そして力強く告げる。


「先の魔王国防衛戦において、この兵器は王国軍を圧倒しました」


ざわっ――。


室内が揺れる。


だがまだ半信半疑だ。


そこへハインツが追撃を入れる。


「王国軍だけではありません」


全員がハインツを見る。


「兵士型ゴーレムも撃破しておりました」


その瞬間。


軍議室の空気が変わった。


「なにっ!?」


「ゴーレムを!?」


「本当か!?」


誰も座っていられない。


兵士型ゴーレムは帝国騎士数名が命懸けで倒す相手だ。


それを兵器が破壊する。

そんな話は常識外れだった。



ライトは静かに笑う。


食いついた。

そう確信した。


「そこで魔王国としては、このキジュウを帝国へ提供したいと考えています」


一瞬。

全員が固まる。


そして次の瞬間。


「本当ですか!?」


「ぜひ譲っていただきたい!」


「これがあれば騎士達の損耗を減らせる!」


軍議室が一気に沸騰した。


先程まで魔族への警戒心を見せていた将校たちですら身を乗り出している。


ライトは苦笑しながら両手を上げた。


「落ち着いてください」


「価格は?」


「そこは今後の相談ですね」


「おお……!」


「もちろん同盟国ですので、無理な金額を請求するつもりはありません」


その言葉に将校たちは安堵の息を漏らした。


同時に理解する。


魔王国は敵ではない。


むしろ――

最も頼もしい味方になり得る国だと。


そしてその中心にいる少年こそ。

新たな時代を切り開こうとしている存在なのだと。

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