第5話 この世界のこと
初めての作品で、手探りで執筆しておりますので内容において、度々改変などがされております。
ご不便をお掛け致しますが、温かい目でご覧頂けると幸いです。
ハクとの出会いから2年後。
ーライト10歳ー
今日も懲りずに、ハクを伴って魔王城からの脱走を試みる。
しかし、今日はいつも感じる魔王ガルスの圧倒的な気配がない...
『これは...チャンスだ!』
『ワン!ワン!』
2年間の生活ですっかり相棒となったハクが俺の高揚に応える。
そして、誰にも邪魔されず魔王城のエントランスにある扉の前まで到着する。
これは又と無いチャンスだ!
『苦節3年...ついに魔王城の外に出る時がきた!ハクッ!行くぞっ!』
『ワォ〜ン!』
俺はテンションをぶち上げて扉を開こうと取手に手を掛ける....
しかし、何かに手が押し戻される…
『ん?扉に触れない?』
俺は扉の取手に手を掛けようとするが、触れる前に磁石の反発のような力が生じて、やはり圧力によって手が押し戻される...
『なんじゃこりゃぁあ!!』
俺は予想外の出来事に、つい某刑事ドラマの名シーンを彷彿とさせるセリフを叫んでしまう。
当然ハクは何のことだか分からずに、俺の横で首を傾げている。
何度触ろうとしても、反発して触れない...
これならどうだ!と突進してみるが弾き飛ばられる...
『ダメだ...出られない...』
恐らく脱走を試みる頻度が衰えないことに、面倒くさくなったのか、魔王ガルスは魔王城に結界のようなものを施してしまったようだ....絶対に脱走を許さないという気概を感じる。
そんな事があり、俺は絶望に打ちひしがれたが落ち込んでいても事態は好転しない。
俺は前向きなのだ。
一先ず今日は諦めて、対策を練る事にした。
良い結果の為には諦めも肝心だ。
自室に戻った俺は、ベッドでゴロゴロしながら横に寝転がっているハクを見る。
モフモフでフワフワな毛並み、愛らしい顔、人懐こい仕草。
『可愛い...可愛すぎる』
もともと俺は動物好きではあったが、ハクは今まで見たどの動物よりも愛らしかった。
しかし、いくら可愛い見た目でも魔物は魔物、戦闘訓練では子供ながらにも素早い動きを活かした戦いぶりを見せている。
ステータス...
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名前:ハク
レベル:21
称号:ライトの相棒
ジョブ:ホワイトウルフLv.14(種族特性につき進化以外の変更不可)
熟練度:爪牙術Lv.8
特性:親愛の情、誠の忠誠心、王の資格
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うんうん、よく成長しているとライトは満足そうに頷く。
魔王ガルスに確認したところ、ホワイトウルフという魔物は希少な種族で、様々な魔物が跋扈する魔王国でも中々見る事がない種族らしい。
さしずめ日本でいうところの天然記念物や絶滅危惧種といったところか....手厚く保護しなくては。
また、本来は少数の群れで生活しており、群れのリーダーを王として建てる習性があるとのことだ。
ハクの特性、王の資格とは群れのリーダーになり得るポテンシャルがあるという事なのだろうか…
まだまた知らない事は山程ある。
城の外の事に関してもそうだ、何も知らない…
そんな事を考えていると、俺の悪い虫が騒ぎ始めるが、どうせ今は結界が邪魔をして城の外に出る事は出来まい。
余りしつこく脱走を試みても、更に警戒されるだけだし、そろそろ父ちゃんにガチギレされる恐れもある...
魔王を怒らせるのは愚の骨頂だ。
父ちゃんを怒らせると怖いからな….
そう思い、騒ぐ虫を抑えて部屋を出た俺は魔王城の書物庫へ向かった。
最近は、訓練や勉強の時間以外はハクと書物庫で過ごす事が多い。
俺が本を読んでいる時、ハクは大人しく隣で寝ている。
そんなハクの姿をたまに眺めながら読書にふけるのが最近のマイブームだ。
これでコーヒーがあれば言うことはないのだが....贅沢は言うまい。
そして何より、知らない事を知るのは楽しい...
この書物庫には、前世には無かった様々なジャンルの書籍が並んでいる。
魔法や錬金術、魔道具….更にはこの世界の歴史など非常に興味をそそる内容の本達だ。
そんな様々な本の中から俺は一冊をの本を手に取る。
題名は『種族と国』
普段の魔王城での勉強は、もっぱら戦いに関しての内容ばかりで、あまりこの世界についての勉強はしない。
まるで外の世界に関心を持たせないようにするかのようだ。
ここでも父ちゃん達の意図的な秘匿意識を感じる。
だが教えて貰えないのであれは、自分で調べるだけだ。
種族と国、この本には題名にある通り、この世界に生きている様々な種族や各大陸について、そしてその大陸にある国の名前や場所などが書いてある。
この本によると、この世界には大まかに分けて8つの種族がいるらしい。
・人族
・エルフ族
・ダークエルフ族
・ドワーフ族
・小人族
・巨人族
・獣人族
・魔族
魔物などは魔族に分類されているが、厳密に言うと他にもそれぞれの種族から派生してとんでもない種類の種族が存在しているらしい。
地球でいう○○類○○科的な感じだ。
獣人族と一口にいっても、虎型や狼型などの肉食獣系などがいる一方で、うさぎ型や馬型、牛型などの草食獣系など多種多様な種類に派生している。
そういえば転生候補に牛があったな….ミノタウルスに進化出来るとも….あれは獣人という事なのか….?
そんな沢山の種族の中でも人口が一番多いのは人族のようだ。
また、ある程度の種族は固まって生活圏を築いており、それが国となっている場合が多い。
俺がいる魔王城は魔族の国にある城だと本には書いてある。
中には多種多様な種族が混在して生活している他種族国家もあるようだが、大体は数が多い人族が他の種族を弾圧している事が多いらしく、人族は他の種族と仲があまり宜しくないらしい。
『人族、結構やらかしてんな』
俺はイジメカッコ悪いという考えの持ち主だ。
数にものを言わせる….ダサすぎる。
さらに本によると、この世界は大きく分けて5つの大陸で分かれており、真ん中に中央大陸、南に南方大陸、西に西方大陸、東に東方大陸、そして北に北方大陸があるようだ。
ちなみに北方大陸は魔族の支配地で魔王城も北方大陸にある。
そして、中央大陸は主に人族が支配しており大きな国としてはジューダス帝国やアストリア王国、ツヴァイス神聖国といった国があるようだ。
『どんな文化の国々か気になるな...』
いつかは世界を巡ってみたいと思う。
そして、南方大陸は獣人族が西方大陸はエルフ族とダークエルフ族が、東方大陸はドワーフ族と小人族が主に支配しており、巨人族は数が少ない事もあって支配地や国を持たず、単独で各地に散らばって人目につかないように生活していると本には書いてある。
調べてみると割とオーソドックスなファンタジーな世界だなと感じる。
しかし、それ故にワクワクもしてくる。
だが、どこの世界にも数の暴力というものは存在するらしく、この世界においては数の多い人族が侵略戦争などを頻繁に起こして、他の種族に迷惑をかけているようだ。
他の種族に比べて平均的な身体能力が低く、純粋な戦闘力に欠ける人族は魔道具というものを戦闘に使用して、道具と数にものを言わせて侵略するスタイルだと本には書いてある。
『なんか人族、カッコ悪い...』
俺は個人的に、イジメはもちろんカッコ悪いと思っているが、道具に頼って更には群れてイキがる….凄くカッコ悪いと思う.…
そんな人族に少しだけ嫌な感情を抱きながら、俺は本を閉じる。
その瞬間、俺は魔王城の中が少し騒がしくなるのを感じた。
何かと思い、いそいそと書物庫を後にして、何やらざわついている魔王城のエントランス方面に向かう。
エントランスに到着すると、そこには何人か怪我をした魔族が治癒師の治療を受けていた。
その中には剣術の先生である魔王騎士団長のベイルの姿があり、怪我をしているのか座り込み治療を受けているようだ。
『ベイル先生!』
俺は心配になり声を掛ける。
横にいるハクも心配そうだ。
『ん?あぁライト様...どうなされた?』
ベイル先生は治癒師に治療を受けながら、こちらに視線を向けて、どうしたのかと俺に尋ねてくる。
どうなされた?じゃない….それはこっちのセリフだ。
『その怪我どうしたの?誰にやられたの?』
俺は、どうしたのかと聞いてくるベイルに矢継ぎ早に質問をする。
一体誰にやられたのか...命に別状は無さそうだが、身体のあちこちに切り傷や刺し傷のようなものがあり出血も酷い様子だ。
『何でもありませんよ...大丈夫です』
『何でもない訳ないじゃないか!』
『.......』
ベイルの返答に憤りを感じて思わず声を上げるが、ベイルはその声に応える事なく、無言で部下に肩を借りながらそそくさとその場を後にしてしまった….
その場に残された俺は、他の怪我をした魔族の皆んなにも理由を聞いて回るが、皆一様に何でもないと誤魔化す.…
『一体何が起きたんだ...』
ベイルは魔王城の中で、俺に勝てる数少ない実力の持ち主だ....ましてや魔王軍一の剣士で魔王騎士団の団長を務める程の実力者なのだ。
そのベイルがあんな怪我をするなんて、余程の相手だと言う事だ。
しかも今回はベイルが率いる魔王騎士団に所属する多くの騎士達も被害を受けていた。
ベイル先生をはじめ魔王騎士団の皆んなには普段から訓練でもお世話になっており、皆顔見知りで優しく大好きな者達だ。
そんな皆んながやられた事に我慢できず、俺は魔王ガルスに事情を聞こうと玉座の間に向かったが、どうやら魔王ガルスは留守にしているようだ….
その後、魔王ガルスを探す為に城の中をあちこち回り、途中で会ったホイズや他の魔物達にも事情を確認したが、ベイル達が怪我をした理由は知らないと皆にシラを切られた。
『何故皆んな教えてくれないんだ...絶対知っているはずなのに』
俺は、隠されている事実がしりたいと呟いた….




