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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~良いとこどりで最強に育って無双します~  作者: ララ
第一章 転生…そして幼少期編

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第49話 特殊個体の正体

カースブレイカーの呪いに蝕まれながらも、ネイビーブルーの特殊個体はなお戦い続けていた。


華麗な刺突。


流れるような体捌き。


まるで舞うような剣技。


だが――

限界は近かった。


ベイルの斬撃によって刻まれた胸部の亀裂が、剣を交えるたびに音を立てて広がっていく。


ミシ……


ミシミシ……


内部から悲鳴を上げるように。

特殊個体の動きは目に見えて鈍り始めていた。


それでも。


なお剣を振るう。


なお前へ出る。


まるで己の使命だけに縋るように。


そんな姿を見つめながら、ベイルは静かに呟いた。


『お主は強い』


黒い瞳が相手を捉える。


『敬意に値する』


強者には敬意を。


それがベイルという騎士の流儀。


たとえ敵であっても。


だが――


『残念だが』


魔剣スレイブが黒い瘴気を噴き出す。


『王国に与する者は滅するのみ』


その瞬間。


魔剣を包む深淵のオーラが膨れ上がった。


ゴォォォォォォォ……。


漆黒の魔力は刃を覆い尽くし、やがて巨大なオーラブレードへと変貌する。


空を覆うほどの巨刃。


まるで夜そのものを切り取ったような闇の剣。


兵士達が息を呑む。


誰もが理解した。


終わる。


この一撃で決着がつく。


『魔剣奥義――』


ベイルが踏み込む。


『深淵断罪(アビスジャッジメント)』


その時だった。


『待ってくれぇぇぇぇっ!!』


戦場に悲鳴にも似た叫びが響いた。


シグルド。


そしてハインツ。


二人が全力で駆け込んでくる。


だが――


遅かった。


バシュゥゥゥゥッ!!


漆黒の刃が振り下ろされる。


ネイビーブルーの特殊個体は斜めに切り裂かれ、大量の火花を散らしながら地面へと崩れ落ちた。


ドォォォン――!!


『あ……』


シグルドの足が止まる。


目の前で崩れ落ちる特殊個体。


そして。


絶望。


『あ……あぁ……』


膝が砕けたように地面へ落ちる。


『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』


慟哭。


それは戦場の喧騒すら掻き消すほどの悲鳴だった。


ベイルは倒れた特殊個体へ歩み寄る。


せめて苦しまぬように。

戦士としての情けだった。


魔剣を首元へ向ける。


だが。


その腕を掴む者がいた。


ハインツだった。


『待ってくれ……!』


必死だった。


声が震えている。


『頼む……』


ベイルは振り返る。


『其奴は敵だ』


冷静な声。


『二度と我らに仇なさぬよう討たねばならん』


『違う!!』


ハインツが叫ぶ。


『仲間なんだ!!』


ベイルの瞳が細くなる。


『……』


『俺達の仲間かもしれないんだ……!』


沈黙。


数秒。


やがてベイルはゆっくりと魔剣を下ろした。


『……そうか』


それ以上は何も言わなかった。


ハインツは深く頭を下げる。


『ありがとう……』


そしてシグルドは。


ふらつく足取りで特殊個体へ近づいていく。


胸部。


大きく裂けた装甲。


その奥に見える人影。


震える手。


震える呼吸。


震える視線。


恐る恐る覗き込む。


そして――


世界が止まった。


ゴーレムの中。


そこにいたのは。


『エレ……オノーラ……?』


金色の髪。


見慣れた顔。


忘れるはずもない。


何度も夢に見た。


何度も探した。


何度も名を呼んだ。


愛した女性。


婚約者。


エレオノーラ。


『な……』


涙が溢れる。


『なんで……』


止まらない。


『なんでお前が……こんなところにいるんだ……』


エレオノーラの顔に額を押し当てる。


『うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』


叫ぶしかなかった。


何も出来なかった。


数か月探し続けた人が。


こんな姿で見つかるなど。


誰が想像できただろう。


その肩へ手が置かれる。


ハインツだった。


『シグルド』


震える声。


だが必死に言葉を紡ぐ。


『まだ助かるかもしれない』


『……』


『まだ終わってない』


シグルドは顔を上げない。


だが。


ハインツには見えていた。


ゴーレムの中のエレオノーラ。


まだ微かに残る生気を。


まだ消えていない命の灯火を。


『助けるぞ』


その言葉だった。


『このゴーレム、運ぶだか?』


間の抜けた声。


振り返る。


そこに立っていたのは。


真紅の巨体。


オーガエンペラーとなったホイズだった。


『……え?』


ハインツは理解が追いつかない。


ホイズは首を傾げる。


『運ぶんだすよね?』


まるで当然のことを聞くように。


『でも……』


ハインツの声が震える。


『こいつは王国のゴーレムなんだぞ……?』


『うん』


『お前達の敵だ』


『うん』


『助けたらまた敵になるかもしれない』


ホイズは少しだけ考えた。


そして。


当たり前のように言った。


『でも仲間なんだすよね?』


『……』


『助けたいんだすよね?』


ハインツの喉が詰まる。


『……あぁ』


ホイズは笑った。


いつもの優しい笑顔だった。


『じゃあ運ぶだーよ』


それだけだった。


敵も味方も関係ない。


助けたい人がいる。

それだけで十分だった。


ハインツの瞳から涙が溢れる。


『……ありがとう』


震える声でそう呟く。


ホイズは答えない。

代わりに大破した特殊個体を軽々と持ち上げる。


まるで赤子でも抱えるように。


そして救護班へ向かって歩き出した。


その大きな背中を見つめながら。


ハインツは初めて思った。


魔族とは恐ろしい存在ではない。


誰よりも優しい者達なのかもしれないと。


――だが

その時だった。


ズガァァァァァンッ!!


戦場の彼方で爆発が起こる。


続けて。


ドゴォォォォォォンッ!!


巨大な炎柱が天へ昇った。


『……!?』


ハインツは反射的に振り返る。


その炎を見た瞬間。


全身の血が凍り付いた。


燃え上がる炎は赤ではなかった。


黒だった。


まるで地獄そのものが噴き出したかのような――

漆黒の炎だった。

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