表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第一章 転生…そして幼少期編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/125

第48話 消えた指南役

その特殊個体が現れた瞬間――

戦場の空気が変わった。


ネイビーブルーに輝く装甲。


兵士型ゴーレムの倍近い巨躯を持ちながら、その輪郭は驚くほど細い。


無骨な兵士型とは違う。


どこか人間――いや、一人の女性を思わせる流麗なシルエットだった。


『わぁ~、なんかもっと大きいの来たね~』


『俺、あいつ倒す』


ハクとヒメルは目を輝かせる。


強敵を前にしているにも関わらず、その表情に恐れはない。


まるで新しい遊び相手を見つけた子供のようだった。


しかし――

先に動いたのは特殊個体だった。


『帝国式刺突剣術――銀針三閃』


静かな声。


次の瞬間。

空気が裂けた。


キィン――ッ!!


見えない。


誰一人として、その突きを視認できなかった。


三本の銀閃。


それはまるで光そのものが突き刺さってくるかのような速度で、ハクとヒメルの喉元へ迫る。


『――っ!?』


反応が遅れた。


避けられない。


誰もがそう思った瞬間だった。


ガギィィン!!


火花が散る。


二撃目。


三撃目。


甲高い金属音が連続して響いた。


二人の前に立ちはだかっていたのは――


ベイルだった。


漆黒の鎧。


右腕と完全に融合した魔剣スレイブ。


アビスナイトへと進化した騎士は、常人なら認識すら出来ない突きを全て弾き返していた。


『ハク、ヒメル』


低い声が響く。


『遊びすぎだ。真面目にやれ』


『はぁ~い……』


『クゥ~ン……』


二人は一瞬でしょんぼりした。


ハクなどは耳をぺたりと寝かせ、完全に叱られた子犬である。


だがベイルの視線は既に二人には向いていない。


その漆黒の瞳は、ただ目の前の特殊個体だけを見据えていた。


『こいつは我に任せろ』


特殊個体もまた、レイピアを静かに構える。


細身の剣。


対するは巨大な魔剣。


本来ならば相性は最悪。


だが――


二人は同時に踏み込んだ。


開始の合図など存在しない。


これは試合ではない。


命を奪い合う死合なのだから。


キィィィン!!


鋭い突き。


ベイルはそれを剣の腹で流す。


返す刃。


特殊個体は紙一重で回避。


再び突き。


斬撃。


火花。


衝撃。


轟音。


互いの攻撃が常人の認識速度を超え始める。


戦場中の者達が無意識に戦いの手を止めていた。


王国軍も。


魔王軍も。


ただ、その戦いに目を奪われる。

まるでこの勝負そのものが戦争の帰趨を決めるかのように。


そして――


特殊個体が技を放った。


『帝国式刺突剣術――幻光一突』


ヒュン――ッ!!


軌道が増えた。


一本のはずのレイピアが十にも二十にも分裂して見える。


幻影。


残像。


視覚そのものを欺く神速の刺突。


ベイルですら完全には捉えきれなかった。


バシュッ!!


黒い鎧に裂傷が刻まれる。


『……む』


初めてベイルの表情が動いた。


対する特殊個体は追撃へ移る。


しかし。


その瞬間だった。


『魔剣一体――』


漆黒の瘴気が魔剣へ集束する。


まるで深淵そのものを凝縮したかのような禍々しい力。


周囲の兵士達は本能的に後退した。


『カースブレイカー』


横薙ぎ。


ただそれだけ。


だが放たれた斬撃は呪詛の絶叫を伴って空間を切り裂いた。


ヌ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛――ッ!!


バギィィィィン!!


特殊個体の胴体に巨大な亀裂が走る。


さらに黒い呪いが身体へ絡み付き、その動きを鈍らせた。


互角。


いや、それ以上。


兵士型ゴーレムとは次元が違う。


その異様な強さに誰もが息を呑んだ。


だが――


この戦いを見て青ざめている者達がいた。


シグルド。


そしてハインツ。


二人の顔から血の気が引いている。


『おい……シグルド……』


ハインツの声が震える。


『あの技……』


『……ああ』


シグルドも理解していた。


理解したくなかった。


だが見間違えるはずがない。


あの剣筋を。


あの構えを。


あの技を。


『帝国式刺突剣術……』


喉が乾く。


嫌な汗が流れる。


そして彼は震える声で呟いた。


『あの技を使えるのは一人だけだ……』


『細剣術指南役――エレオノーラ』


ハインツが続ける。


その名が告げられた瞬間。

シグルドの拳が震えた。


エレオノーラ。


数か月前。

何の痕跡も残さず姿を消した帝国最強の細剣使い。


そして――


シグルドの婚約者。


『まさか……』


あり得ない。


そう思いたい。


だが目の前の特殊個体は、あまりにも彼女だった。


『確かめるぞ、シグルド』


ハインツが剣を握る。


『あれが本当にエレオノーラ殿なのか』


沈黙。


数秒。


そして――


『……ああ』


シグルドは静かに答えた。


その目には決意と恐怖が混ざっていた。


生きていてほしかった。


だが。

もし本当にあれが彼女なら――


それは最悪の形での再会になる。


二人は同時に駆け出した。


運命を確かめるために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ