第46話 頼もしい仲間達
アローラとフィオレリアの頭上から巨大な剣が振り下ろされ、二人の命が散る…周りの誰もが諦めかけたその刹那…
『メテオスマッシュだーよ!』
ズゴォォォォォォンッ!!!!
遥か上空から紅蓮の炎のようにも見える深紅の物体が、掛け声と共にゴーレムの頭目掛けて降ってきた。
それはまるで真っ赤に燃えた隕石がゴーレムの頭上に降り注いだかのようだ…
何が起きたのか分からずに驚いているアローラとフィオレリアの目の前には、頭が胴体に陥没したゴーレムが地面に深々と突き刺さっていた。
『お待たせしただーよ』
巻き上がる砂塵の中から聞こえて来る、聞きなれた声…
アローラがその声の主に目をやると、そこには以前よりも体が二回りも大きくなり、更に鮮やかな赤色へと体を染めたホイズの姿があった。
そう、ホイズは魔竜王との訓練の結果、進化を果たしオークキングからオークエンペラーへとその姿を変えていたのだ。
その姿は雄々しく筋肉が隆起しており額に生えた二本の角も禍々しく巨大なものへと変わっている…
しかしその声は、間違いなくホイズの優しい声だったのだ。
『ホイズ…』
アローラの目に浮かぶ涙…
アローラはホイズの進化を果たした姿を見て安堵の表情を浮かべた。
『アローラ、大変だっただな~。ベイル達も戻って来たからもう大丈夫だーよ』
ホイズがその言葉を告げた瞬間、乱戦となっていた前線で凄まじい轟音と共に一体のゴーレムの首が宙を舞う…
ドゴォォォォォォンッ!!
『魔剣一体、呪断…』
首を失い倒れこむゴーレムの前には、魔剣スレイブを腕と融合させ、その体から漆黒のオーラを放ち続ける騎士の姿が…
そう、それはホイズと共に進化を果たし帰還したベイルの姿であった。
ベイルもホイズ同様、魔竜王との訓練により暗黒騎士からアビスナイトへとその姿を変えていた。
ベイルは、弱者であれば浴びるだけで生命力を削られるほどのオーラを体から放ち、その身体は深淵と呼ぶに相応しいほど黒く染まった鎧へと変貌を遂げていた。
『ベイル…貴方も…』
その姿を目にし、涙を流しながら感激に打ち震えるアローラ…
それも当然のことだ…今まさに王国軍が魔王国への侵攻をせんとし、自身すらも死の間際となっていた所へ援軍として頼もしい仲間達が帰還したのである…しかも進化を果たした姿で…
『アローラ…すまない、待たせたな…』
目の前に立ちはだかる王国兵達を姿も見ずに切り伏せながらアローラに歩み寄ってくるベイル…
『いえ…助かったわ…ありがとう…』
『さぁ、王国軍を打ち倒すぞ…』
『えぇ…やりましょう!』
見つめ合い、反撃を始めようと言葉を交わす二人…
しかし、そこに乱戦を抜けた2機のゴーレムが勢いよく突っ込んでくる!
『なっ!!』
アローラは声は出せども反応は出来ていない。
『・・・・・・』
ベイルは…反応しようともしていない…むしろ無関心といった方が正しいか…
ドガッ!!
バキッ!!
激しい衝撃音と共に左右に吹き飛ぶ2機のゴーレム。
アローラはホイズの方を振り向くが、ホイズは元の場所から動いていない…いったい誰が…
『油断はダメですよ!』
『そうそう、油断ダメ!』
そこにはアローラが見たことが無い二人が…
『あの…アナタたちは…?』
『え?酷いよ~私だよ!ヒメルだよ!せっかくみんなが危ないと思って、急いでベイルさんとホイズのおっちゃんを乗せてきたのに…忘れるなんて~ヒメル悲しい…』
ヒメルは泣き真似をしながらおどけて見せる。
『そう無理を言うな…お前を見て元がワイバーンのヒメルだなんて誰も思わんだろう…我だって言われるまで気付かんかったのだぞ』
『え?ヒメル?貴女ヒメルなの?じゃあそちらの可愛らしいウェアウルフはもしかして…』
そう言ったアローラの目の前には、純白の毛並みで綺麗な青い瞳をした幼いウェアウルフがおり、2本脚で立ってこちらを見上げていた…
『俺、ハク!アローラ、ただいま!』
『やっぱり…』
最初は感激して涙が止まらなかったアローラも、まさかこの短期間で四人も進化を果たすなど思っておらず、困惑した表情になってしまった…しかもその進化したうちの二人は幼いハクとヒメルだったのだから、その困惑も当たり前といえば当たり前なのだ。
『あの~…アローラ殿?こちらの方々は…?』
突然の援軍の登場に訳が分からないといった感じのフィオレリア
実は先程から完全に蚊帳の外となっていた為、話しかけるタイミングを見計らっていたのだ。
『あ!フィオレリア殿…ご紹介いたしますわ!この者達は遠征訓練に出ていた魔王軍幹部のベイルとホイズ、そしてライト様のお付きのハクとヒメルですわ』
『魔王軍の幹部と魔王代行殿のお付きの方々…ですか』
『はい!…本来であれば皆様にも正式にご紹介したいところですが、今は戦闘中…まずは王国軍を退けるのが先ですわ!』
『そうでしたね…申し訳ありません!今はまず共に王国を打ち倒しましょう!』
フィオレリアは合流した者達のあまりの強さに驚き、その正体に興味を持ったが、今は王国との戦闘中だった…仲間達も身を挺して戦っている最中だ…それを思い出し、再度戦いに意識を戻す。
『ベイル!ホイズ!それにハクとヒメル!やれるわね?』
『フッ、愚問だな…』
『任せるだーよ』
『俺、敵倒す~』
『私もいけるよ~』
アローラからの問いにそれぞれが応えた。
そして、それぞれがいま目の前で繰り広げられている戦いに目を向ける。
撃破した王国軍のゴーレムは4機…残りは6機だ。
ヒメルに乗り先行して戻ったホイズやベイル達だったが、遅れてそれぞれの班員も戦場に集結しつつある。
この戦闘が始まって以来、初めて魔王軍に明るい兆しが見えていたのだった。




