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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~良いとこどりで最強に育って無双します~  作者: ララ
第一章 転生…そして幼少期編

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第44話 蘇る悪夢

『ヴェクターよ……』


アストリア王国軍後方。


数万の軍勢を見渡せる高台で、一人の男が重々しく口を開いた。


王国軍総司令官――ロイズ将軍


その眼光は鋭く、前回の敗戦を未だ忘れてはいないことを物語っていた。


『今回は前回のように撤退する訳にはいかんぞ……分かっておるな?』


『無論でございます』


隣に控える参謀ヴェクターが恭しく頭を下げる。


『今回は前回を遥かに上回る兵力を投入しております。それに加え、人造ゴーレム部隊も十分な数を用意いたしました』


ヴェクターは不敵に微笑んだ。


『如何に魔族共が強かろうと、我らに抗う術はありません』


『フフフ……そうだな』


ロイズの口元が歪む。


醜悪な笑みだった。


『魔王ガルスは既に我らの手中……』


『戦力も十分……』


『そして勇者の子も、この国にいる』


その瞳に宿るのは野心。


『ついに魔王国の命運も尽きるか……』


低い笑い声が響く。


『勇者の子を手にする時が来たのだ』


ロイズは勝利を確信していた。


魔王国が滅びる未来を。

疑いもしなかった。


◇◇◇


――魔王国南方防壁


『アローラ師団長~!』


防壁上から間延びした声が響く。


『敵軍、まもなくキジュウの射程圏内に入りま~す!』


報告しているのは開発室長シュプールだった。


その耳には奇妙な魔道具が装着されている。


『ジジッ……了解しましたわ』


すぐに返答が返る。


しかし近くにアローラの姿はない。


『射程に入り次第、掃射を開始してくださいな』


声だけが聞こえる。


そう。


ライトが開発を指示した新型魔道具。


風魔法式小型無線機――インカム。


離れた場所にいる者同士が即座に会話できる画期的な魔道具である。


本来なら伝令兵が走り回らねばならない戦場。


だが今は違う。


情報は一瞬で全軍へ共有される。


まさに戦争の常識を覆す発明だった。


『あぁ~ん♡』


シュプールが身をよじる。


『そんな耳元で囁かれたら困っちゃいますぅ~♡』


『シュプール室長……』


インカム越しに聞こえるアローラの呆れ声。


『真面目にやってくださらないかしら……』


『???』


その様子を見ていたフィオレリア達は首を傾げた。


誰もいない方向へ話しかけるアローラ。


まるで独り言である。


当然だった。

フィオレリア達にはインカムが支給されていないのだから。


『ジジッ――』


再び通信が入る。


『敵軍、射程圏内に入りました~!』


シュプールの目が怪しく輝いた。


『対侵略者殲滅用兵器キジュウ――』


恍惚とした声。


『掃射開始しま~す♡』


次の瞬間だった。


ガガガガガガガガガガガガガッ!!!


轟音。


凄まじい轟音。


空気そのものが震えた。


防壁上に並ぶ五十基のキジュウ。


その全てが火を吹いたのである。


銃身が咆哮する。


無数の火線が大地を駆け抜ける。


そして――

アストリア王国軍へ降り注いだ。


『なっ……!?』


シグルドが絶句する。


王国軍前衛。


重装歩兵。


騎士。


盾兵。


全てが一瞬で吹き飛んだ。


鎧を貫き。


盾を砕き。


人体を引き裂く。


弾丸は一人を貫通して終わらない。


その後方にいる兵士すら巻き込みながら突き進む。


まるで死神の鎌だった。


『これは……』


ハインツの顔が引き攣る。


『ヤバいなんてもんじゃねぇぞ……』


前線は崩壊していた。


戦いですらない。


ただの虐殺。


王国軍は防壁へ辿り着くことすら許されない。

フィオレリアはその光景に目を奪われていた。


『これほどの力があれば……』


誰にも聞こえないほど小さな声。


『帝国を救える……』


希望だった。


初めて見えた希望だった。


◇◇◇


掃射は続く。


轟音は止まらない。


砂煙が舞い上がり、戦場を覆い尽くす。


『あぁ……』


シュプールがうっとりと呟く。


『癖になりそうですぅ♡』


『ジジッ――』


アローラから通信。


『シュプール室長』


『は~い♡』


『楽しんでいる所申し訳ありませんが、敵の被害状況をお願いしますわ』


『は~い♡』


シュプールは機銃の熱気に頬を赤らめながら周囲を見渡した。


そして。


『敵前衛――』


軽い口調のまま告げる。


『殲滅完了で~す♡』


『……』


その言葉が意味するもの。


王国軍前衛六千。


壊滅。


わずか数分で。


『これは……』


シグルドが呆然と呟く。


『戦争そのものが変わるぞ……』


誰も反論できなかった。


それほどの威力だった。


◇◇◇


だが。

アローラだけは笑わなかった。


『予想以上ですわね……』


確かな戦果。


圧倒的優勢。


普通なら勝利を確信する。


しかし。


アローラの脳裏には別の光景が浮かんでいた。


前回の侵攻。

あの日も同じだった。


魔王軍は優勢だった。


誰もが勝ったと思っていた。


そして、その瞬間。


悪夢は現れた。


『油断はしませんわ……』


アローラは小さく呟く。


『あれが来るはずですもの……』


巨大な人造ゴーレム。


魔王ガルスを奪った元凶。


今回も必ず現れる。

そう考えた――その時だった。


ドゴォォォォォォォォンッ!!


戦場最前線。


突如として巨大な爆発が巻き起こる。


大地が揺れた。


土煙が天高く舞い上がる。


『っ!!』


アローラの瞳が見開かれる。


そして。


煙の向こうから現れた。


鈍い灰色の巨体。


一体ではない。


二体でもない。


五体。


七体。


いや――


その数はさらに増えていく。


『やはり……!』


アローラは唇を噛んだ。


『出てきましたか……!』


蘇る悪夢。


王国軍最大の切り札。


人造ゴーレム軍団。


それが再び魔王国の前に立ちはだかったのだった――

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