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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~良いとこどりで最強に育って無双します~  作者: ララ
第一章 転生…そして幼少期編

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第43話 開かれようとする戦端

みるみるうちに慌ただしさを増していく魔王城。


廊下を駆け抜けながら、シグルドは険しい表情で呟いた。


「予想だにしない事態となってしまったな……」


隣を走るハインツも、珍しく真面目な顔で頷く。


「ああ……シグルド。お前さん、どうするべきだと思う?」


「本音を言えば迎撃に参加したい」


即答だった。


だが、その直後。

シグルドは静かに首を振る。


「我々の第一の任務はフィオレリア様の護衛だ。感情で動く訳にはいかん」


「だよなぁ……」


ハインツは頭を掻いた。


「俺も出来れば力になりたいんだがな」


その言葉に、シグルドは思わず苦笑する。


「ふっ……お前も魔族達を気に入ってしまったようだな」


「そっくりそのまま返すぜ」


ハインツはニヤリと笑った。


「お前さんの顔にも『助けたい』って書いてあるぞ」


「……否定はせん」


短く答えるシグルド。


この一ヶ月。

彼らは魔王国で多くの魔族達と交流してきた。


恐ろしい存在だと思っていた魔族達は、実際には誠実で温かい者ばかりだった。


共に笑い。


共に酒を飲み。


共に語り合った。


気付けば彼らは、この国に愛着を抱いていたのだ。


だが――


「今はフィオレリア様が最優先だ」


シグルドは表情を引き締める。


「まずは皇女殿下の元へ向かうぞ」


「了解だ!」


二人はさらに速度を上げた。



「シグルド! ハインツ!」


客室の扉が勢いよく開く。


フィオレリア皇女だった。


「この騒ぎは何なの!?」


焦燥を滲ませる声。


シグルドは即座に片膝をつく。


「ご報告いたします」


そして告げた。


「アストリア王国軍が魔王国への侵攻を開始しました」


「……っ!」


フィオレリアの表情が凍り付く。


「王国が……?」


信じられないという顔だった。


だが次の瞬間。


彼女の脳裏に一つの可能性が浮かぶ。


「まさか……私達を追って……?」


「その可能性は十分にございます」


シグルドの返答に、部屋の空気が重く沈んだ。


もし本当にそうなら――

この戦いは自分達が招いたものだ。


フィオレリアは拳を握る。


強く。


強く。


爪が掌に食い込むほどに。


やがて彼女は顔を上げた。


その瞳には迷いが無かった。


「……シグルド」


「はっ」


「ハインツ」


「おう」


フィオレリアは二人を見据える。


「私は戦うべきだと思う」


真っ直ぐな言葉だった。


「魔王国の皆さんは私達を助けてくれた」


誰も知らない異国の使者である自分達を。


疑いながらも受け入れてくれた。


もてなしてくれた。


守ってくれた。


だから――


「その方々が、私達のせいで血を流すかもしれない」


フィオレリアは静かに言った。


「そんな事は絶対に許せない」


そして。


皇女として命令を下す。


「共に戦ってくれますか?」


シグルドは即座に胸に拳を当てた。


「当然です」


力強い声だった。


「我ら皇女親衛騎士団は、如何なる時もフィオレリア様と共にあります」


「さすが団長殿!」


ハインツが笑う。


「分かってるじゃねぇか!」


「ハインツ!」


「いてっ」


怒鳴られても笑みは消えない。


そんな二人を見て、フィオレリアは自然と笑みを浮かべた。


「ありがとう」


その一言に。


二人の騎士は静かに頭を下げる。


そして――


シグルドが問う。


「ご命令を」


フィオレリアは頷いた。


深く。


強く。


「魔王国との共闘を命じます」


空気が張り詰める。


「我らは魔王国軍と共にアストリア王国軍を迎え撃つ!」


「「「おおおおおっ!!」」」


騎士達の雄叫びが響いた。


戦場へ向かう覚悟が決まった瞬間だった。



一方その頃。


魔王国南方防壁。


アローラは防壁の上から遠くの海を見つめていた。


「皆が戻るまで持ち堪えられれば……勝機はありますわ」


自分に言い聞かせるような呟き。


前回の侵攻。


あの絶望的な戦い。


魔王ガルスが命を削って時間を稼がなければ、魔王国は滅んでいた。


その敵が再び来る。


しかも今回は。


ライトはいない。


ホイズもいない。


ベイルもいない。


頼れる戦力の多くが不在だ。


恐怖は無い。


だが重圧はあった。


国を守る責任。


民を守る責任。


それが肩に重くのしかかる。


その時だった。


「アローラ殿!」


聞き慣れた声。


振り返ると、そこにはフィオレリア達の姿があった。


「我らも共に戦わせていただきたい!」


アローラは目を見開く。


一瞬、言葉を失った。


まさか。


客人である彼らが。


命を懸けて共に戦うと言うとは思わなかったのだ。


だが――


「そのお気持ちはありがたく頂戴いたしますわ」


アローラは首を振る。


「しかし貴女方はライト様の大切なお客様です」


巻き込む訳にはいかない。


そう告げる。


だがフィオレリアは一歩も引かなかった。


「いいえ」


真っ直ぐな瞳。


「巻き込んだのは私達かもしれません」


その言葉にアローラが眉を動かす。


「ですから戦います」


フィオレリアは言い切った。


「今度は私達が恩を返す番です」


その後ろでシグルドも頭を下げる。


「どうか許可を」


ハインツも笑う。


「フィオレリア様はこうなると止まりませんので」


「ハインツ!」


「ほらな?」


思わずアローラも苦笑した。


そして観念する。


「……分かりましたわ」


その決意は本物だ。


ならば拒絶するのは無粋だろう。


「共に戦いましょう」


フィオレリアの表情が明るくなる。


だが次の瞬間。


アローラは釘を刺した。


「ただし前線には出しません」


「なぜです?」


シグルドが首を傾げる。


するとアローラは背後に並ぶ巨大兵器群へ視線を向けた。


「皆様を我々の攻撃に巻き込まないためですわ」


「攻撃に……?」


「ええ」


アローラの唇が吊り上がる。


妖艶な笑みだった。


「こちらをご覧くださいませ」


防壁上に並ぶ無数の砲身。


異様な存在感を放つ魔導兵器。


「これはライト様が発明された――」


誇らしげに告げる。


「対侵略者殲滅用兵器《キジュウ》ですわ」


シグルド達の視線が釘付けになる。


そして――


空から一人のバードマンが降下してきた。


「アローラ様!」


「報告を」


「敵軍確認! 約二万!」


防壁の空気が一変する。


「前回確認された巨大ゴーレムの姿はありません!」


「そう」


アローラは静かに頷いた。


そして前方を見る。


遥か彼方。


地平線を埋め尽くす軍勢。


アストリア王国軍。


その光景を見ても。


もはや先程までの不安は無かった。


代わりに浮かんでいるのは――


自信に満ちた笑み。


「シグルド殿」


アローラは艶やかに微笑む。


「先日、キジュウの威力は如何程かと仰っておりましたわね?」


その言葉と共に。


防壁上の無数の砲身が、一斉に王国軍へ向けられる。


「今こそ――」


アローラの紫色の瞳が妖しく輝いた。


「存分にご覧に入れて差し上げますわ」


そして。

第二次魔王国防衛戦の幕が、静かに上がろうとしていた――。

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