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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~良いとこどりで最強に育って無双します~  作者: ララ
第一章 転生…そして幼少期編

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第42話 招かれざるもの

フィオレリア皇女一行が魔王城へ滞在を始めてから――早くも一ヶ月が過ぎようとしていた。


その間、彼女たちは客人として最高の待遇を受けていた。


衣食住に不自由はない。

むしろ帝国の迎賓館と比べても遜色ないほどだ。


だが、それでも。


フィオレリアの胸を占める焦燥だけは日に日に大きくなっていた。


「……まだ戻られないのね」


窓の外を見つめながら、フィオレリアは小さく呟く。


待ち人は魔王代行ライト。


彼と会わなければ、自分たちは何も成せないまま帰国することになる。


それだけは避けたかった。


しかし、その度にシグルドは同じ言葉を繰り返した。


『今は待つべきです』


実際、この一ヶ月で得たものは大きかった。


シグルドは魔王軍との窓口を担い、様々な情報を得ていた。


そして何より――


魔王国という国家そのものを知った。


最初は違った。

魔族など信用できない。


優しい振りをしているだけかもしれない。

誰もがそう考えていた。


だが、一ヶ月も共に過ごせば嫌でも分かる。


彼らは本当に親切だった。


見た目こそ恐ろしい。

だが心は驚くほど温かい。


むしろ偏見を持っていたのは自分たちの方だったのではないか。

そう思うようにさえなっていた。


一方の魔族たちも、人族であるフィオレリア達に最初こそ警戒を見せていた。


しかしライトが人族であること。


そして勇者アレン達との交流があったこと。


その二つが大きかった。


今ではすっかり打ち解けている。


そして親睦を深める中で――

帝国騎士たちは魔王軍訓練場の見学を許可された。


そこで彼らは知ることになる。

魔王軍の本当の恐ろしさを。



「……本当に一兵卒なのか?」


訓練場を見下ろしながらハインツが呟く。


その視線の先では。

数体のゴブリン兵がオーク兵長へ果敢に挑み続けていた。


実力差は歴然。


何度も地面へ叩き伏せられる。


だが。


倒れても。


倒れても。


立ち上がる。


そして再び挑みかかる。


まるで狂戦士のような執念だった。


「間違いない」


シグルドは静かに答える。


「アローラ殿にも何度も確認した」


ハインツが唾を飲み込んだ。


「あのゴブリン達ですら、我が国の一般兵より強そうに見えるんだが……」


「しかもだ」


シグルドはさらに続ける。


「現在の主力は訓練遠征中だ」


「……なんだと?」


「それでも我々が最初に見たあの軍勢が残っていた」


沈黙。


そしてハインツは苦笑した。


「敵なら最悪だな」


「ああ」


シグルドも頷く。


「だが味方なら、これ以上頼もしい存在はいない」


「違いない」


ハインツは笑う。


「助力を得られれば、我々は必ず乗り越えられる」


その時だった。


『あらあら、お二人ともこちらでしたのね』


聞き慣れた声が響く。


振り返ると、そこにはアローラの姿があった。


「アローラ殿」


『このような未熟者たちの訓練をご覧になられていたのですか?お恥ずかしい限りですわ』


「何を仰いますか」


シグルドは即座に否定した。


「弱き者は強き者へ挑む」


「強き者はその成長を願い受けて立つ」


「騎士である我々も学ぶべき素晴らしい訓練です」


するとアローラの顔がぱっと輝く。


『お分かりになりますの!?』


嬉しそうに身を乗り出した。


『あの訓練法は我らが魔王代行――麗しきライト様が考案されたものですのよ!』


「ほう!」


ハインツが感心する。


「それは素晴らしい」


「魔王代行殿は軍略にも長けておられるようだ」


『軍略だけではありませんわ』


アローラの瞳が怪しく潤み始める。


嫌な予感がした。


『あの浮世離れした美貌……』


『革新的な発想力……』


『王国すら凌駕する発明の才……』


『そして我ら幹部すら驚嘆するお力……』


徐々に頬が赤くなっていく。


『あぁ……ライト様……』


『考えただけで身体が熱く……』


『火照って……』


「……」


「……」


シグルドとハインツは顔を見合わせた。


怖い。


純粋に怖い。


『はっ!?』


ようやく我に返ったアローラが咳払いする。


『し、失礼しましたわ』


「いえ……」


シグルドは引き攣った笑みを浮かべた。


「とても伝わりました」


たぶん伝わりすぎた。



「ところで」


ハインツが話題を変える。


「魔王代行殿はいつ頃お戻りになるのでしょうか?」


『そうですわね』


アローラも表情を引き締める。


『そろそろ遠征班との交代時期になりますので、一度確認してみますわ』


「それはありがたい」


シグルドは安堵した。


ようやく話が進みそうだ。


だが――


その時だった。


バサァッ!!


上空から巨大な影が急降下してくる。


「アローラ!!」


エドだった。


しかも様子がおかしい。


『どうしましたの!?』


「王国だ!!」


その一言で空気が変わる。


「南方沿岸に船影多数確認!!」


「前回の侵攻より遥かに規模がデカい!!」


一瞬。


訓練場から音が消えた。


『……ついに来ましたか』


アローラの表情が冷える。


『エド!』


『ホイズとベイルへ連絡を!』


『私は南方防壁で迎撃準備を整えますわ!』


「了解だ!」


即答。


さすが幹部同士だった。


『ライト様への連絡は!?』


『可能なら伝えてちょうだい』


アローラは静かに言う。


『本来なら防衛には参加なさらないけれど……念のためですわ』


「承知した!」


次の瞬間。


エドは空高く舞い上がる。


あっという間に空の彼方へ消えていった。


残されたシグルドとハインツは顔を見合わせる。


「アローラ殿……」


シグルドが口を開く。


「今の話は……」


『ええ』


アローラは隠さなかった。


『アストリア王国ですわ』


その言葉に二人の表情が険しくなる。


『我が国へ侵攻して参りました』


静かな声だった。


だが。


そこには確かな怒りが込められていた。


『私はこれより迎撃へ向かいます』


『皆様にはご不便をお掛けしますが、どうかご容赦を』


「承知した」


シグルドは深く頷く。


「我々もフィオレリア様へ報告いたします」


『ありがとうございますわ』


アローラは振り返る。


その紫色の瞳には冷たい殺意が宿っていた。


『王国は我々にとって因縁の敵……』


そして静かに言い放つ。


『必ずや――殲滅してご覧に入れますわ』


その言葉に込められた憎悪の深さに、シグルドとハインツは思わず息を呑むのだった。


――そしてついに。

王国と魔王国、二度目の戦いの幕が上がろうとしていた。

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